産業遺産、映画ファン垂涎 一般公開初の施設も…「廃墟の女王」やロケ地をめぐる神戸ツアー
「産業遺産って興味あるなぁ。でも、どうしたら見に行けるんだろ...?」
そんな方に朗報です。一般財団法人「神戸観光局」(以下、神戸観光局)が街の発展を支えた産業遺産たちをバスでめぐる「神戸開港の近代~現代の産業遺産群をめぐるツアー」をリリース。11月14日より申し込みを開始しました。ツアーは「港」「山」「水」のそれぞれの歴史をテーマに構成され、昼食付きの3コースが用意されています。
港の発展とともに栄えた神戸は、海と山に挟まれて平地が少ない街。そうした特性を先人たちはさまざまな工夫や努力で切り開いてきました。神戸の街づくりを支える役割を終え、今はひっそり眠る産業遺産群は、その独特の景観から映画やドラマなどのロケ地に使われたところも多数。そうした場所をめぐるツアーの見どころを取材しました。
■初公開の超レア産業遺産に、マヤカンも
3コースすべてに含まれるのが、ベルトコンベヤトンネルです。昭和30年ごろ「山、海へ行く」というキャッチフレーズのもと、山を切り開いて作り出した土砂を海まで運んで陸をつくるという大胆すぎる開発をおこなった際に活躍。神戸の地下に作られたこのベルトコンベヤが運んだ土砂で、ポートアイランドなどの人工島を整備してきました。映画「デスノート Light up the NEW world」や「鋼の錬金術師」のロケにも使われたこの場所が一般に公開されるのは今回が初めて。ここを見られるだけでも垂涎ものですが、他にも各コースで次のような場所の見学が予定されています。
【海コース】
「港町に残る近代の息吹を感じ、世界に誇る貿易港の足跡をたどる旅」をテーマに、ベルトコンベヤトンネルのほか、和田岬砲台、神戸ポートピアホテル屋上テラス ソラフネ神戸 、神戸市指定有形文化財・指定名勝「旧乾邸」の4カ所をめぐるコース。
平安時代末期に平清盛が日宋貿易のために整備した兵庫津(現在の神戸市兵庫区中之島)を、外国船から守るために建設された和田岬砲台。三菱重工神戸造船所の構内にあるため通常は非公開ですが、ツアーでは特別に公開されます。
また、映画「ミュージアム」のロケ地としても使われた乾汽船株式会社の創業者、乾新治氏の邸宅「旧乾邸」、神戸ポートピアホテルに今年7月オープンした屋上テラス「ソラフネ神戸」をめぐり、同ホテル30階のブッフェレストラン「GOCOCU~五国のめぐみ~」での昼食が付いて、料金は1人1万4800円(税込)。12月4日(日)開催で定員は30名です。
【山コース】
「近代レジャー発祥の山に眠る廃墟の女王・海上都市を造った幻の地下遺構を巡る」と題した山コース。このテーマを見て、お気付きの方もいるのではないでしょうか。摩耶山から港を見下ろす”廃墟の女王”こと「マヤカン」が含まれたコースです。映画「デスノート Light up the NEW world」などもここで撮影されました。
さらに、2004年に休止となった六甲有馬ロープウェイ表六甲線まで足を伸ばし、有馬グランドホテルの日本料理レストラン「渓-KEI-」での昼食が予定されています。料金は1人1万7500円(税込 ※摩耶山・マヤ遺跡ガイド料含む)で12月8日(木)開催。定員は19名。
【水コース】
神戸の街と切っても切れない関係の「水」。名水と名高い宮水に「赤道を超えても腐らない」と外国船員からも好まれたKOBE WATERなど、豊かな水が身近にある一方、湊川の度重なる氾濫に悩まされるなど、水とともに歩んできた神戸。「伝説のKOBE WATERを生んだダム、日本初の巨大地下河川トンネルを巡る旅」と題して、布引貯水池、日本初の河川トンネルで、映画「クローズZERO」のロケ地としても使われた湊川隧道をはじめ、操業を停止した苅藻島クリーンセンター、そしてベルトコンベヤトンネルをめぐります。北野の中国料理店「萬寿殿」での昼食が付いて、料金は1人9800円(税込)。12月17日(土)開催で定員は30名です。
いずれも、神戸の発展において重要な役割を果たしてきた貴重な産業遺産たち。ツアーの企画に携わった神戸観光局の待鳥直史さんは「映画関係者からも全国に類をみない、すばらしいロケーションと絶賛された場に、一般の方に立っていただくことができず歯がゆい思いをしていました。今回、関係機関の多大なるご協力を得て本ツアーの実施が実現しました。神戸の経済発展の原動力となり、歴史を刻んできた遺産におもむき、そのすばらしさを現地でぜひ体感してください」と話します。
産業遺産ファンにとっても、映画ファンにとっても、普段なかなか入ることができない場所への立ち入りが許される貴重な機会。しかも、バスで各地まで連れて行ってくれるうえに、ええとこの食事まで付いているという至れり尽くせりのツアー。申込みは公式サイトにて受付中です。
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