台風接近、横倒しになったバス停の標識 「強風で倒れたのかな。起こしてあげよう」→その善意、ありがた迷惑です!
台風などの接近に伴う雨と風。家路を急ぐ途中、通りかかったバス停で標識が横倒しになっていたらどうしますか。「このままだとダイヤが見にくいから起こしてあげよう」「バス会社に電話してあげなきゃ」。そんな親切心、実はありがた迷惑です。
これ、もっと知られるといいかも
台風が近づいてるので前もって倒されたバス停
「大風でバス停が倒れてる」という苦情から、「バス停が倒れてたので直しときました」という善意の悪魔からの電話対応がハンパないとバス事業者さんから伺ったので
交通地理学の専門家である龍谷大学文学部教授の井上学さんが、自身のアカウントManabu INOUE(@kasobus)で、横倒しにされた標識柱の写真を公開するとともにツイートした「善意の悪魔」問題が話題に。8万近いいいねが付き、「初めて知った」「倒れるかもしれないものは倒しておくのが安全なのよね」「小さな親切と大きなお世話のせめぎあい」など、驚き、納得、共感のコメントが相次いでいます。
井上さんによると、京都市中心部の四条河原町で9月中旬に撮影したもの。通りかかった人が「強風で倒れた!」と勘違いしないよう、標識には「台風接近に伴い安全の為バス停を事前に倒しております。」との張り紙もしてあります。
標識の重量は古いタイプだとおよそ140kgくらい、最近のものは土台の部分が大きいため200kgくらいです。それでも、元に戻す人が絶えないようで、「貼り紙しているのに元に戻されているバス停もあるからバス会社さんは大変なのです どうか、バス停をあらかじめ倒しておく習慣、認知が広がると嬉しく思います」とリプ欄で井上さんはバス会社の心情を代弁しています。
台風への備えというと、冠水しやすい場所に土嚢を積んだり、防潮堤を封鎖するといったニュースが流れますが、バス会社の担当者が標識柱を横倒しにしているというシーンはあまり見たことがありません。井上さんに聞きました。
ー恥ずかしながら、バス会社のこうした取り組みを知りませんでした
「強風が予測される場合、バス停の標識を倒しておくことは、京都市内では何十年も前から実施されています。京都市以外でも同様です。神戸市バスも実施しています」
ーこうした強風対策は全国的なものなのですね
「台風による強風の影響を受けやすい九州や近畿地方などであらかじめ倒す傾向が強いようです。台風ではないのですが、昔、京都市以外でで、突風でバス停が倒れ近くの民家にあたってしまったことや、道路側に倒れて車の通行の邪魔になったことがあったそうです」
ー相当な重量のものを限られた時間に倒し、台風通過後は元通りにするというのは大変な労力です
「単に横にすればいいわけではありません。歩行者や自転車、車などの通行に支障が出ないようバス停ごとに適切な場所に倒す必要があります。倒している間もバスは運行しているので、時刻表や路線図が見えるように倒す工夫も必要です。これを限られた時間と人員で行う必要があります」
ーそんな最中に「元に戻しました」という電話があると…
「バス停を倒している間にバスの運行に支障がないか、何かあった時のために夜を徹して待機します。その間も『バスは動いているか』『バスは何時まで動くのか』などの電話がひっきりなしにかかってきます。台風が通過した後はバスが運行できるか道路状況を確認し、標識を元に戻し、倒す必要のなかったバス停でも屋根などに異常がないかを限られた時間で確認しています。安心安全を使命とする公共交通ならではの大変な苦労があります」
ー投稿が拡散しました
「台風の接近時に、物干し竿をおろす、自転車を倒すなどと同様にバス停も同じような備えがされていること理解いただけると幸いです。
近年はバス停を倒している旨の張り紙を出すバス事業者さんが増えましたが、注意書きを張る作業も限られた時間の中では大変です。注意書きが必要でなくなるくらい一般的な事象として認知されることを期待しています」
■神戸市バスでは
神戸市交通局に聞きました。市バス運輸サービス課によると、神戸市バスの標識数は約1400本あり、歩道に埋め込まれた固定タイプを除くと、土台がある標識は約600本あるといいます。台風接近時はすべてを倒すわけではなく、ロープで固定したり防風ネットを張ったりします。「台風接近時、各営業所ではバス停をチェックし、過去の台風時の対応を踏まえ必要な対策を随時講じています」と話しています。
(まいどなニュース・竹内 章)