「胸がキュッとなった」妻が認知症と診断されたときの夫の言葉が話題 「そんな寄り添い夫婦になりたい」

厚生労働省によると65歳以上の認知症の人は約600万人(2020年現在)、2025年には約700万人になり、5人に1人が認知症になると考えられています。あなたは、もしも愛する人が認知症になったらどうしますか。ゆきんこ先生(@okay1yukinko)によると、ある老夫婦の妻が認知症と診断された時、夫は思いがけない言葉をかけたそうです。

その時の様子をゆきんこ先生は、「認知症と診断された70代のご婦人。夫婦で診察を受けたあと待合室で『これからいろんなこと忘れてしまうんやろか』とポツリ。するとご主人が『お前が忘れたことはオレが覚えちょるけ、気にするな』」とツイート。「将来こんな会話ができたら、この人でよかった…と思えるんだろうな。胸がキュッとなった昨日の話」と続けました。

このツイートを見た人からは、

「存在してくれるだけでいいんでしょうね、愛」

「素敵なご夫婦です」

「そんな寄り添い夫婦、僕もなりたい」

などと、夫婦をうらやましく思い多くの反響が寄せられました。

一方で「そのうち夫婦でいたことさえ忘れるのを毎日見ている」という厳しい声も。

確かに素敵なご夫婦ですが、憧れと現実はどう違うのでしょう。ゆきんこ先生にお話を聞きました。

ーーまだ軽度の認知症の方だったのですか。

「今回が初診の患者様で、家族から物忘れを指摘されることが多くなったのでいらっしゃいました。まだ軽度の部類に入る方です」

ーー認知症と診断されたらショックでしょうね。

「ご本人様がショックを受ける方と、ご家族様がショックを受ける方と、どちらもありますが、平常心でいられないのはご本人様の方が多いと思います。あまりに物忘れが酷い場合は、確定診断を聞いてご家族様が納得するケースもあります」

ーーこのご主人は、とても懐の深い方ですね。

「そう思います。でも、かなりがっかりされているようにも感じました。お二人暮らしなので、これから奥様を支えていかなければいけません。そのため、自分自身に向けて決意表明されたようにも感じました」

ーー奥様は安心されたでしょうか。

「まだ安心とまではいかないかもしれません。これから訪れる見えない不安に駆られていたと思います。ただ、『ひとりではない、主人がそばにいてくれる』という気持ちにはなれたのではないかと思います」

ーー実際には、認知症が進行するにつれて、厳しい局面に立たされることもあるのでしょうか。

「全くそのとおりです。正直、このようなお二人も認知症が進めば、本人は夫婦であることも忘れてしまうでしょう。介護は綺麗事では済まされません。この先進行する病を見越して、早めに行政のサービスやその他の協力できるご家族との連携をはかる必要があります」

ーー家族が認知症と診断されたら、どんな心構えでいたらいいと思いますか。

「認知症はなって当たり前の病だと思っていた方がよいと思います。認知症の方は、本人も家族もうすうす『おかしいな』と感じるからこそ診察を受けられます。今あるお薬は認知症を治すための薬でなく、進行を遅らせる薬がほとんどです。抗うのではなく、この先お互いが気持ちよく暮らすために必要なサポートは何か、ここにフォーカスして地域の情報を集めたり介護保険について調べたりしておく、これが大切だと思います」

(まいどなニュース特約・渡辺 陽)

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