選手が船に乗り入場行進するパリ五輪、なぜセーヌ川で開会式? 「100年待った」現地で関係者に聞いた
フランスの首都パリで行われる夏季五輪・パラリンピックの開幕まで2年を切った。実に100年ぶり3回目のパリ大会。特に、世界的に注目されているのがセーヌ川での開会式だ。競技場外で開会式を行うのは夏季五輪では初めてという粋な演出。まいどなニュースは現地の会場予定地を訪れ、パリ19区副区長のジョイス・マライさんにインタビューした。
花の都パリを東西に流れるセーヌ川は秋の日差しを浴び、キラキラと輝いていた。透き通ったような青空を背景に、両岸には美麗な歴史的建造物。2年後にはここが五輪開会式の会場となるというのだから驚く。思わず「オ~、トレビア~ン」と叫びたくなるほどだ。
出発点となるのはオステルリッツ橋。市内に架かる37の橋のひとつで、選手はここから160隻の船団に分かれて入場する。大会組織委員会によると河岸や橋に迎え入れる観客は60万人規模。入場無料の場所も設けられるとのことだ。
競技会場は95%を既存施設や仮設でまかない、大半の競技が選手村から会場まで半径10キロ以内と「コンパクトな五輪」を目指す。それに加えて画期的なのがスポーツと文化施設の融合。例えば、ビーチバレーはエッフェル塔、ベルサイユ宮殿では馬術や近代五種、さらにグランパレはフェンシングなどの会場になる。またマラソンやロードレースでは初めて一般参加も可能とするなど、オープンな大会となるのも大きな特徴だ。
ーー東京五輪について、どのような感想を持ちましたか?実は予算が膨らんだり、大会後に汚職も発覚したんですよ。教訓や参考になるものはありましたか?
ジョイス・マライ「東京オリンピックはコロナ禍という大変困難な中で開催されました。どの国で開催しても難しい舵取りになったのは間違いないでしょう。何をもって成功というのか、判断や基準を設けるのは容易なことではありません。しかし、あの状況で日本人が成し遂げたことは高く評価していいのではないでしょうか。物事には常に理想と現実があります。わたしたちは、できる限り理想を追い求めなければなりません。今度の大会は、これまでのオリンピックにはなかったようなすばらしいものにしたいです」
パリで五輪が開催されるのは1900年、1924年に続き、何と100年ぶり3回目。その間、じっとしていたわけではなく、1992年、2008年、2012年と招致活動に参戦し、失敗していた。一方、1900年の第2回パリ大会では44国以上、3000人が参加したことで大成功。世界中に五輪が広く知られるようになり、実質的な五輪の始まりとも言われている。女子選手に門戸が開かれたのも、この大会からだった。
ーーなぜ、セーヌ川で開会式なんていう斬新なアイデアを思いついてんでしょう。
ジョイス・マライ「素晴らしい発想じゃないかしら。2016年からセーヌの河岸が整備され、水辺を散歩したり、読書やスポーツを楽しめるようになりました。それに周囲にはパリを象徴する建物が並んでいるので、それをいかそうと考えたのだと思います。オリンピックまでにはセーヌ川で泳げるようになりますし、19年に火事になったノートルダム大聖堂の復旧工事も終わらせる予定です」
船はゆったりと進み、そのノートルダム大聖堂を通過。建物の後ろ側には建設作業員用らしき4、5階建てのプレハブ施設があり、急ピッチで作業している様子がうかがえた。その後はパリ市庁舎を経てルーブル美術館、オルセー美術館へ。やがてコンコルド広場の塔が見え、さらに進むと、そびえ立つエッフェル塔が目に飛び込んできた。そのたもとにあるイエナ橋が開会式のメーン会場。各国の選手団を乗せた船の終着点となるそうだ。
ーー想像するとワクワクします。画期的な五輪になりそうですが、テロ対策や警備は大丈夫でしょうか?他にインフラ面など、現時点で課題とか不安材料はありますか。
ジョイス・マライ「渋滞を緩和したり、移動を快適にするため、メトロを2路線増設しています。大会には必ず間に合うでしょう。警備や治安などについても万全を期すつもりです。何しろ100年も待った大会ですからね。日本には優秀な選手がたくさんいることを知っています。日本のみなさん、ぜひ、パリまで応援に来てください。そのころにはコロナも終焉していることでしょう」
パリ五輪は2024年7月26日から8月11日まで。7月24日にサッカー男子が始まる。セイリングはマルセイユ、サーフィンはタヒチで開催。またパラリンピックは8月28日から9月8日まで行われる。
(まいどなニュース特約・山本 智行)