自販機の前で動けなくなっていた子猫と「運命」の出会い 脚は変形、病気もフルコース…「この子を守らないと!」
■力尽きて動けなくなっていた子猫
ジジちゃん(5歳・メス)は、愛知県に住む鎌田夫妻が営む美容室の周りをうろうろしていた。2017年8月2日、弱って自販機の前で動けなくなっていたところを保護された。
獣医さんに診てもらうと、生後2カ月くらいで、猫風邪をひいていた。耳ダニがついていて、お腹には回虫がいるというフルコース。右の前脚と後脚は変形して引きずるようにしか歩けなかった。
ただ、当時鎌田夫妻は秋田犬のすみれちゃん(当時3歳・メス)と、保護して半年くらい経つシーズー犬のくりくん(当時推定10歳・オス)を飼っていたので、地域猫のように最低限の世話だけして外で生活してもらおうと思っていた。しかし外は連日の猛暑で台風も心配だったので、店舗のバックヤードに入れて里親を探すことにしたそうだ。
■運命の出会い
「また猫を保護しちゃった」
帰宅した娘のYさんに、夫妻はそう言って写真を見せた。
「当時の写真を見るとコウモリみたいなのですが、今でもわずかに面影があって笑ってしまいます」(Yさん)
翌日Yさんが美容院に会いに行くと、ジジちゃんは怒ることも逃げることもなく、じっと抱っこさせてくれた。ごはんをあげたらガツガツ食べたが吐いてしまい、ぐったりしていたという。
「このまま死んじゃったらどうしようと不安になり、元気になるまでオロオロと見守っていました。今思うと、この頃すでに私は『この子を守らないと!』と思っていた気がします」
かつてYさんは実家を出て岐阜県内で働いていた頃に、子猫を保護したことがある。しかし、当時は一人暮らしをしていて、激務のため精神的にも体力的にもギリギリで、責任を持って子猫を飼うことはできなかった。その子は親戚に譲渡し、幸せに暮らしているという。
「あの時の小さな子猫のふわふわした感触やピッタリとくっついて寝てくれた可愛らしさが忘れられませんでした。転職して実家に戻り、落ち着いてきた時にジジと出会えたことは幸運だったと思います」
■1人と1匹暮らし
やがてジジちゃんは家で家族と一緒に暮らすようになった。自分より身体が大きな秋田犬も怖がらず、尻尾にじゃれ付いて遊んだり、遊んでいる時に吹っ飛ばされてもまた向かっていく強い猫だった。シーズー犬には「一緒に寝よう」と言わんばかりに、ジジちゃんからくっついていった。
「でも、ジジが調子に乗って飛びついたり、しつこく絡んだりすると、くりから『ワン!』と教育的指導が入りました(笑)」
2019年9月、Yさんが独立して実家を出る時、ジジちゃんも一緒についていった。今は1人と1匹暮らし。ジジちゃんは夜になると一緒に布団に入ってくれるが、おかげで最初は寝不足になったそうだ。
「幸せな悩みなのですが、最初の頃は慣れなかったので体がガチガチになるし眠いしで、大変でした。最近は無意識に布団を上げてジジを中に入れ、体が痛くなりにくい体勢で寝ることができるようになりました。昔は休みの日だと10時くらいまで寝ていしましたが、今は早朝に起こされるので1日が長く感じます(笑)」
(まいどなニュース特約・渡辺 陽)