野良猫が大繁殖、製鉄所の島「扇島」 厳しい環境から救いたい…臨海工業地帯から保護した猫のシェルターを新たに開設

動物愛護団体「幸(ゆき)アニマルサポート」(川崎市)は、東京湾に浮かぶ人工島「扇島」など川崎市内の臨海工業地帯エリアから保護した野良猫たちを収容するシェルターをこのほど開設しました。順次、負傷や病気を持っているなど譲渡が難しい猫を優先に保護し受け入れています。扇島など臨海工業地帯は、同市にある鉄鋼メーカー「JFEスチール」(以下、JFE)の工場などが建ち並び、以前から野良猫が繁殖しているエリアです。

他団体や個人の協力を得ながら、昨年(2021年)11月から臨海工業地帯の野良猫たちを180匹以上を保護してきた「幸 アニマルサポート」の代表・浜田幸さんは「これまで保護した野良猫たちを新しいご家族につなげたり、けがや病気、あるいは人になつかない子たちは私たち団体で終生飼養したりしていきます。今回シェルターの開設に伴い支援を募ったクラウドファンディングでは約2000万円も集まり、シェルターの開設に関わる費用をはじめ運営費、医療費などに充てさせていただいおります。皆さんのご支援に感謝です」と話しています。

■ “猫の島”と呼ばれた「扇島」 JFEが猫の不妊手術を進めて管理していく予定

浜田さんによると、臨海工業地帯の中にあって以前から川崎市民の間では野良猫が繁殖して“猫の島”と呼ばれてきた扇島。JFE専用の海底トンネルでしか島に渡れず、関係者以外は立ち入り禁止になっています。2023年度に高炉は廃炉になる予定で、当初は人がいなくなってしまうとささやかれ、野良猫たちが取り残されてしまうと愛護団体などがレスキューに動いていました。実際は、JFEが敷地を貸している他社の工場などもあり、人の出入りが一切なくなるわけでないとのこと。現在、JFEスチールが扇島にいる野良猫の不妊手術を進めており、管理していく予定だといいます。

扇島について「JFEは不妊手術を進めながらまた餌やりもしていただいており、扇島に関しては比較的落ち着いている状況と聞いています。ただ工場内の猫なので、体はすすなどで真っ黒、健康状態も悪くけがをしている猫も多くて。なので、私たち団体で順次、保護をしているところです」と浜田さん。

一方、JFEの陸続きの敷地内は「JFEが手放した土地があったりして管理が難しい課題もありますが、可能な限り私たち団体も健康状態の悪い猫やけがをしている猫などを優先に保護していくつもりです。疾病を抱えている猫たちは生涯治療が必要で、当団体のシェルターでお世話をいきます。また、保護して健康に問題のない猫たちに関しては1匹でも多く一般家庭に送り出し、幸せな第二のニャン生を送れるはずという思いで活動を続けています」と話します。

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■ 臨海工業地帯からけがや病気の野良猫たちを優先に順次レスキュー中

現在も、臨海工業地帯からレスキューされている野良猫たち。今回は、けがや病気の猫たちを優先的に保護し、開設するシェルターに受け入れる予定です。

1カ月ほど前に、具合が悪く動けなくなっているところを保護されたという猫(雄・推定3歳)は、構内ボランティアさんが、幸せになれるようにと「幸 アニマルサポート」の「幸」を取り、「幸空(さく)」と名付けてくれたとか。同地帯からレスキューされた猫たちの中で、幸せの漢字が付く保護ねこは3匹目だそうです。

幸空くんはよだれがひどく、その原因は口の中全てがただれるほどの口内炎でした。痛くてまともに食事を取れなかったようで、とてもやせ細っていたとのこと。保護から数日がたち…まずは、ウェットフードを完食できるようになりました。2週間が過ぎたころには、ドライフードを食べられるように。今は緊張も解け、どんどん表情は、柔らかくなっているとか。体力がもどったら、抜歯手術の予定です。

さらに、昨年11月に保護されたグラちゃん(雌・推定3歳)。保護時より腎臓が悪くて口内炎に苦しんできました。抜歯手術や抗生物質、ステロイドなど定期的な通院をし、ご飯を食べられるようになったこともありましたが、腎不全は進行し、現在は補液と強制給餌で点滴治療中です。

人間のことが怖く、触れることができない子。処置のあとは、ものすごくおびえるといいます。体調がいいときのグラちゃんは人に甘えることはないものの、お目めがまん丸でとてもかわいいとか。 シェルター稼働後も、グラちゃんのように処置が必要な猫たちは当面の間保護室にて過ごす予定だそうです。

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「幸 アニマルサポート」では、製鉄所の環境は、猫が暮らせる環境ではないと考え、保護に取り組んでいます。JFE構内から猫の引き取りを進めながら、順次新しいご家族も募集中です。また、1匹でも多くを幸せにつなげられるよう、広域譲渡や預かり団体さん、個人ボランティアさんも募集しています。(※子猫につきまして、猫への負担を考慮し、近隣のご希望を優先させていただく場合があります)。譲渡希望や預かりボランティアについてのお問い合わせは、「幸 アニマルサポート」のHP問い合わせフォームまで。

(まいどなニュース特約・渡辺 晴子)

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