怨念か!? 名前が書かれた大量の人形が束ねられ、木釘を打たれ… 遺跡から出土した「何に使われたのかわからない」ものたちが面白い
女性の名前が書かれた人形が大量に入った瓶、直径3cmほどの細長い穴が開いた球、犬の形を模した置物などなど、思わず「ナニこれ?」と首を傾げたくなるような用途不明の遺跡出土品を紹介する謎の特別展が、奈良市埋蔵文化財調査センターで開かれている。「用途がわからない出土品」とは一体どういうことなのか。ユニークな切り口で注目を集めるこの企画について、担当者を取材した。
さまざまな遺跡から発掘された出土資料のうち、類例が少なく、形状や材質を見ただけでは使い方がわからない「用途不明品」。同センター学芸員の原田さんは「箸にも棒にもかからないと申しますか、『これ何に使うの?』と研究者も頭をひねる出土品って、実は発掘調査でキリがないほど出てくるんです」と明かす。
「ナニこれ?」展は2年前に初めて実施。奈良市内から出土した用途不明品のうち、奈良時代の平城京出土資料を紹介したところ好評だったため、この度、縄文時代から江戸時代までの「ナニこれ?」計310点を集めた2回目、その名も「また! ナニこれ?」展が開催されることになったという。
例えばソフトボール大の球体の中央に、直径3cm、深さ2.5cmほどの穴が開いた土製品は、平安時代の出土品。原田さんは「どうです、何に使うかわからないでしょう。どう思います?」と何故かドヤ顔だ。花を活けたり…、ですかね? と当てずっぽうで言ってみたところ、「そうかもしれませんし、ロウソクを設置するための穴かもしれません。正解はわかりません」。
他にも、室町時代の犬形土製品は顔が丸く、やや太っちょで「犬というより豚みたい」(同センターのTwitterより)な姿。子供用玩具のようでもあり、安産祈願のお守りのようでもあり…。素人目には単なる愛らしい置物にしか見えないが、「何らかの祭祀・宗教的な意味合いがあるかもしれません」と原田さんは言う。
■怪奇!? 名前を書かれた大量の人形が…
呪術的で、そこはかとなく怖さを感じる出土品もある。
平安時代前期の井戸から出土したのは、顔が見えないよう8枚程度が重ねられて紐で縛られ、さらに木釘を打たれて束になった人形。全部で51枚あり、全てに同じ男性の名前が書かれているという。ギャアアアア!
同じ井戸から出土した緑釉陶器の瓶には、37枚の人形が封入されており、そこには3人の女性の名前が。原田さんは「呪いなのか、病気治癒の願いなのか、はたまた、全く違う意図があるのか。展示品を見ながらそれぞれ自由に考えていただければ」と話す。
会場には、来館者が用途について自分なりの推理を書いて張り出すコーナーも。「一方通行」の展示ではなく、「双方向」で考古学の奥深い魅力や面白さを感じてもらう試みになっている。
入館無料。会期は11月30日まで。9時から17時。10月は全日開館し、11月は土日祝日休館(ただし3、19、20日は開館)。
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【奈良市埋蔵文化財調査センター】
奈良市大安寺西2丁目281番地
tel:0742-33-1821 fax:0742-33-1822
(まいどなニュース・黒川 裕生)