「100歳の渋沢栄一の孫娘」が綴った「明るく元気になる生き方」に目からウロコ
日本の実業家であり、2024年に発行される新1万円札の顔にもなる渋沢栄一。NHKの大河ドラマ『青天を衝(つ)け』で描かれ、一時「渋谷栄一ブーム」とも呼ばれる再評価の現象が起きました。
その渋沢栄一の孫娘で、著述家として複数の著書を持つ鮫島純子さん。講演会なども人気で「シニアのカリスマ」とも言うべき方です。その著書や講演では祖父・渋沢栄一の話だけでなく、鮫島さんご自身による「楽しい生き方」「ポジティブに考える習慣」といったヒントも多く、たくさんの人たちを勇気づけてきました。
その鮫島さんが御年100歳を迎えた今年、ご自身が考える「明るく元気になる生き方」をおくるためのヒントを綴った一冊が刊行されました。『100歳の幸せなひとり暮らし 穏やかな心と健康を保つ100のヒント』鮫島純子・著(光文社)という本です。
「人生が後半になるほど幸せになる」ための秘訣が、100歳にちなんで100個収録されており、それぞれの項で鮫島さんの経験に基づくあらゆる「知恵」や「法則」が赤裸々に綴られています。「100歳の著書の本」というだけでも珍しいですが、本書の中には鮫島さんならではのポジティブでほっこりする言葉がいくつもあり、肩肘はらずに「明るく元気になる生き方」への思考術が紹介されています。
■「子は親を選んで生まれてくる」ほかヒントが満載
ここではその一部を抜粋してみます。
■何事にも感謝
元気の秘訣の一つは、「何事にも感謝して生きる」ことです。
~中略~
「ありがとう」をいつも忘れずに生きていくと、マイナスの想いが消えていきます。それが、有難い天の摂理と感謝しております。
■「ありがとう」は声に出して
「ありがとう」の言葉は、心で思うだけではなく、声に出してみたほうがいいようです。声に出して、響きにしてみると、すがすがしいパワーがあふれてきます。
~中略~
さらに身近にある小さな幸せに感謝し、「自分は幸運な人間だ」と思い込んでいると、何事も幸せに感じられるようになってきます。
~中略~
日本には古くから言霊という考え方があります。声にした言葉の波動が、現実にも良い結果を引き寄せていくのだそうです。
■トイレの「有難さ」を忘れない
「ありがとう」の心を習慣にするまで、「ありがとう」と書いた小さな紙を要所要所に貼り、言葉にしていました。
水道の蛇口付近にも、電気のスイッチにも、ガス台にも「ありがとう」です。ようやくすべてのことに「ありがとう」が身についた今では、トイレに1枚だけ残しています。排泄がどんなに有難い自然の摂理であることか!
■物騒なテレビは観ない
テレビを観ていて、物騒なニュースや怒鳴り合いのドラマが始まると消してしまいます。家の中に不穏な波動が入ってくるのを避けたい気持ちからです。
人は知らず知らずのうちに、そういった波動に影響を受けて、不安になったり、イライラしたりしてしまうこともあるようです。
■人間に上下はない
私は4人きょうだいの3番目として、おてんばを止められることなく、のびのびと育ちました。それでも、地域の学校に通わなかったり、広い屋敷だったり、使用人たちから近所の子どもさんと遊ぶことを禁じられたりしたこともありました。寂しい想いとともに、「自分は何が違うのかな」という気持ちを抱いていたこともございます。
そのちょっとした優越感のような想いは、結婚してすぐに直面した戦争で打ち砕かれました。披露宴当日に思いがけず東京最初の空襲に遭い、花嫁衣装のまま防空壕に避難。名古屋に引っ越しした後は、夫が外地に出張中に大地震や空襲に見舞われました。幼い子どもを抱え、不慣れな土地で身寄りもない中、手を差し伸べてくださったのはご近所の方たちでした。「おむつがないのが一番困るでしょ」と言って家から運び出してくださったり、消火中に子どもを預かってくださったり。このとき、助け合いや思いやりの有難さが本当に身に沁みて、人間に上下はないと実感。結婚してわずか5ヶ月後の父の急逝、空襲、窮乏(きゅうぼう)生活のやりくりは、私にとって必要な経験であったと思います。
■子は親を選んで生まれてくる
