飼い猫に散歩は必要か? 理想は完全室内飼いだが…SNSで賛否両論「ハーネス抜けて逃げるケースも」
「『猫にハーネスを着けて散歩の練習をさせようとしたら猫がパニックになりハーネスを抜けて逃げてしまった』という迷い猫ポスターを見ました。猫を散歩させた写真をSNSに上げる人が多く、それが可愛いと真似をする飼い主さんが後を絶ちません。基本的に猫を外に出す必要はないので周知をお願いします」とツイートしたのは、コルメルCat Specialistさん(@xCOLMELx)。
確かに、環境省も猫の室内飼育を推奨していますが、キャットシッター資格保有者の投稿者さんも、「散歩しないほうがいいと決めつけているわけではない」とツリーに書いています。
ネットの意見は、賛否両論。
「うちは成猫で保護したので、お外が大好き!ハーネスを用意すると自分から手を入れてきます。時々散歩しないと、ストレス溜まって脱走してしまいます」
「よくわかりませんが、我が家の猫は、元々野良なので、外へ行きたがるので、散歩してます!一匹は外に出て帰ってきてウンチをします。家の中だけで飼えたら楽なのですが!」
「生後半年ごろから外の世界を知らないのに四六時中外に出たがるようになり、獣医師に相談したところ『出たいのを我慢させるよりかはハーネスを少しきつめにして装着して、出してあげたほうが良い』と指導を受け、出すようになりました」
という反響もあれば、
「猫と散歩、憧れてた事はありましたが今は家の中に居るのが1番と思ってます。毎日出窓からお外を見て、日向ぼっこしながらスヤスヤ幸せそうです」
「2年前、私もやっちまいました。幸いその場で捕まえましたけど。その前に飼ってた猫が大人しく庭だけですが散歩させてたんで大丈夫だろうと思い込んでいたんですね」
「個人的にはわざわざテリトリー範囲広げさせる必要はないよねと思う。広がったら毎日パトロールしないとストレスになるしね。猫は家がたとえ狭くても、大好きな飼い主さんに構ってもらえて上下運動ができればお家の中だけで十分。我が家は27匹ずっとお家の中。野良時期に比べてお顔が穏やか」
といったコメントもあり、関心が高いテーマだったようです「いいね」は1.7万件にもなりました。
■投稿者に聞いた
投稿者さんにお話を聞きました。
ーー環境省は、完全室内飼育を推奨していますね。
「理想は完全室内飼育だと思います。一般社団法人ペットフード協会の調査による、猫の平均寿命は『家の外に出ない猫』 が16.22歳、『外に出る猫』は13.75歳という報告があります。猫に長生きしてほしいのであれば完全室内飼育をおすすめします」
ーー外には危険がたくさんあるから、外に出る猫は短命なのでしょうか。
「交通事故や感染症の他にも野生動物に襲われたり、ペットに危害を加える人がいることも忘れてはいけません。実際に毒餌が撒かれて猫が被害にあったという事件も起きています。猫を外に出すということはそれなりの覚悟が必要です。『うちの子は外でも大丈夫』という意見もありますが、何が起こるか分からないのが外の世界。そのリスクの高さを考えるとやはり危険の少ない室内でぬくぬくと過ごす猫が1番幸せに思えます」
ーー散歩には、健康上のリスクも伴いますか。
「ワクチン接種をしていても、お散歩には様々なリスクが伴います。特に寄生虫による感染症はワクチンでは防げません。猫がかかる寄生虫にはノミ、マダニ、フィラリア、回虫などがあります。例えば回虫は猫のお腹の中に住みつき、成長すれば10cm前後にもなる白い糸状の虫になります。厄介なことに回虫の卵は小さすぎて肉眼では見えず、猫の体に卵がつけば、毛づくろいによってそれを舐めとり体内に侵入します」
ーー外には害になる植物もありますね。
「猫にとって危険な植物は数百種類もあり、安全かどうか判断するのは非常に難しいです。特にユリ科は猛毒として有名で、花びら、葉っぱ、花粉、ユリが入った花瓶の水まで全てが毒です。ユリの葉をかじった猫が急性腎不全で亡くなったという事例もあります。もし花粉が飛んできて猫の体につけば、これも毛づくろいによって直接花粉を舐めてしまうことになります。ユリ以外にもチューリップやアジサイ、カーネーション、キク、キキョウなど比較的身近にある植物も猫にとっては毒性があります。危険な植物の見分けは難しいので、猫には植物を近づけない方が無難です」
ーー逆に、お散歩をしなくても健康上、問題ないのでしょうか。
「猫は、外の風に当たらなくても問題ありません。自分の縄張りを大切にする動物なので、室内で育った猫はそこがテリトリーであり、いきなり外に出されるとかえってストレスになる可能性があります。室内育ちの猫にお外の空気を吸わせてあげるのは飼い主さんの自己満足で、車の音や人の話し声、野良猫のニオイがする外の世界に行くことが猫にとって本当に必要なのかはよく考える必要があるでしょう」
■お散歩が必要な猫は庭で散歩しよう
ーー猫のお散歩を全面的に否定されているわけではないのですよね。
「例えばある程度の年齢まで外で過ごした猫や、飼い主によって屋外に連れ出された猫、脱走によって外の世界を知ってしまった猫などは、お散歩が必要です。行動範囲が広がると、行けなくなった時にストレスがたまり、病気になる子も珍しくありません。基本的にお散歩はオススメしませんが、体調を崩してしまうくらいなら安全対策を徹底してお外に出すのも選択肢のひとつになります」
ーーどこに行ってもいいのでしょうか。
「いえ、お散歩は自宅の庭のみに留めた方が安全です。地域住民とのトラブルや交通事故などを避けることができるでしょう。また自己判断でお外に出すのではなく、かかりつけ医に相談し、リスクを考慮した上で判断するのが懸命かと思います」
ーー首輪やハーネスをする時、注意することはありますか。
「猫の頭は小さいので、首輪だけでは抜けてしまうことがあります。また、犬と違って高い所にも登るため、もし何かに引っかかれば宙吊りになり、首が締まってしまう危険性もあります。市販されている猫用首輪は首に負担がかからないよう軽くて柔らかい素材のものが多く、あまり頑丈ではありません」
ーーハーネスの方がいいのでしょうか。
「なのでハーネスでしっかりと胴体を固定してあげる必要があります。ハーネスのサイズ合わせですが、猫がしっかりと4本足で立っている状態で計測してください。座っていたり横たわっている姿勢だと正しい採寸ができません。そして、被毛ではなく体の表面を測ることがコツです。なので長毛種は見た目よりも小さいサイズになることもあります」
■夜鳴き=「外に出たい」ではない
ーー「外に出たい」と鳴かれて、根負けしてしまう人もいます。
「私も保護猫を迎えた時に夜泣きをされた経験があります。しかし、お外に出たいから夜泣きをするのではく、どちらかというと急に環境が変わって不安になったり、一緒に暮らしていた猫がいなくなり、寂しくて鳴いているのではないかなと思います」
ーー猫は環境の変化に弱いと言いますのもね。
「夜泣きをされた時に飼い主さんが構ってしまうと、『鳴けば構ってくれる』と学習してしまい、余計に夜泣きが悪化することもあります。なので夜泣きをされても反応しないことが大切です」
(まいどなニュース特約・渡辺 陽)