「将来はイヌの聖地に」大阪・泉大津市にワンちゃん750匹が大集結 「飛行犬」の撮影会も
様々なワンちゃんがなんと750匹も勢ぞろいしました。6日に大阪府の泉大津フェニックスで開かれた「泉大津市80周年 市民にぎわいフェスティバル」での出来事です。広さ70m×50mのドッグパークでは「飛行犬」の撮影会やドッグヨガ教室、ボールペンを使った動物絵師の作品も展示され、たいへんな賑わい。参加者からは「イヌの聖地になったらいいのに」という声も上がっていました。
今回、開催された「泉大津フェニックス 市民にぎわいフェスティバル」(主催大津市、企画制作トライハードジャパン)には飲食店を中心に46のブースが出展。ステージでは全国的にも名前の通った久米田高などの華やかなダンスが繰り広げられました。さらに、キッズパーク、スポーツエリア、アウトドア体験、ふれあい動物園など様々なコンテンツがそろい、全世代が参加できるイベントになっていました。
また地元出身のオール阪神、吉本新喜劇の五十嵐サキもステージに登場。イベントをおおいに盛り上げてくれました。市の担当者によると、泉大津市は大阪府下では7番目の市として誕生し、今年で市制80周年。市主催による1万人規模の参加型イベントは初めてとのことでした。
開催場所となった泉大津フェニックスは埋め立て地でなんと21ヘクタールの広大さ。これまで音楽フェスを開催しているものの、泉大津市民にもあまり知られていないのが実情でした。
「土地は市の所有ではなく、大阪府が管理していますが、いろんな方に使っていただきたい。そのためには知名度を上げていかなくてはいけないのですが、アクセスが良くないのと、インフラが整っていないのがネックになっています」
そんな中、初めての試みとして注目されたのがドッグパークです。甲子園球場5個分もあるという土地の一部をワンちゃん専用スペースとして開放。犬用パンツの着用と芝生を激しく傷めないことを前提に飼い主と心置きなく過ごせる時間をつくりました。
10時から17時までの間、訪れたワンちゃんはなんと750匹。今回のイベントをプロデュースした高下莉希羽(りのは)さんは昨今のペットブームに触れ「犬の幼稚園に老人ホームなど、ないものがないほど」と評価しつつも「ペット先進国のイギリス、アメリカ、イタリアなどと比べると日本は様々な面で進んでいない」と指摘し、こう続けました。
「いま私たちが一番に取り組んでいるのは犬の健康寿命を延ばすこと。飼い主との老々介護も課題のひとつです。寝たきりにしないようにマッサージの方法や日ごろのトレーニング、どのようなフードがいいのかなど遊びながら情報交換し、学ぶ機会になればと思っています。その意味でも今回のイベントは有意義だったのではないでしょうか」
長年ホテル業界にたずさわっていたそうで、ホスピタリティーはお手のもの。犬に関する様々な資格を持ち、現在は大阪市内にある「オフィスグレイス」代表として保護犬活動にも力を入れています。そんな高下さんに「最近、いろんなところで犬のイベントを見かけるんですが…」と質問したところ「10月から5月までがシーズンなんです。ワンちゃんは暑がりですから」と返ってきました。なるほど。もし、犬を飼うなら一から勉強しないといけませんね。
だからというわけではありませんが、ドッグヨガ教室に足を運んでみました。犬がヨガ?そうではありません。主宰していたインストラクターの西村真知子さんによると「日本ドッグヨーガ普及協会」という団体があり、愛犬と触れ合いながらヨガを楽しみ、同じ時間を共有するのが目的だそう。
「みなさん、お仕事で忙しくされているでしょうが、ヨガの時間にワンちゃんと向き合って絆を深め合ってください。触れ合うことで互いのエネルギーを届けたり、取り込むことができると思います。互いに健康でいられることを願ってます」
活動を始めたのは9年前。びわ湖の湖畔でも開催したことがあるそうで「屋外のときはワンちゃんに意識が向くことで周囲を気にせず、集中できる利点もあります」と話していました。
■「飛行犬」飼い主とカメラマンの共同作業が必要
その隣で行われていた「飛行犬」の撮影会も見学しました。飛行犬とはジャンプして気持ち良さそうに手足を伸ばしている愛犬の決定的な瞬間を写真に収めるもの。飼い主とカメラマンの共同作業が必要です。この日は3800円とリーズナブルな料金設定。写真だけ見ていると簡単そうですが、シャッターチャンスはそうそうなく、腕と根気がいる仕事のようでした。
最後に訪れたのが動物絵師「竹馬」こと大矢清人さんの作品です。普通のボールペンで描いていると聞き、驚きました。いや、いまでも信じられないほどです。これまで1000匹以上の動物を描いたそうで、ペットの写真を送るだけで1カ月も経たないうち31cm×28cm(額縁含む)の水彩画(3万4000円)が手元に届くのです。依頼があれば、もっと大きな絵も描き、タペストリーにもできます。
大矢さんは京都の呉服商の家に生まれ、映画館の看板描き職人に憧れていたそう。その後、食品業界に進み、ペット用の健康食品を任された際に似顔絵をプレゼントとして描き始めると「謎の画伯」として注目を集めるように。そして定年を機に動物絵師になったとのことです。
「作品の3分の1ぐらいが亡くなったペットを描いてます。それだけで飼い主さんの気持ちが伝わって来ます。描く際に大事なのは目。いつも右目から描いていきますが、目が生きていると言われるとうれしいです。瞳に映った飼い主さんを描くと”私が映っている”と涙を流される方もいます」
それにしても大阪のベイエリアに、こんな広大な土地がほぼ手つかずの状態で残っていたのは驚きです。参加者からは「こんなイベントがあれば、また参加したい。ここに来れば、何でもそろっている。そんな場所になればいいのに」「将来、ここがワンちゃんの聖地になればいいのに」などの声が上がっていました。
インフラが整っていないのが大規模イベント開催に向けて尻込みしていた理由。生きものを迎えるとなると何かと大変でしょうが、犬の聖地というのはおもしろいアイデアではないでしょうか。インフラがないのを逆手にとって、一から始めるのもありかもしれない。
(まいどなニュース特約・山本 智行)