母猫に置き忘れられた2匹の子猫「今度は絶対忘れないよ」…6年間撮りためた記録が“猫への愛情”
日本では古来より、日常の出来事や得た知恵を記録することに重きを置いてきました。そうすることで、肉体に死が訪れたとしても魂は永遠となるという考えからです。
東京都で暮らすN家でも記録を残し始めました。2匹の猫、モカくんとオレオちゃんの記録です。SNSやYouTubeで動画や画像を掲載し、記録ついでにたくさんの人にも見てもらっています。
アカウント管理をしているのは、次男のRさん(23)。撮影も主にRさんが行っています。Rさんは社会人になった時、記録の大切さに気付いたのだそう。当たり前の日常でも必ず終わりを迎える。その為に、記録を残したいと考えました。
今、隣でくつろいでいるモカくんとオレオちゃんも、いずれ別れの時が訪れます。その時を迎えるまでに2匹が生きた証、記録を残そう。記録があれば、記憶を何度も呼び起こすことができるからです。そうすれば、2匹のことを永遠に忘れることがありません。
そこまで考えるようになったのには、理由があります。それは、モカくんとオレオちゃんが「忘れられた」存在だったからです。
今から6年前、Rさんが高校2年生の時のこと。当たり前の日常だと思っていたある日、両親が仕事から帰宅すると息子たちに言ったんです。
「仕事場の倉庫で、猫が子どもを4匹産んだみたい」
元々は犬と暮らしていたN家の人たちは、大の動物好き。何だか嬉しいねなどと話して、その日は終わりました。
しかしその翌日、父親が倉庫を見に行くと、子猫が2匹しかいません。辺りを見渡しても、母猫ももう2匹の子猫の姿も見当たらないのです。取り残された2匹の子猫は、お腹が空いているのか寂しいのか大きな声で鳴くばかり。
「母猫に置き忘れられてしまったのかも。このままでは命が…」
すぐ家族会議が開かれ、満場一致で子猫の保護が決定しました。このまま見過ごすことなど出来ず、保健所に連れていくことも考えられません。うちの子にするしかない。
さあ子猫が加わったN家は、一気に家に明かりが灯ったかのよう。もちろん今までだって楽しい暮らしでしたが、更に賑やかになったのです。子猫たちの名前は毛色から、「モカ」と「オレオ」に決定。
モカくんとオレオちゃんはまだミルクが必要な月齢だったため、母親が仕事の合間を縫って授乳。大変だっただろうに、とても楽しそうにお世話をしていたのだそう。まるで我が子のよう。
Rさんは学校から帰宅するのが楽しみになりました。子猫の成長スピードは速く、少しの時間会わないだけでも大きくなっているから。Rさんが帰宅すると、モカくんがお出迎え。いつもお腹を見せながらゴロンとして、足で撫でてほしいってお願いするんです。その可愛いこと。
オレオちゃんはツンデレ。お出迎えもお見送りもしません。でも、皆が寝静まりRさんが一人きりになると、そっと寄り添ってくれるのです。実のところRさんは猫アレルギーで、頬ずりをしたり思い切り抱きしめたりすることはできません。この距離がとても有難い。そのこと、オレオちゃんは知っているのかな?
Rさんがつらい時も嬉しい時も、ずっと傍にいてくれるモカくんとオレオちゃん。Rさんが高校を卒業しても、大学生になって家にいる時間が短くなっても、社会人となり忙しくしても、変わらぬ愛情を注いでくれます。これを「当たり前」だと思ってしまったら…。
だからこそ、モカくんとオレオちゃんの日常を、Rさんの視点で撮影します。やらせなどは一切ありません。過ぎていく時間を、ありのままにそのままに。そんな「当たり前」の日常に癒される人がいることも、SNSやYouTubeを始めてから知りました。
「モカとオレオの姿が誰かの癒しになれば、その人の中でもモカとオレオは生き続けますよね?生きた証が癒しになるって良いですね」
母猫に置き忘れられ、命の危険に晒された猫たち。忘れないことで命を守りたい、命を見つめ続けたい。それがモカくんとオレオちゃんに示せる愛情であり、未来の自分のためだから。
毎日してもらいたいマッサージですね!
(まいどなニュース特約・ふじかわ 陽子)