12年ぶり日本開催の世界ラリー選手権 勝田選手が3位表彰台!優勝はヒョンデのティエリー・ヌービル
閉鎖された公道を時速200キロで疾走するラリー競技。世界を転戦する世界ラリー選手権(WRC)はその頂点、世界最高峰の戦いです。WRC最終戦「ラリージャパン」が愛知県で開催されました。日本では12年ぶりのその模様をお伝えします。
■ラリージャパンとは
WRCが初めて日本で行われたのは18年前、北海道の十勝エリアで2004年に開催されました。実は筆者もその時代、2006年のラリージャパンは観戦ツアーに参加しました。当時はセバスチャン・ローブの全盛期で、シトロエンが非常に強かった時代です。その年の北海道は、最終ステージまでスバルのペター・ソルベルグがリードしていましたが、コース上にあった岩にヒットしてリタイヤ、ローブが逆転優勝という劇的な幕切れでした。
今回のラリージャパンは11月10日から13日まで愛知県豊田市を拠点に、愛知県と岐阜県の8市町にまたがって繰り広げられました。豊田市の豊田スタジアムがサービスパークになって、ここに各チームのパドックやサービスが設けられ、またイベントやパブリックビューイングも行われました。
ラリーという競技は、閉鎖された公道で速さを競うSS(スペシャルステージ)と呼ばれる区間と、それを繋いで規定の時間で移動するリエゾンと呼ばれる区間で争われます。リエゾンは普通にクルマが通行している道路ですから、交通法規を守って走らなければなりません。もし違反すると普通に取り締まられますし、また反則金や罰金以外に、それ以上高額なペナルティが競技団体から課せられるようです。
競技車両も、公道を走るのですから当然保安基準を満たしている必要があります。ヘッドライトやウインカー、ブレーキランプなどの灯火類が必要ですし、ナンバーも付けていないといけません。
ただし、競技車両の性能は普通のクルマではありません。一番上位のカテゴリー「WRC」の車両はRally1と呼ばれる規格で、1.6リッターのターボエンジンにハイブリッドシステムを組み合わせて約500馬力のパワーです。2006年当時のトップカテゴリーは約300馬力と言われてましたから、かなりパワーアップしています。
■ラリージャパン2022の様子をお伝えします
11月10日、DAY1は15時50分から豊田スタジアムで、セレモニアルスタートが行われました。オープニングは和太鼓の演奏のあと、中部地方の武将にちなんだ合戦の演し物、続いて一台ずつスタートのゲートをくぐっていきます。ドライバーとコ・ドライバーはスタート前、大太鼓を一発ずつ叩いて出て行くという趣向です。愛知県と岐阜県の知事や議員さん、室伏スポーツ庁長官といった来賓の方々がスタートのフラッグを振られてました。
最後の一台がスタートする頃にはもう、会場から数キロの鞍ヶ池公園ではSS1が始まっています。当然移動は間に合わないので、スタジアムのスクリーンでパブリックビューイングします。
トヨタのセバスチャン・オジエがトップタイムを記録、初日のリーダーに。しかしその後WRC2クラスの新井選手がクラッシュ、病院に運ばれるというアクシデントがあって、そこから先SS1はキャンセルされてしまいました。
11日、DAY2。夜明け前から筆者はSS3の稲武ダムに向かいました。観戦ポイントに到着、コースの前走をする0カーも通過していよいよ、と思ったのになかなかラリーカーが来ません。実はこの前のSS2でダニ・ソルド選手のヒョンデが発火、全焼してコースを塞ぎ、その影響でSS2、SS3がキャンセルされてしまったのでした。また優勝候補だったトヨタのセバスチャン・オジエ選手もSS2でパンク、大きくタイムロスしてトップ争いは絶望的になりました。
この日はさらに続くSS4もキャンセル、ラリーは序盤から波乱の展開です。
筆者はSS5の観戦ポイントに移動、今回のラリーで初めて全開で走るラリーカーを見ることができました。山々にこだまする排気音、スピード。普段テレビでは見てますが、やっぱり生の迫力はすごいです。鳥肌ものです。
SS7もキャンセルになり、この日を終えてトップはトヨタのエルフィン・エバンス。ヒョンデのティエリー・ヌービルが3秒差で2位に着けています。
12日、DAY3。筆者は夜明け前から三河湖の観戦ポイントを目指しましたがコースの閉鎖に間に合わず、ゴール直後のリエゾンで待機します。湖の対岸から、全開で走るラリーカーの排気音が響きます。これだけでも充分に気分が盛り上がります。通過していくラリーカー、リエゾンですから飛ばしていませんが、間近で見るその姿はやはり迫力があります。カラフルな車体が秋色の山道に映えて美しいです。
その後、午後から行われる岡崎市のSS13に移動します。ここは街中で、メディア向けの駐車場がないので電車で向かいます。岡崎城の近く、乙川の河川敷に設営されたSS13/SS14。開始前にコースを、ヤリスRally2でユハ・カンクネンが、また水素ヤリスでトミ・マキネンが走りました。二人ともWRCのレジェンドとも言える名ドライバーです。ものすごいシャッターチャンスでしたが、このコースは砂煙に泣かされました。
SS13は安全上の理由で開始が1時間ほど遅れ、SS14がキャンセルになりました。この日を終えてヒョンデのティエリー・ヌービルが逆転してトップに立ち、トヨタのエルフィン・エバンスが追う展開になりました。
いよいよ最終13日、DAY4。この日は昼から雨の予報です。SSは岐阜県恵那市と中津川市、今回のラリーで豊田スタジアムから一番遠いエリアで戦われます。筆者は豊田スタジアムでイベント取材と、パブリックビューイングで観戦します。
SS15でエルフィン・エバンスがトップタイムを叩き出し、一気にヌービルとの差を詰めましたが、次のSSでパンク。4位に落ちてしまいます。最終的に今回のラリージャパン、ティエリー・ヌービルが1位、オィット・タナックが2位と、ヒョンデのワン・ツーフィニッシュになりました。
しかし、愛知県出身の勝田貴元選手が3位に入り、地元からのヒーロー誕生にスタジアムは大いに沸きました。この4日間、リエゾンなどで道路脇に勝田選手の名前の幟や横断幕があって、ギャラリーが旗を振る光景を見てきましたので、これはまさに快挙でしょう。
コロナ禍で2年連続の中止ののち、12年ぶりに開催されたラリージャパン。来年も開催されるとのことで、今からもう楽しみです。
(まいどなニュース特約・小嶋 あきら)