大阪・通天閣が真正面…絶景のマンション民泊に、衝撃の「ホラールーム」 怪しげな部屋が爆誕した“怖すぎた理由”とは
通天閣で有名な大阪・新世界から道路を1本挟んだ恵美須町にある民泊施設に、1人で泊まるにはちょっと怖いホラールームがある。コロナ禍でインバウンド(訪日外国人)が途絶えた民泊で、日本人客を呼び込むためにスタッフ手作りした、ホラー要素あふれる部屋を覗いてみた。
一見するとおしゃれな白い部屋だが……
通天閣がある新世界の西側を走る堺筋を隔てて、阪堺電気軌道阪堺線沿いに、洒落た外観のマンションが建っている。わざわざ民泊用に建てられた「MONTANA FLAT YEBISU」というマンションの1室が、これまでの民泊のイメージと違っていて面白い。
「MONTANA FLAT YEBISU」を運営する株式会社イーツーの広報担当に聞いた。
「全部で24室のうち1室をホラー仕様の内装にして、8月31日から予約受け付けを開始しました」
ホラー仕様とは、どんな内装なのか。さっそく見せてもらった。
玄関の鍵を暗証番号で解除してドアを開けると、一見何の変哲もないマンションの1室だ。白を基調にデザインされた内装は清潔感が漂う。
「こちらの部屋です」と、いちばん奥の部屋に案内されて扉を開けたら、玄関から見るおしゃれなイメージとは裏腹に、空気まで重たくなったような部屋があった。遮光カーテンを閉めきると、室内の照明が薄暗いことが分かる。
床面積30平方メートルある空間の1室で、6畳ほどの広さ。壁面には5体の薄汚れた人形が置かれていて、なるべくなら目を合わせたくない。もう一方の壁面には数枚の鏡が貼られていて、部屋のどこにいても自分の姿が映り込む。壁と天井の塗装は、敢えて乱雑に仕上げてあるのだろう。いたるところで塗料が垂れた跡があって、不気味な雰囲気を増している。
経費節減のためスタッフ自らホラーな内装をつくった
ホラールームをつくった背景には、切実な事情があった。
このマンションは1棟まるごと民泊施設で、もともとはインバウンド向けの民泊を運営するために建てられたという。窓を開けると、大阪のシンボル・通天閣が間近に見えるロケーションだ。
ところがコロナ禍で、インバウンドがゼロになった。日本人客の利用もわずかで、一時期は月の売り上げが100分の1にまで落ち込んだ。運営側にしてみれば、それこそまるでホラーである。
「インバウンド需要が回復するまで、日本人向けのサービスにシフトする必要に迫られました」
レンタル物品の品目を増やしたり、部屋の時間貸しをしてみたりするなどの工夫をする一方、営業戦略のひとつとしてホラールームをつくったのだという。
「どうせなら、変わったことをしましょうと」
工事費用を節減するために、内装はスタッフによる手作業でつくられたそうだ。
「スタッフの中にホラー漫画を描く学生がいて、ホラーが大好きだというので任せたんですよ」
壁紙を剥がして露出させた石膏ボードに敢えて木材用の塗料を塗り、壁際に怪しげな人形を飾って顔を汚し、不気味さを際立たせた。部屋の片隅には古びたドレッサーを置き、カーテンとカーペットもホラー映画に出てきそうな柄を選んだ。
プロの仕事ではないため、部屋の端々には粗さが見える部分もある。それを知ったうえで、粗探しをしてみるのも一興かもしれない。
通路を挟んで、シングルベッドを2つ並べた寝室がある。物入れの中には1人分のマットレスが収納されているから、3人まで泊まれる。寝室には2人しか入れないから、1人はホラールームにマットレスを敷いて寝ることになりそうだ。また、宿泊を伴わない時間貸しも可能とのこと。
コスプレ撮影会の需要が多い
ホラールームがオープンして2カ月。宿泊より、コスプレ撮影会での利用が多いという。
気になるのは料金だ。繁忙期と閑散期で変動するらしく、取材に訪れた10月半ばは1部屋あたり8800円になっていた。
「ペット(犬限定)と泊まれるお部屋は、プラス2000円いただいています」
ちなみに利用客は、チェックインしてからチェックアウトするまで、スタッフと顔を合わせることはない。料金もオンライン決済だ。
日本政府は、コロナ禍で制限していた外国人の個人旅行を、10月11日から解禁した。これに伴って、予約にも変化が見え始めたようだ。
「今月(2022年10月)は日本人のお客様が70%を占めていたんですけど、来月以降は外国人のお客様が70%を占めています。韓国、台湾、香港からのお客様が多いです」
ハロウィン需要を見込んで、コスプレ衣装も用意したという。
「パーティルームとしても使ってほしいです。たこ焼き機や鍋の貸し出しとか、中華料理のデリバリーもできます。物品の貸し出し品目は、たぶんホテルより多彩に取り揃えていると思います」
ここで疑問がわいた。もともとはケルト民族のお祭りであるハロウィンとホラーが、どう結びつくのだろうか。尋ねてみると、イベント化された日本テイストのハロウィンをターゲットにしているとのこと。
コスプレ衣装はまだ予約が入っておらず、取材した時点では新品だった。誰が最初に袖を通すのだろうか。また、クリスマスに向けたイベントも企画しているというから、通天閣が見える部屋でホラー体験という、ほかでは味わえない感覚に浸るのも面白いかもしれない。
(まいどなニュース特約・平藤 清刀)