私も「トラベルナース」でした!…テレビドラマで話題の“看護師の働き方” 主人公・歩くんのテキパキぶりに思わずツッコミ「なぜ物品の場所、最初から完璧なの?」
テレビ朝日系ドラマの「ザ・トラベルナース」が話題になっています。「ドクター X」の脚本家である中園ミホ氏が手掛けており、毎回、スカッと解決する物語に胸の支えがおりる内容になっています。ストーリーは問題を抱えた病院に、2人の異なる優秀な看護師が赴任し、病院の中で起こる事態に立ち向かっていくドラマです。ドラマのタイトルになっている「トラベルナース」は日本で実際にある働き方です。私自身も「トラベルナース」として働いていました。
語源となっている「トラベルナース」とは、看護師自身が「旅をするように働く場所を変える」ことを指し、1970年代のアメリカから始まりました。日本でも医療施設の人手不足の解消になるように導入され、現在は、北海道から沖縄、離島に当たるまで人手不足の病院や介護施設などが受け入れ先としてあります。
働き方は、基本的に3カ月以上の有期雇用ですが、大半は6カ月から受け入れをするところが多いです。住居や基本的に必要な家具は準備してくれている場合が多いので、比較的少ない荷物で勤務が始められます。人材派遣によって「応援ナース」「応援看護師」と言われていましたが、ドラマの影響で「トラベルナース」の方が認知されてきたように感じます。
「トラベルナース」を受け入れている医療施設は、ドラマの舞台となっている「天乃総合メディカルセンター」のように慢性的な看護師不足であるところだけではありません。産休が重なるなど、一時的に人員不足になってしまった医療機関からも募集がかかります。
看護師はまず、人材紹介会社に登録し、希望の勤務エリア、賃金、休日数などを元に就業先の紹介をしてもらいます。看護師は働きたい条件に合いそうな求人をいくつか提案され、面接を受け、両者が合意すれば、引っ越しして勤務スタートに至るのです。就業先が遠方の場合は電話での面接になることが多いですね。
「トラベルナース」は即戦力となる人材を求められているので、臨床での経験年数が3年以上あることが条件であることがほとんどです。私が学生の時から、「看護師は3年働いて1人前だ」とすっぱく先生から言われていたので、3年の経験がボーダーラインになっているようです。
業務内容や看護の提供に関しては施設ごとで大きくは変わりません。しかし、赴任して一番初めに困るのは「物品の場所がわからない」ことです。広い病院なら検査室や医局などがどこにあるか迷路のようです。
しかし、ドラマ主人公の歩くん(岡田将暉)は物の場所に困ることは一切なく、第1話では、夜中に走って医局の仮眠室まで先生を呼びにいったりします。…思わず「いや、この時代は電話があるし、患者さんのそばを離れないで!」と、細かいところについツッコミを入れたくなりましたね。転職経験者の方はきっと共感してくれると思います。
どんな人が「トラベルナース」を選ぶのでしょう。これまで私が出会った方は、「留学までに期限付きで働きたくて」「離島や北海道などいろんなところに住んでみたくて」「今までとは違う場所で自分の経験を活かしたくて」「給料がいいから」と答えてくれました。
私自身は、冬にスノーボードでプロ活動していたので、通年働くことはむずかしく、期間限定で働けることがちょうどよかったのです。雪のない6カ月は「トラベルナース」として病院で働き、活動費を稼いでいたのでした。ドラマではまだ2人のナースが働く理由は明かされていないので気になるところですね。
看護師の活躍の場として病院、クリニック、介護施設、在宅、企業、学校など様々な施設が挙げられます。さらに、ライフスタイルに合わせて、有期雇用やフリーランスの方も増えて、少しずつ働き方が多様化してきています。あなたが出会った看護師も、もしかしたら「トラベルナース」かもしれませんね。
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◆松井 英子(まつい・えいこ)看護師ライター。大阪出身、群馬在住。2006年より看護師として勤務。多様な病院・施設で働きながらスノーボーダーとして活躍。27歳の時にスポンサーを獲得し11年プロ活動を行う。アスリート、転職、移住などさまざまな経験を重ねる。「人生一度きり。後悔ないように今を生きる」がモットー。