保護した子猫から垣間見る過酷な野良生活…口から大量の回虫、動物に襲われた傷跡 いまでは甘えん坊な猫に
■去勢手術後、車のトランクに入れられていた子猫
結くん(ゆうくん・オス・2歳)は、男性の個人ボランティアがTNRしようと思っていた子猫だった。そのボランティアが2020年11月8日に保護して去勢手術をしたのだが、小さく人懐っこいので元いた場所に戻すのも忍びないと思ったそうだ。しかし、自宅で飼うことはできず、車のトランクで過ごさせていた。9日後、保護団体が結くんを引き取って里親か預かりボランティアをしてくれる人を緊急募集した。
埼玉県に住むSさんは単身者だったので譲渡してもらえないだろうと思ったが、預かりだけでも保護団体に連絡したら、トライアルをすることになった。団体が保護してから3日後の17日にSさんは結くんに会いに行き、20日にトライアルが始めた。
「私は2014年9月に捨て猫のみいちゃんを家庭菜園で保護したのですが、みいと一緒にビニール袋に入れて捨てられていた他の子猫は保護することはできず、そのことがずっと胸に残っていました。何かあったら役に立ちたいと思っていましたが、何をしたらいいのか分からず、そんな時、結に出会いました」
■先住猫が拒絶反応
先住猫みいちゃんがいたので、家に来た当初、結くんはケージで過ごした。生後6~8ヶ月くらいになっていた。夜鳴きがひどくてSさんは切なくなったが、初日からごはんを食べ、トイレも問題なくできたので、ボランティアも「大物」と呼んでいた。
みいちゃんは結くんが来てから4日間連続で嘔吐した。食事もせず、おしっこも1日1回出るか出ないかという状況になり、それでも結くんを迎えていいのかどうかSさんは悩んだ。かかりつけの獣医師には「この子を戻すことも考えているの?子猫じゃないし、貰い手あるかな・・・みいちゃんは年齢位的にも落ち着いて来ちゃってるから仲良くなるまで1、2年かかるかもしれないね」と言われた。Sさんは長い目で見てもいいのではないかと考えた。
「みいは知覚過敏症のような状態になり、いつも瞳孔が開いた状態で落ち着かず、背筋や尻尾をピクピクさせて急に走り回ったり、頻繁にグルーミングするようになりました。診察してもらっても、特に私がしてあげられることはなく苦しい気持ちになりました」
インスタグラムで同じような症状の猫がいると知り、猫仲間から色々情報をもらったり経験談を聞いたりしてサプリメントも試してみた。Sさんは、インスタグラムでたくさんの人に救われて、乗り越えられたという。
「みいちゃんは今でも知覚過敏の症状が出てしまうことがありますが、私もあまり過度に反応し過ぎず、みいちゃんと関わる時間を持つようにしています」
■過酷な野良生活から家猫になった甘えん坊
結くんを引き取ってから数ヶ月後、口から回虫が出てきた。駆虫薬を使うと大量の回虫が出てきて、Sさんは外の生活の過酷さを目の当たりにした。
また、結くんの身体には、野良猫か他の動物に襲われ怪我をした跡があった。いまだにそこには毛が生えてこない。そこを撫でようとすると、結ちゃんは身体をピクンとさせて驚くような素振りを見せた。
結ちゃんはとにかく甘えん坊で猫より人が好き。やんちゃだが、臆病な面もある。みいちゃんも結くんも鍵しっぽ。家族であり、かけがえのない存在の2匹のことが、Sさんはとても可愛いという。
(まいどなニュース特約・渡辺 陽)