保護時に堕胎も経験…“猫嫌いの女王様”が、子猫と出会って変わった! 見つけた母親としての役割、同居猫とも仲良しに

野良猫は保護した際に妊娠していることが少なくありません。出産予定日が近い猫はそのまま出産を待ちますが、堕胎可能であれば避妊手術をそのまま受けることも。そのことにより、心に傷を負う猫も存在します。

高知県の桃ちゃん(当時3歳)も、保護時に堕胎をした猫。公園で人間からパンなどを貰って暮らしていました。とても綺麗な猫なので虐待を恐れたボランティア団体が保護し、譲渡会に出ることになりました。2019年10月末のことです。

そこに訪れたのがKさんと同居するKさんの恋人。既に一緒に暮らしている麦くん(当時3歳)のお友達を探しにきました。というのも、麦くんはKさんが好きすぎて、片時も離れたくないと「泣く」んです。分離不安が病的になる前に、お友達を作ってあげたいと考えました。

譲渡会には可愛い子猫がたくさんいます。その中でひときわ輝いていたのが桃ちゃんです。まるで女王のようにドン!と君臨していました。その眩しいこと。Kさんの恋人は一目で心を奪われ、ぜひ女王に仕えたいと申し出ました。

でも、ケージにかかった名札の横をよくよく見ると、但し書きがあったのです。「猫嫌いなので、単独飼育をお願いします」と。泣く泣く諦めるしかありませんでした。嗚呼、女王に仕えたかった…。

それから少し経った日のこと。いつも外出時にお願いしているキャットシッターさんに、桃ちゃんの話を軽くしたんです。するとキャットシッターさんは桃ちゃんを知っているというではありませんか。なんでもまだ桃ちゃんは新しい家が決まらず、保護団体にいるとのこと。猫嫌いでも麦くんとの相性は良いかもしれないよと、トライアルを勧めてくれました。

勧められるがまま桃ちゃんを家に迎え、麦くんとの相性を見ます。女王を家に迎えられKさんの恋人は有頂天!一方、桃ちゃんは体の大きい麦くんが怖い。隅っこに隠れて出てきません。麦くんは尻尾を立てて桃ちゃんに挨拶するものの、桃ちゃんに「シャー!」をされて意気消沈です。

「やっぱりダメか…」

トライアル期間を半ば残し、桃ちゃんをボランティア団体へ戻そうと考えていたところ、庭に1匹の子猫が現れたのです。生後2カ月にも満たないであろう小さい小さい子。実はKさんの家は山に面していて、タヌキやハクビシン、アナグマも遊びに来るお庭なんです。つい先日はタヌキの決闘が行われたばかり。子猫がそんな争いに巻き込まれてはいけませんから、Kさんは慌てて保護します。

さあ、家の中に子猫が入ります。すると、隅っこに隠れていた桃ちゃんが顔を出すではありませんか。鳴き声が聞こえるたびに、ソワソワソワソワ。この様子を見たKさんは一つ賭けに出たんです。

それは、隔離期間が終わったあと桃ちゃんに子猫のお世話を任せてみること。「女王」としてもてなすのではなく、「家族」としての役割を与える。そうすることが、桃ちゃんにとって暮らしやすくなるのではないかと考えました。

このKさんの賭けは大当たり。最初こそ「シャー!」の洗礼を子猫に浴びていましたが、3日も経たないうちにせっせとお世話を焼き始めたのです。家の中の快適な場所を教えたり、玩具を譲ってあげたり。「あずき」と名付けられたこの子猫も、桃ちゃんをまるで本当のお母さんのように慕います。

心が落ち着くと、あれほど怖かった麦くんとも仲良く過ごせるように。時々、追いかけっこはしますが、一緒にお昼寝するようにもなったんですよ。風格も増して、家の中をゆっくりと歩く様はまさしく「女王」。機嫌が良い日は、鼻歌も歌っているんですよ。麦くんも桃ちゃんをとても大切に扱ってくれます。なんだか執事のよう。

桃ちゃんはKさんのことが大好きで、夜寝る時はいつもKさんのお布団へ。抱っこも大好き、ちゅーるも大好き。Kさんの恋人も麦くんもあずきちゃんも大好き。でも、動きたくない時は大好きなKさんのお願いでも動かない。だって女王だから。

猫といえど母親であり、女性。その気持ちに寄り添ったからこそ、桃ちゃんは大好きなものがいっぱいの猫になりました。上げ膳据え膳で接待してばかりでは、こうはいかなかったでしょう。

役割をもらった桃ちゃんは、今日も鼻歌を歌いながら麦くんと小豆ちゃんを従えて家の中を闊歩します。「ちゅーる、ちょうだい」と。

(まいどなニュース特約・ふじかわ 陽子)

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