こだわりのクラフトビールを→マイ水筒に♪「量り売り専門店」じわり増加 背景にコロナ禍でのテイクアウトブーム
小さなビールの醸造所が国内で増える中、「クラフトビール」を量り売りする珍しい専門店が登場している。専用の水筒などを持参して好きな味を購入すると、タップで注いでくれるシステム。中には、料理やおつまみも販売せず、ビールだけで勝負する店も。出店の背景には、コロナ禍でのテイクアウトブームがあったという。
神戸市兵庫区湊川町5にオープンした「CRAFT BEER SHOP TRIANGLE(クラフトビールショップトライアングル)」もその一つだ。カウンターの奥には巨大なビールサーバーが一つ。冷蔵ショーケースには約60種類の瓶ビールや缶ビールが並ぶ。この日の量り売りは7種類で、アルコール度数は2~8.5度。丹波篠山のフルーティーなもの、苦味を感じられる静岡の一杯、スパイスの風味が効いたもの…。店主の前村芳秋さん(34)が国内の醸造所を渡り歩き、自信を持って集めた品種ばかりだ。「初心者でも味の違いが分かりやすく、楽しめるものを選びました」と笑顔を見せる。
大学卒業後にサラリーマンとして働いていた頃、ビアバーでベルギービールに出会った。口当たりがやわらかく、果実のような甘さ-。初めての味に感動し、クラフトビールを求めて飲み歩くようになった。新しい味に出会うにつれて製造現場も知りたくなり、約6年間働いた会社を辞めてビール会社に転職。ビール造りから営業、イベントの出店などを一通り学んだ。
転機はコロナ禍だ。もともと飲食店では、持ち帰り客への酒の販売は認められていなかった。外出自粛で飲食店の売り上げが落ちる中、2020年春、国税庁が救済策として「期限付酒類小売業免許」を発行。期間限定で、飲食店でも酒類のテイクアウト販売ができるようになった。この時に注目されたのが、炭酸も入れられる水筒「グラウラー」だ。ステンレス製の耐圧容器で、長時間の保冷・保温ができる。料理とともに酒を購入し、家飲みやキャンプを楽しむ人も増え、一部の人の間でグラウラーが人気になった。しかし翌年、期間限定の小売業免許は終了する。
一方、国内ではクラフトビールの醸造所は年々増加し、民間調査によると、今年8月時点で600件以上に。使用する麦芽や酵母の種類はもちろん、コーヒーやカボチャといった風味を加える独自のアレンジも異なるため、味は千差万別という。「特にビール造りを始める人は、こだわりの塊のような人が多い。でも、その奥深さを知ってもらえる場所が少ない」と前村さん。使い道が少なくなっていたグラウラーの活用法を考え、量り売りの専門店を今年7月に店をオープンさせた。全国各地でも、同様の店はじわりと増えているという。
こだわりの塊は、作り手だけでなく、売る側にもにじむ。前村さんの店では、料理やおつまみの販売は基本的に行わない。持ち込みは可能だが、ビールの香りも楽しんでもらいたいと、においのきつい食品は遠慮してもらう徹底ぶり。「ビール1本で勝負です」
クラフトビール1杯小(280ml)700円~、大(430ml)1000円~。ほかの量り売りは2.5円/ml。月曜休で、営業時間は午後1時から午後9時。インスタグラムで、ビールの豆知識も発信している。
https://www.instagram.com/craftbeershoptriangle/
(まいどなニュース・山脇 未菜美)