リニューアル控えた動物園がクラファン挑戦 前向きな反響の一方で「具体的な使途は?」「なぜ今?」と戸惑う声も 担当者に聞いた
「動物たちの環境を維持・向上していくために、皆さまの応援を-」
神戸市立王子動物園が施設・設備の維持管理や動物福祉を向上するための費用に充てたいと、ふるさと納税制度を活用する「クラウドファンディング(CF)」で支援を募り始めました。寄付募集は多くの動物園、水族館が取り入れているため、SNS上では「ようやく!」「少しでも支援したい」と反響が広がる一方、「具体的な使い道は?」「リニューアル控えてなぜ今?」「動物園ならではの返礼品がないけど…」と戸惑う声も目立ちます。
■目標金額は2000万円、2023年3月31日まで
目標金額は2000万円で、期間は9月1日から2023年3月31日まで。10月13日現在の支援人数は340人、寄付金額371万円、達成率は18.5%です。同園で「動物サポーター」関連を担当する栗山さんに聞きました。
-待ってました!と早速反響が
「多くのご支援をいただき感謝しています。ふるさと納税制度を活用したCFで、通常のふるさと納税よりも寄付金の使い道を更に具体的にプロジェクト化し、寄付を募る取り組みです。神戸市として既に実施していたため動物園としても導入しやすかった、というのが大きな理由です。『動物たちのために何かしたい』との声を以前からいただいており、みなさまのご支援を動物たちに届けていきます。返礼品については独自に増やすこともできるので、今後また寄付をお願いする機会があれば検討したいと思っています」
■現在の施設の維持にかかる費用や、緊急的な修繕のため
-王子公園の再整備問題や動物園リニューアルを控え、なぜ今?
「今回のCFは、再整備とは関係ありません。現在の施設の維持に恒常的にかかる費用や、どうしても行わないといけない緊急的な修繕、動物福祉を向上させる取り組みに使用させていただくためのもので、日常的に動物園が行っていることに対してのご支援のお願いになります。新型コロナウイルスの影響で来園者が減ったこともあり、CFで呼び掛けることにしました」
-ホッキョクグマの降雪機やアシカプールが例として挙げられています
「大掛かりな設備や水回りは特に維持管理に費用などがかかります。恒常的な費用として獣舎の床や壁、扉、照明などの補修、空調の点検、修繕、清掃、水回り関係の補修、獣舎への土や敷石の補充、遮光ネット設置・交換などがあります」
-「動物福祉の向上」に役立てると
「動物を快適な環境で心身ともに健康に飼育していくことが『動物福祉』と認識しています。野生本来の行動を引き出す取り組みである『環境エンリッチメント』や、動物に負担のかからない健康管理手法として『ハズバンダリートレーニング』の実践、動物の特性に応じた住環境の整備により、動物福祉の向上に努めているところです」
-これまでの具体例は?
「ゾウの吊り下げフィーダーは高い樹木の葉を採食する行動を引き出し、大型ネコ科動物に遊具としてブイやタイヤなどを与えるのは、遊びや狩りに近い行動を引き出すためです。オオアリクイに朽ち木を与えることで、アリ塚でのアリの探索・採食・爪で崩すのと同様の行動に。竹筒にエサを入れて与えるクマのフィーダーは、野生での餌の探索に近い行動を引き出し、遊具にもなります。カピバラ温泉は冬でも水に潜る行動、ヤギの渡り橋によって高所に登る行動を見ることができます」
「ハズバンダリートレーニングはジャイアントパンダをはじめ、アジアゾウ、キリン、オランウータン、アシカなど多くの動物に対して行っています。またコアラの健康診断のほか、治療やリハビリのためにガチョウやウサギの車イスも作りました」
-飼育現場の思い、アイデアを生かす仕組みは?
「飼育員は、動物が快適で幸せに暮らせるよう、日常的に大小様々な工夫をしており、今後もあらゆることに取り組んでいきます。飼育担当者のアイデアをまず飼育員間で検討し、計画を作り、 獣医、事務所とも共有して必要な物品を購入、手作りしたり、業者に依頼して実現させていきます」
-人材育成、飼育技術の継承は?
「昨年度から、希少動物の保全や動物福祉に寄与する調査研究、環境教育の推進を図る『動物専門員』を採用するとともに、日本動物園水族館協会の研修会や他園との交流を通じて、動物福祉の向上のための様々な取り組みについて学び、実践するよう努めています」
動物のため、飼育員の思いをスムーズに生かせると期待が高まる寄付募集。支援者に対しての具体的な計画案の提示や結果の公表もワンセットといった感があるものの、同園の場合は「日常的な維持管理へも使わせていただくため、全ての公開は難しい」と栗山さん。しかし、「特色のあるもの、お客さまからは見えない部分での取り組みを中心に紹介していきたいです。 動物園のことをよく知っていただけるきっかけになればとも思っています」。
■「王子公園再整備基本方針」への意見募集は10月26日まで
神戸市では現在、同園を含む「王子公園再整備基本方針(修正素案)」への意見募集を10月26日まで行っています。「王子公園再整備基本方針が確定した後に、動物園のリニューアルについては具体的な内容を検討し、基本計画を策定していきます。その際にはみなさまのご意見をお聞きしていきます」と栗山さんは話しています。
「現在の動物たちの生活環境の維持・向上のため、クラウドファンディングにぜひご協力をお願いいたします」
募集期間は2023年3月31日まで。
(まいどなニュース特約・茶良野 くま子)