長期政権が招く弊害、独断決定を回避するためにはどうすればいいのか?

神戸市には原口市長・宮崎市長がそれぞれ5期20年務め、トータル40年間の長期安定政権の時代があった。改革志向で市長主導型の成果を発揮していった。なかでもポートアイランドの埋立事業は長期に渡るものであって、原口市長時代からの計画・工事着手、宮崎市長時代にポートピア博覧会、海上都市まち開きと両市長の合作での実績だった。

実は両市長とも6選目に意欲を示していたとも言われているが、それぞれ交代を余儀なくされた。市長の交代時には内紛があり、結局、政権の禅譲が行われた。市長選挙の結果というカタチではあるが実際には市民不在、政策論争なき交代劇だ。後継者は、管理型官僚による行政風土を培養する結果となる。

長期政権では議会は政権に追随し、職員も苦言をいう気概をなくし、労組も利権追求に没頭するという弊害を招く虞がある。神戸都市経営に欠落していたのは、イデオロギーとしての市民参加をすすめ、政策決定の最適選択を保障するシステムの構築だった。また、安定政権が長く続くとトップダウン方式が当たり前のようになり、市長独断型決定となる。自己の政治力を過信し、市民・議会・職員と遊離していても気づかず、適正に自治体運営が行われているとの錯覚に陥る危険性がある。

では、今後の市政を考えたときに首長主導の独断決定を回避するためにはどうすればよいだろうか。一つには、議会が独断決定を阻止する安全装置として機能できるかだ。十分に自覚し行動しなければ市長を含む官僚決定に陥りやすい。それは官僚が議会の無用な行政介入を避けたいため不都合な情報は隠したい心情が働くためでもある。政策の決定過程・政策結果の分析などの情報開示を求め、議会が検証機能を発揮すべきである。

二つめには市民も情報公開を求めていかなければならない。実は事後検証のしっかりと行われていない政策が少なくない。セグメントごとの収支報告など、基本的な財務諸表を含めてだ。また、市民参加で重大な決定には住民投票が原則である。そのための制度の欠陥を改めなければならない。

諮問的住民投票条例についても検討が望まれる。とはいっても、住民投票が行われれば安心というわけにはいかない。それ以前に情報の提供、公開の場での論議などが当然に行われるような風土が醸成されてこそ、住民投票が機能するものと考えられる。諮問的住民投票条例化については、お隣の明石市でも条例制定への動きを数年にわたり重ね、進めてきたが、結局議会の否決に阻まれた。(賛成票ゼロ)

地方自治行政はご案内のとおり、二元代表制であり間接民主制(首長と議会は選挙で選ばれる)がとられている。首長は官僚組織のトップであり、議会は市民の代表で首長はじめ行政のチェックを行う調査・牽制機能を発揮する。しかしながら、選挙は4年に一度であり、また市民から「市政全般的な負託」を受ける。そもそも4年に一度の選挙をワンイシューで戦い、他の候補者との差異を訴えかけるのも困難だ。

空港建設の是非などは市長選がまさしくその様相を帯びていた。議会にチェック機能が期待できないなか、事案ごとの是非を問うのであれば、諮問的住民投票条例の制定も意義があるのではないか。諮問的住民投票にも「直接民主制を導入するのか」などの指摘もあり、デメリットや検討事項が多くあることは承知しているが、うまく活用できないかと期待するもので、他の自治体の事例などの研究を重ねていって欲しい。

来春には、統一地方選が行われる。4年に一度の機会だ。その役割を果たすにふさわしい候補者が現れることを願うばかりだ。

参考書籍:

「自治体政策マン苦闘の軌跡」神戸都市経営の思想と戦略

著者・高寄昇三(公人の友社)

◆北御門 孝 税理士。平成7年阪神大震災の年に税理士試験に合格し、平成8年2月税理士登録、平成10年11月独立開業。経営革新等認定支援機関として中小企業の経営支援。遺言・相続・家族信託をテーマにセミナー講師を務める。

関連ニュース

ライフ最新ニュース

もっとみる

    主要ニュース

    ランキング

    話題の写真ランキング

    リアルタイムランキング

    注目トピックス