ガリガリに痩せて心を閉ざしていた野犬…少しずつ距離を縮めた結果「可愛すぎて胸が苦しい」 SNSで話題の保護犬コミックエッセイ

tamtam(タムタム)さんは、行き場を失った犬や猫を保健所から預かり、家庭で慣らしてから里親を探す「一時預かりボランティア」を個人で続けている女性。保護活動を通じて出会った犬や猫の姿を素朴なタッチの漫画にして発信するInstagram(@tamasisters)のフォロワーは4.6万人を超える人気で、女優の二階堂ふみさんら著名人のファンもいる。「自分の方が犬や猫たちに支えられている」と語るtamtamさんに、保護活動に対する思いを聞いた。

tamtamさん宅には現在、犬3匹と猫7匹の計10匹がいるという。「今までお世話をした子たちの数は、もう把握していません」と笑って振り返るtamtamさん。自身の幼い2人の子供を育てながら、保護犬や保護猫たちがいつの日か里親の下で幸せに生きられるよう、日夜、愛情を注いでいる。

tamtamさんに引き取られた犬や猫たちは、それぞれ深刻な事情を抱えている。例えばガリガリに痩せていた元野犬のビビは、tamtamさんに全く心を開かず…というより目すら合わせず、ケージの隅で岩のように固まったままピクリとも動かなかった。なんと、実に丸1カ月もの間、ケージから出てこなかったという。

それでもtamtamさんは、常に警戒心MAXのビビと少しずつ距離を縮めていった。今は、ふと目が合ったり、小首を傾げたりといったビビが時折見せるちょっとした仕草や表情に「可愛すぎて胸が苦しい…!」と悶絶するほどに溺愛。ついには散歩に連れ出すことにも成功したという。

「ビビみたいに散歩できなかった子ができるようになるとか、今にも死にそうだった子が無事に生き延びて里親さんに引き取られ、海やキャンプなどに連れて行ってもらって幸せに暮らしている姿を見ると、心の底から『よかったなあ』と思います。私が保護活動を続けているのは、不幸な犬や猫たちを見て見ぬ振りはできないという思いももちろんありますが、実は『私自身が励まされるから』というのが本音かもしれません」

10月末、tamtamさんがこれまでにInstagramで発信してきた漫画のうち、ビビを含む個性あふれる7匹の保護犬に関するエピソードをまとめた初の書籍「たまさんちのホゴイヌ」が発売された。Instagramで反響を呼んだ漫画に加え、描き下ろしのカラーイラストや実際の保護犬たちの写真も交えた、見どころの多い1冊になっている。

優しい絵と言葉、温かい読後感が魅力…ではある一方で、tamtamさんは「正直に言うと、この本は綺麗事なんです」と言い切る。

「実際の保護活動には、もっと厳しい現実があります。安楽死を迫られたり、保健所で触れ合った子が感染症になって、その犬舎全部が殺処分されたという報告を受けたり。それに、『保護』や『愛護』に暗いイメージを持っている人も少なくないと思いますし、殺処分問題に関心を持っていても、実際に保健所に足を運んでみようという人はほとんどいないのが実情です」

「でも厳しいことばかり言っていても、敬遠されるだけ。これまで漫画に描いてきたように、保護活動には楽しいこと、嬉しいこともたくさんあります。私は保健所に行くと、『犬や猫の命を救うためにこんなにも頑張っている人がいるんだから、私も頑張ろう』とむしろ元気をもらえるんです。この本を読んで、少しでも保護活動に関心を持ってくれる人が増えればいいなと願っています」

「たまさんちのホゴイヌ」は税込1320円。売上の一部は、保護犬の支援活動などに取り組んでいる団体に寄付される。

(まいどなニュース・黒川 裕生)

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