「うちのオカンがな、『内海』の名前の読み方、忘れたらしいねん」うちうみ?うちみ?うつみ?…ミルクボーイ、名字のルーツ

2019年のM-1で「オカンが忘れた」というネタで優勝したミルクボーイ。今年春には第57回上方漫才大賞を受賞した他、最近は高齢女性に人気が高いことでも話題になっている。

ミルクボーイは、大阪府出身のボケ・駒場孝と、兵庫県出身のツッコミ・内海崇のコンビ。

駒場孝は大阪市出身だが、「駒場」という名字は西日本では珍しい。全国ランキングでは3300位台と普通の名字の範疇には入っているものの、圧倒的に関東地方に集中しており、関西はじめ西日本にはほとんどいないといってもいいくらいだ。

本来、「駒場」とは馬の調教場のことで、これに由来する地名も各地にある。名字としては栃木県に多く、全国の半数弱が栃木県にある。栃木県内では鹿沼市や宇都宮市に集中しており、足利市には下野国足利郡駒場という地名もあった。関東以外では宮城県にも多くみられる。

一方、「内海(うつみ)」はかなりメジャーな名字である。「内海」とは陸地の中に入り込んだ入江や湾のことで、湖を指すこともあった。地名も各地にあり、名字も宮城県、広島県、兵庫県などに多い。

関西では「内海」の98%以上が「うつみ」と読み、西日本全体でも圧倒的に「うつみ」が多いため、内海崇も「うつみ」だが、実は全国的にみると「うつみ」という読み方が普通というわけでもない。関東では「うちうみ」と読むことも多く、千葉県や埼玉県では「うつみ」より「うちうみ」の方が多い。関東全体だと「うつみ」と「うちうみ」はほぼ半々。西日本でも長崎県では三分の一が「うちうみ」である。そもそも、「うつみ」とは「うちうみ」から変化した言葉なので、漢字の読み通り「うちうみ」と読んでも不思議はない。

さらに、日本一「内海」さんの多い宮城県では約2割が「うちみ」と読む。これも「うちうみ」から変化したものだろう。とくに松島町では「内海」の読み方は「うちみ」が最多で、塩竃市でも「うちみ」は多い。

そのため全国を合計すると、「内海」の8割弱が「うつみ」と読んで全国ランキング600位台に入っている一方、2割弱が「うちうみ」でこちらも2000位以内に入るメジャーな名字の一つ。「うちみ」は数%に過ぎないが、それでも5000位台と比較的上位に入っている。

◆森岡 浩 姓氏研究家。1961年高知県生まれ。早稲田大学政経学部卒。学生時代から独学で名字を研究、文献だけにとらわれず、地名学、民俗学などを幅広く取り入れながら、実証的な研究を続ける。NHK「日本人のおなまえっ!」にコメンテーターとして出演中。著書は「47都道府県名字百科」「全国名字大事典」「日本名門名家大事典」など多数。

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