保護猫を迎えた矢先に難病が発覚、再発・リハビリ…飼い主の願いは「絶対に救ってやりたい」
先代猫が旅立ち、新たに迎えたのは保護猫。とも君と名付けられたキジ白のオス猫は、「FIP」という難病を発症しました。飼い主の田中さん(仮名)は姉妹2人で、ネコでは前例が少ないリハビリをおこないながらとも君の介護にあたっています。寛解からの再発、自立歩行に向けたリハビリ、経済的な負担…FIPと闘う猫を持つ田中さんにお話を聞きました。
■発症から闘病
FIPとは猫伝染性腹膜炎のことで、猫コロナウィルスが体内で突然変異して起こる病です。症状は大まかに2つに分けられ、腹膜炎などが原因で腹水や胸水が溜まるウェットタイプ、臓器に肉芽腫性炎ができることで内臓に症状が出るドライタイプがあります(明確に判定できない場合あり)。致死率が極めて高い難病で、猫を飼う人には広く知られている病気です。
田中さんととも君の出会いは今から約2年前。先代猫を亡くし新たに猫を迎え入れようと考えた田中さんは、保護猫シェルターに足を運びました。そこでとも君に出会ったそうで、「とも君が私の膝に乗って離れようとせず、我が家に来たいんだなと思ってその日に連れて帰りました」とその日を振り返ります。
FIPが発覚したのは、それからわずか約3か月後のことでした。ある日、田中さんはとも君の瞳がやや曇っており、左右差があることに気が付きます。病院に連れて行ったところFIPと診断され、致死率が極めて高いこと、余命幾ばくも無いことを告げられました。「信じられない思いでした」と語る田中さん。その気持ちとは裏腹に、とも君の食欲は見る見る間に減退していき、目に見えて症状が悪化していきます。
では、FIPに立ち向かうにはどうすべきか。現在、FIPに効果があるとされるのは日本国内未承認薬を使っての投薬治療で、膨大な治療費を要します。体重と症状により投与量が変わる薬ゆえ、体重5kgほどの成猫、かつ末期症状のとも君には子猫よりも多量の薬が必要となり、治療費も高額となってしまいました。
■寛解するも、再び襲う病魔
神経症状が悪化したりと危機がありながらも、発症から約5か月後の9月にFIPは寛解。しかし、胸をなでおろしたも束の間、12月にMRI検査を経て再発が発覚し、治療を再スタートすることとなりました。年明け3月にとも君は全身不随状態、意識障害を抱えながら寝たきりの生活を余儀なくされます。
「排泄も食事も自力では出来なくなり、私たち飼い主のことも認識出来なくなりました。おむつをつけて、チューブで流動食を流す日々。私たち姉妹は毎日泣いて過ごし、長い真っ暗で出口のないトンネルにいる気持ちでした」(田中さん)。
姉妹2人で24時間体勢の介護にあたるなか、田中さんたちは衰弱したとも君を見ては「私たちが何か間違ったことをしたのだろうか」「植物状態の中、苦しそうな顔ばかりしているとも君を生かしておくことは私たちのエゴなのではないか」と自責の念に駆られていました。
しかし、「また元気になって幸せになってほしい、やはりその気持ちが捨てられず、もし一生介護が必要でも、元気になって歩けるようになる可能性がゼロじゃない限り、とも君と歩んでいこうと決めました」と前向きに治療に臨むことにしたといいます。
姉妹にとっては初めての介護だったそうで、排泄、食事、寝返り、体のお手入れ、一般的に猫が自力でできることができないとも君の介護は難航したといいます。「夜は自分達の横に寝させて、数時間おきに体勢を変え、オムツを変え、ご飯を食べさていました。特に排泄サポートは最初はうまく出来なくて、疲れ果てて泣いてしまうこともありました」。
その後は動物ヘルパーの助けを借りたり、鍼治療、漢方、デトックス、再生治療など「とにかくできることは全部試した」という田中さん。その甲斐あってか寝たきりになって3か月ほど経った頃、少しずつ症状が改善してきたといいます。自力でできなかった座り方ができるように。そこから徐々に足を動かしたり、首が据わったり、咀嚼する力や食欲も回復し、固形のご飯も噛めるようになってきました。
「何より嬉しいのが、私たちを見てご飯がほしいと鳴き、虫を追いかけて、おもちゃで遊んで、という意思表示です。寝たきりの時は目の前で大型犬が吠えても何も反応できなかったので、とも君が意思表示をするとそれだけで嬉しくて家族で大騒ぎしています」
■再び歩けるように…猫では珍しいリハビリも
さらに自力で歩けるよう、猫では珍しいリハビリにも取り組んだといいます。「どうやればいいのか分からず苦戦しましたが、ご自身の猫ちゃんにもリハビリをしている獣医の先生に出会えたことで、劇的に改善をしていきました」と田中さん。
根気強いリハビリの甲斐あって、ついに自力で立ち上がれるように。「なんとか一人でトイレに行けた日は感動して涙が止まりませんでした」。現在、ふらつきがあったり長距離は難しいものの、歩いたり、短距離であれば走ることもできるようになったといいます。
現在は再生治療の効果もあってか、抜け落ちてしまっていた毛も生え変わり、以前とは見違えるほど艶々としているそう。さらに、とも君が寝たきり生活をしている際は、介護していたときは姉妹のどちらかが必ず家にいるか、ヘルパーさんに来ていただくかしていたのですが、最近は数時間ならとも君も一人で留守番ができるほど回復したといいます。
その一方で、寛解から再発を経験したとも君を前に田中さんは今も気を抜けないといいます。「毎日、また食欲が落ちてしまうのではないか、神経症状が悪化してしまうのではないかという不安とは付き合っています」(田中さん)。
しかし、これまで幾度の危機を乗り越えてきたとも君と田中さんは前向きです。「鍼治療や再生治療などをしながら、引き続き闘病を頑張っていこうと思っています」と語ってくれました。
(まいどなニュース・門倉 早希)