猫のブリーダーが廃業、保護ボランティアが5匹を緊急レスキュー 風邪を引いた猫や人なれしていない子猫「世話が行き届いてなかった」
ブリーダーが廃業のため、行き場をなくしたアメリカンショートヘアの猫たち。動物愛護団体のNPO法人「ねこけん」に所属するEさんが保護しました。廃業したのは、Eさんが以前働いていた埼玉県内のブリーダーだといいます。
「2年ほど前にブリーダーから『お給料が払えなくなるから』とのことで退職しました。辞めてから連絡を取ってなかったのですが、私が猫の保護活動をしていることを知っていたブリーダーから9月下旬ごろ、『5匹を保護してほしい』と連絡が来たんです」(Eさん)
■ オークションで希望通りの値段で売れず、兼業の仕事で思わぬトラブル・・・廃業したブリーダー
アメリカンショートヘアの猫を30匹ほど飼養していたというブリーダー。定期的に猫をペットオークションに持ち込むなどして生計を立てていましたが、希望通りの値段で売れず。さらに兼業の仕事で思わぬトラブルがあったため、今回ブリーダーの仕事が廃業に追い込まれたとのこと。自身で里親探しをしていたものの、5匹の引き取り手が見つからず…わらにもすがる思いでEさんのところに相談。Eさんが保護することになったのです。
そして5匹のうち2匹はすぐに里親さんが決定。残りの3匹をEさんが一時保護することに。このうち6歳の猫2匹は風邪を引いていたことから緊急保護しましたが、5カ月の子猫に関しては人なれしていないため、なかなか捕獲することができずブリーダーのところにいるといいます。
「保護をする際に、2匹ともに風邪を引いていました。残された子猫も健康とはいえども、近々保護に向かう予定です。子猫は人なれしておらず、すぐに譲渡は難しいと思います。まずは人なれをさせてから里親さん探しを始めたいですね。風邪を引いている2匹の猫たちは健康になった段階で、譲渡会に参加します」(Eさん)
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■ブリーダーの高齢化で廃業も 病気のため飼育困難に
最近、周囲でブリーダーの廃業をよく耳にするというEさんは、その背景についてこう話します。
「一般的に聞くのはブリーダーの高齢化問題。高齢化したブリーダーが病気のため飼育困難になったり、体力的にも何十匹もの猫などを飼育できなくなったりして、廃業される方が多いようです。一方、保護を頼んできたブリーダーは40代後半で比較的若い人。金銭的なものが要因での廃業です。年齢に関係なく経営が立ち行かなくなり生活困難に陥って、廃業をする方もいます」
さらに、今回廃業したブリーダーについて、
「ブリーダー専業ではなかったこともあるのか、猫たちのお世話が行き届かなかったと感じています。働く前に職場見学をした際に、ケージの中やおトイレが汚れていました。『これでは猫たちがかわいそう』だと思い、こちらでお仕事を始めたのですが…猫が風邪を引いたり、下痢が続いたりしたときなどもすぐには病院に連れていくことはせず。何とか私一人で連れて行ったりしたこともあります。
また当時ブリーダーと2人交代制でお世話をしていたものの、ブリーダーは餌をあげたり水を取り替えたりするだけで猫たちの様子を気に掛けることはほとんどなく、きちんとお世話をしているようには思えませんでしたね。辞めさせられるときも『私がいなくなったら猫たちはどうなるのだろう』と後ろ髪を引かれる思いでしたが…」
■病気になった猫を放置して逮捕されたブリーダーも・・・「ブリーダーの許可制など法整備を」
とはいえ、当然ブリーダーといっても「全部ひとくくりにはできない」といいます。
「素晴らしいブリーダーもたくさんいます。私が知っているスコティッシュフォールドをメインに飼養しているブリーダーは、猫の出産のときも立ち会ったり、自分で赤ちゃん猫を取り上げたり。また毎日健康状態をチェックするといった細やかなお世話ぶりに感心します。本来ブリーダーのあるべき姿というのは、そうであってほしいところです。
最近では同じ埼玉県で病気になった猫を放置するなどして逮捕されたブリーダーもいました。ブリーダーになるには、動物取扱責任者の資格などを取って第一種動物取扱業に登録すれば誰でもなれるのが現状。許可制あるいは兼業を禁止にするとか、行政などが飼養場所に定期的なチェックに入るとか…そのためには法整備が必要だと常々痛感します。動物たちを金儲けの道具としてしか見ていない悪質なブリーダーも少なくありませんから・・・だからこそ、私たち保護団体はこれからも行き場をなくした猫たちをはじめ、劣悪な環境にいる小さな命を1匹でも多く救い出していきたいと思います」
(まいどなニュース特約・渡辺 晴子)