ザ・タイガースのPeeこと瞳みのるさん 遠のいていた故郷・京都に足を運んだ理由 「常に自分の座標軸を求められる街」

9月23日、ウィングス京都イベントホール(京都市中京区)でミュージシャン、中国文学者の瞳みのるさんが自身の誕生日の1日遅れでバースデーイベント「瞳みのるHa・Pee・y Birthday Event 2022 in Kyoto ~京都・千本通り物語~」を開催した。

1960年代後半のグループサウンズブーム期にザ・タイガースの「ピー」として「ジュリー」沢田研二に次ぐアイドル的人気を博した瞳さん。76歳を迎えたこの日も若々しい姿で大勢の観客を魅了した。

故郷・京都での5年ぶりのバースデーイベントは京都の千本通りの歴史、そしてザ・タイガースのメンバーたちとの関りを紐解くトークショーと歌。旧知のゲストを交えつつ京都各所のいわれや、メンバーたちと友情を育んだ少年時代の思い出が語られ、初公開となるメンバー集合写真も公開。また2歳の時に亡くなった母の写真を初めて見た時の思いをつづったという「1枚の写真」を披露した時には、会場のあちこちでもらい泣きする観客の姿が見られた。

イベント終了後、瞳さんにお話を聞いた。

--上京されて56年。現在の京都についてどう思われますか?

瞳:今回のイベントに向け、春からいろんな場所を訪れ準備をしていました。実家の最寄り、二条駅を降り立った時は一体どこにいるのかわからなくなるほど…僕が住んでいた頃と比べるとやはり変化は大きいですね。でも寺社仏閣や歴史的な建造物はそのまま残っているので、街中に入ればどうにか勘を取り戻す感じです。

--下立売のご実家へはよく帰られるんですか?

瞳:あのあたりにはなかなか足が向きませんね。と言うのも、僕は実母が亡くなった後に来た継母と折り合いが良くなかったんです。父が亡くなった後の遺産相続でも揉めてしまって、それ以来ね…。

3人妹がいて、彼女たちとは仲良くしたかったんだけど、そうするきっかけもつかめなくて今に至っています。

--京都には複雑な思いも抱いておられるんですね。今回、久しぶりに京都でバースデーイベントを開かれたのはどういう思いからでしょうか。

瞳:複雑な思いもあるんですが、それ以上に不思議な愛着があるんですよ。京都の街って碁盤の目状になっているので、通りの名前を組み合わせて場所を説明しますよね。いわば常に自分の座標軸を求められる街なんです。自分が今どこにいて、これからどこに行くのか…そんなことを考えさせられる独特の雰囲気が僕の人生観を培っているのだと思います。

今回は京都の通りや名所のいわれを掘り下げて紹介することで、ファンのみなさんに僕が京都に抱いているそういう感覚を共有したいという思いがありました。 

--今回のイベントでは郷土愛あふれる新曲「この地に生まれて」も披露されました。京都人であることへの誇りはお強いのでしょうか。

瞳:それはあります。歴史的に中心性があって、今でも新しい文化を発信している街じゃないですか。誇りもあるし、僕たちザ・タイガースを育んでくれたことへの感謝もある。今回だって、京都というメジャーな街がテーマだから退屈せずにお話を聞いてくれた人も多いと思います。自分の背景に京都があるということは誇らしいし、とても有難いですね。

--最近、テレビなどで「京都人はいけず」だと言われることが多いですが、そういう論調についてはどう感じておられますか?

瞳:それは本当だから仕方ない(笑)。みんなストレートにものを言わず、ネチネチと回りくどい。だから僕みたいな正直者は居づらくなって東京に出てしまったんですよ(笑)。

--ザ・タイガースで一番京都人っぽい方ってどなたでしょうか?

瞳:どうだろう…。加橋かつみは大阪出身だから違うし…沢田もちょっと違う。あえて言うなら森本タローでしょうか。意地は悪くないけれど(笑)。なんだか水が合うようで、しょっちゅう京都に帰っているイメージがあります。

--タローさんが一番京都っぽいというのはなんだかわかる気がします(笑)。今後もいろんなご予定があるようですが。

瞳:年末は瞳みのる&二十二世紀バンドのライブ、新年は噂のタローとジョイントライブ、来年2月から3月にかけてはザ・ゴールデン・カップスのエディ藩、ミッキー吉野と3人で横浜、神戸を回ります。

--エディさん、ミッキーさんと組まれるのは珍しいですね。

瞳:エディとは仲が良くて、昔、ザ・テンプターズの松崎由治と3人でよく一緒に遊んでいたんですよ。6年前に横須賀でバースデーイベントをやった時にゲストで呼んだことがあるんですが、久しぶりに一緒にやってみようと。ミッキーも一緒にやってみたかったので、僕自身とても楽しみにしています。僕たちの世代が影響を受けたロックンロールからオリジナルのヒット曲までいろいろやるので、ぜひ多くの方に来ていただきたいですね。

◇  ◇ 

76歳を超え後期高齢者と呼ばれるようになってなお、ますます盛んな瞳さん。同世代ではコロナ禍で出不精になってしまっている人も多いだろうが、瞳さんにその気配はない。今後も音楽活動に、文芸活動に縦横無尽の活躍を期待したい。

瞳みのる(ひとみ みのる)

1946年9月22日生まれ。京都市出身。1967年、ザ・タイガースのドラマーとしてデビュー。1971年のグループ解散後は芸能界から引退し、大学進学を経て教職へ。慶應高校で教鞭をとる傍ら、中国文学を研究し、数々の文化事業に携わる。2011年、芸能活動を再開。精力的な音楽活動、著作活動を展開。プライベートでは2015年に再婚し、2019年、72歳の時に男児にめぐまれた。

 【ライブ情報(一部)】

2023年2月12日(瞳みのる・エディ藩・ミッキー吉野ジョイントライブ)

会場:ライブバー&レストランサムズアップ(横浜)

2023年3月12日(瞳みのる・エディ藩・ミッキー吉野ジョイントライブ)

会場:モズライトカフェ(神戸)

(まいどなニュース特約・中将 タカノリ)

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