ガリガリの子猫を保護 里親が決まるまでと思っていたが、寝顔を見て家族に…今では甘えん坊の親孝行な子に
■痩せ細り、全く動かない子猫
しょうゆちゃん(6歳・メス)は、とある会社の敷地内にいた。茨城県に住むTさんはその会社に勤めていたのだが、会議で、「子猫が敷地内に捨てられているから誰か保護できないか」と話題になったという。
Tさんが帰りがけに見に行くと、ガリガリに痩せ細って、全く動かない子猫がいた。周囲に母猫や兄弟の姿も見当たらず、捨てられたのかはぐれてしまったのか分からなかった。2016年7月15日のことだった。
「その日はとても暑い日で、翌日から三連休。元動物看護師をしていた私は放っておくことができず、通勤に使っていたトートバッグにしょうゆを入れて連れて帰りました」
■よかった、食べてくれた!
とりあえず、職場の近くの実家に連れて帰り、「猫、拾った!」とお母さんに言うと、小さい頃からよく動物を連れて帰っていたので、家族は「またか」という感じだった。
ガリガリに痩せていて、脱水もあるようだったので、Tさんはコンビニで子猫でも食べられそうなキャットフードを買い、水と一緒に与えた。すると、しょうゆちゃんはフードや水を口にした。
「食べてくれて、少し安心しました。その後、動物病院で一通り状態を診てもらい、推定生後1ヶ月くらいだということが分かりました」
■職場で「猫ちゃん募金」
動物看護師の知識が役に立ち、しょうゆちゃんの世話に困ることはなかった。夫と交代で3時間おきにミルクを与え、排泄をさせた。夫妻は、お世話をしているうちにすぐにしょうゆちゃんの虜になった。
Tさんが子猫の保護をしたという話はすぐに社内で広がり、上司の人たちが「猫ちゃん募金」を設置してくれた。その募金で猫を飼うのに必要なものを買い揃えることができたという。Tさんは、その会社を退職したが、今でも当時の職場の人たちに会うと、「猫ちゃん、元気?」と気にかけてくれるそうだ。
■アパートはペット不可
しょうゆちゃんは可愛かったが、ただ一つ問題があった。当時、Tさん夫妻が暮らしていたアパートはペットの飼育が禁止されていた。保護したはいいが、実家には犬がいる。アパートの大家はTさんのお父さんだったので相談すると、大の猫好きのお父さんは、「とにかくこの子の命を繋がなくては!」と、他の全ての入居者の承諾を得て、急遽、アパートの全部屋をペット可にすることにしてくれた。
「父の大胆な行動と、快く承諾してくださった他の入居者さんには本当に感謝しています。皆さん、すぐに犬を飼い始めたので、いいきっかけになりました」
Tさんは保護した直後は、「里親が決まるまで」と思っていたが、Tさんの肩の上で安心してスヤスヤ眠るしょうゆちゃんの姿を見て、すぐに里親探しをやめて、家族として迎えることを決めたという。
■しょうゆちゃんとの時間を大切にしたい
しょうゆちゃんを飼い始めて少し経った頃、血便をしていることに気がついた。動物病院に連れて行くと、寄生虫にやられていた。保護した直後には分からなかったが、お腹の中がただれていて、生き延びられるかどうかはこの子の生命力次第だと言われた。
「動物病院で働いていた私でも見たことがないくらいひどい血便と寄生虫の数でした。数日間点滴をしてもらい、駆虫薬を飲ませたら、なんとか生き延びることができました」
このことをきっかけにしょうゆちゃんと暮らせる時間を大切にしたい、我が家に来て幸せだと思ってもらえるようにしたいとTさんは思った。とにかく健康に気を付け、少しでも体調に変化があったら、動物病院に連れて行くようにしているそうだ。
しょうゆちゃんを迎えてからというもの、Tさんの生活はしょうゆちゃん最優先。
「お腹を空かせて待っていると思うと早く帰らなければと思うし、仕事の昼休みも、しょうゆに会うために一度家に帰るようになりました」
■家族を笑顔にしてくれる、猫には感謝しかない
こうして可愛がられて育ったしょうゆちゃんは人見知りをする。家族とTさんのお母さん以外の人には懐かない。
「家族にはとても甘えん坊で、寂しがり屋。少しでも家族の姿が見えないと『ニャーニャー』鳴いて探します。夜も毎晩、私と夫と一緒に寝ています。へそ天で、すごい格好なんですが(笑)」
Tさんにとってしょうゆちゃんは大切な家族で生きがいでもある。そんなしょうゆちゃんには感謝しているという。
「しょうゆのおかげで、仕事もやる気が出ます。毎日出迎えてそばにいてくれるし、家族を笑顔にしてくれます。しょうゆの全てに感謝しかありません。いつも家族の視界に入るところにいてくれて、本当に親孝行な子です」
(まいどなニュース特約・渡辺 陽)