複雑な列車種別がわかりやすく?…阪急に「準特急」が誕生する理由 関東では京王でなくなったばかり
阪急電鉄は10月12日にダイヤ改正を実施することを発表しました。実施日は12月17日です。今回のダイヤ改正は大規模なもので、阪急ユーザーに大きな影響を与えることになります。鉄道ファンで特に話題になっているのが「準特急」の“復活”です。
■「快速急行」が「準特急」になる
今回のダイヤ改正では神戸本線・京都本線に新種別「準特急」が誕生します。新種別といっても、新たに停車駅が異なる種別ができるわけではありません。現在運行している快速急行が準特急に名称が変わるだけです。方向幕の色は現在の黄色から赤色になります。
現在の快速急行は神戸本線と京都本線で性格が異なります。神戸本線の快速急行は早朝と深夜時間帯に設定され、特急系統の代わりに走ります。停車駅は大阪梅田、十三、塚口、西宮北口、夙川、岡本、六甲、神戸三宮以遠の各駅です。ちょうど通勤特急の停車駅に六甲をプラスした形です。
一方、同じ黄色方向幕の急行は西宮北口以西の各駅に止まるため、快速急行とはまったく異なります。急行も早朝(土休日)と深夜時間帯に運行し、大阪梅田発神戸三宮行きの最終列車の種別でもあります。
一方、京都本線の快速急行は昼間時間帯以外の時間帯に運行されます。停車駅は大阪梅田、十三、淡路、茨木市、高槻市、長岡天神、桂、西院、大宮、烏丸、京都河原町です。いずれの駅にも、特急もしくは通勤特急が停車します。なお京都本線には快速急行以外に種別幕に黄色を用いる種別はありません。
■京王でなくなったばかりの「準特急」
関西では馴染みがない「準特急」ですが、関東大手私鉄では2022年3月まで京王が使用していました。京王に準特急が登場したのは2001年のこと。特急停車駅に分倍河原・北野を追加し、新宿~府中間は特急、府中以遠は急行と同じ停車駅(いずれも当時)でした。
以降、特急・準特急の停車駅は増加し、準特急の運行本数は増えたり、減ったりしました。2022年3月ダイヤ改正にて、事実上特急が準特急化する形で準特急は消滅。京王ファンからは準特急消滅を惜しむ声が聞かれました。
■「準特急」になるメリットは
さて一般利用客からの視点に立った場合、快速急行が準特急になるメリットがいくつか考えられます。まず終着駅まで先着する列車であることが明確化される点です。
現行ダイヤでは神戸本線・京都本線ともに快速急行は終着駅まで先着します。しかし特急系統の種別ではないため、放送で終着駅まで先着する旨を案内することも。筆者自身も利用客から快速急行が先着するか否か尋ねられたことがありました。
準特急が終着駅まで先着すると仮定した場合、「特急」と銘打つことにより、自ずと終着駅まで先着することが理解されるのではないでしょうか。
京都本線の場合は通勤特急との差別化が挙げられます。今回のダイヤ改正では京都本線平日朝夕ラッシュ時間帯において準特急の本数が増えます。一方、通勤特急の本数は削減され、平日朝ラッシュ時間帯の上下各3本になります。
通勤特急と準特急の違いは淡路駅に停車するか否かで、通勤特急は同駅を通過します。種別色は共に赤色ですが、特急に準ずるの「準」が付くことにより、利用客は「通勤特急よりも停車駅が多い」というイメージが定着するのではないでしょうか。
神戸本線の場合は急行との差別化が挙げられます。神戸三宮方面の深夜時間帯は快速急行の運行終了後に急行が運行されます。快速急行と急行の種別色は共に黄色ですが、先述したとおり停車駅はまったく異なり、混乱する利用客も見かけました。
快速急行が準特急になると種別色が赤色になるので、視覚的に急行との違いが明確化し、利用客にとってわかりやすくなります。
このように「準特急」導入は「わかりやすさ」というのが最大のメリットであるように感じます。
(まいどなニュース特約・新田 浩之)