「子は親を選べない」とよく言われますが、伺ったところによると、「子は親を選んで生まれてくる」そうです。そうならば、「ご縁があってお互いの成長のために、私を選んで生まれてきてくれたのね。ありがとう」と感謝の心を引き出してみるのが本当でしょう。
■死は、この世からの「卒業」
自然死は、この世からの「卒業」です。「卒業」という言葉は、この肉体での役目を終わる「最期の日」というのが、夫と私の合言葉でした。
~中略~
私は息子たちにも「自分はここまで十分肉体を使わせていただき楽しく生きられましたから、延命処置はしないで」と伝えています。
■肉体はなくなっても想いはつながる
肉体はなくなっても、想いはつながります。亡き人は今、肉体を脱いで、やがて自由に光の波動の中を飛び回るようになるのですから、思いさえつなげば、いつでもどこでも、側に来てくださいます。
■生き方は死に方に表れる
私が知っている晩年の祖父(渋沢栄一)は本当に穏やかで、優しい雰囲気が漂っていました。
~中略~
祖父は自宅で、家族に見守られながら旅立ちました。静かな大往生と言えましょう。
私は数え年で10歳でしたが、そのときのことをよく覚えております。白く伸びた髭に包まれた祖父の少し微笑んだような死に顔は、崇高で静謐(せいひつ)そのものでした。「生き方は死に方に表れる」と申しますが、「皆の幸せのために」と思って生きると、あのような穏やかな死に顔になれるのではないかと思います。
背筋はピンと伸び肌もツヤツヤの「奇跡の100歳」
ここまでに紹介したのは本書のほんの一部ですが、いずれも優しい筆致で読みやすく、自己を謙虚に、他者との協調を重んじるもの内容が大半でした。ときにスピリチュアルなヒントも数多くありますが、読後には穏やかな気持ちになれます。
「100歳の著者が綴った本」ということで、確かにシニア向けの指南書です。しかし、こういった背景を取りはらって読めば、その内容は全世代にも通ずるもので、特に目まぐるしく規範が変わるきらいがある今の時代には言わば「不変の法則」が多く綴られた一冊のようにも思いました。担当編集者にも話を聞いてみました。
「以前、渋沢栄一翁の『論語と算盤』の書籍を作ったことがあり、そのご縁で、今回、渋沢翁のお孫さんに当たる鮫島純子さんの本を作らせていただくことになりました。
鮫島さんは、9月26日に満100歳になられたのですが、お話を伺っている間も、背筋がピンと伸び、お肌もツヤツヤしていて、まさに『奇跡の100歳』と言っていい、美しい方でした。
講演も拝聴したのですが、『聴衆の方々に声が届きませんから』と、数十分もの間、背筋を伸ばし、ずっと立って話しておられました。あんな100歳、見たことがありません(笑)。
本にも書いてあるのですが、何かにつけ『ありがとうございます』の言葉を発せられ、そういう前向きさ、感謝の気持ちを常に持ち続けることが、肉体にも良い影響を与えるのだということを実感しました。
また、本の中の100項目すべてにイラストが入っています。当初、イラストを入れる予定はなかったのですが、『これでは読者の方がお寂しいでしょうから』と、100点ものイラストを短時間でお描きくださいました。鮫島さんがイラストを描き始めたのは高齢になってからですが、すでにイラストがメインの本も数冊出されています」(光文社・担当編集者)
筆致同様、どこかほっこりするイラストも鮫島さんならではのものだと思いました。最後に担当編集者に読者に向けてのメッセージをもらいました。
「『こんな風に年を重ねられたら』と思うことしばしばの、今回の編集作業でした。重いバケツを持ち上げてギックリ腰になった瞬間、最初に出てきた言葉が『ありがとうございます』。
とにかく、明るさ、前向き、プラス思考に満ちあふれた本です。といっても、『元気を出しましょう』と大きな声で呼びかけるものではなく、穏やかで、温かで、軽やかな内容になっています。
100項目の中の1つ『人生は前半よりも、後半が大切』。人生の折り返し地点に差しかかっている方、すでに後半に突入している方、高齢でひとり暮らしをしている方、心穏やかに暮らしたい方に、是非お手に取っていただけますと幸いです」(光文社・担当編集者)
(まいどなニュース特約・松田 義人)