沖縄の人気おでん女性店主殺害容疑で娘夫婦を逮捕、自殺を偽装工作、財産目当ての犯行か?元刑事が推測
沖縄県那覇市にある人気おでん店の店主・長浜美也子さん=当時(58)=が今年8月に首を絞められるなどして死亡し、殺人容疑で娘夫婦が6日に逮捕された事件を受け、元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏は当サイトの取材に対し、自殺を偽装した可能性のある犯行から、今回の逮捕に至った経緯を解説した。
逮捕されたのは、長浜さんの長女で無職の許田美香容疑者(34)と、その夫で職業不詳の許田盛哉容疑者(34)=いずれも同県宜野湾市。逮捕容疑は8月9日ごろ、那覇市安里のビルで「おでん東大」を営む長浜さんの首を締め付けるなどして殺害した疑い。長浜さんは同店2階で心肺停止状態で発見され、その後、死亡が確認された。死因は首を絞められたことによる窒息死だった。
沖縄県警は6日に会見し、ひも状の物を使って自殺を装った形跡が現場にあったと明らかにした。県警は計画的な犯行だった疑いを視野に入れて動機や経緯を調べている。店には現金など貴重品が残され、周囲とのトラブルは確認されず、長浜さんは娘夫婦を経済面で支援し、孫にあたる両容疑者の子ども2人をかわいがっていたという。
「おでん東大」は約70年の歴史がある老舗店で、沖縄都市モノレール(ゆいレール)安里駅近くの居酒屋など飲食店が軒を連ねる通称「栄町」にあった。長浜さんは3代目店主として店を切り盛りし、旅行ガイドブックやメディアでも紹介され、地元住民だけでなく、観光客も含めて行列のできる店として知られていた。てびち(豚足)など沖縄の食材を使ったおでんのほか、豚足を焦げ目が付くまで焼きあげた「焼きてびち」が名物で、テレビ番組で著名人が実際に食べながら紹介したこともあった。容疑者として娘夫婦が逮捕された6日時点でシャッターは下ろされ、9月での閉店を告げる紙が張られたままになっていた。
両容疑者は県内で“アート活動”を展開する夫婦として知られていた。美香容疑者は点描画家として活動。長浜さんが「おでん東大」の2階を娘の美香容疑者のためにアトリエとして借り、その後はバーとしていたが、事件当時は長浜さんが物置として使っていた。盛哉容疑者は2017年に宜野湾市内でギャラリーをオープンして話題になったが、20年に火災で全焼し、クラウドファンディングで再建資金を募っていた。
両容疑者は犯行前に「完全犯罪」の方法などについて検索していたことがスマートフォンの検索履歴で確認されている。また、「被害者の心理」についても情報を集めていたという。
小川氏は「スマホから検索履歴を削除したつもりでも、警察は分かっています。今回は自殺を偽装しているということですが、当初、警察は事件と事故の両面で捜査するとしつつも、やはり、不審点があったので事件の可能性があるとみて捜査をしていた。あえて『殺人事件と断定した』として発表しなかったのは、事件の関係者が身近にいると想定してのことだったと思います。また、容疑者が調べていたという『被害者心理』については、亡くなった母親がどういう心理だったら自殺をするのか等、実際にこの娘夫婦は複数回、警察から事情を聴かれているのですけど、その時に『母親はこういったことを漏らしていた』などと、警察が納得するような話をするために調べていたのではないかと思います」と推測した。
犯行の動機について、小川氏は「一般的に考えると、母親である被害者の財産を狙った金銭目的の可能性がある」と指摘。また、同氏は「警察は容疑者2人の認否を明らかにしていないが、2人とも容疑を認めていないか、どちらかが認めても、もう一方は認めていない可能性がある。警察はある程度、早い段階で事件性があるという確証を持ったと思いますが、偽装工作がされている中で娘夫婦への事情聴取を重ね、一つ一つ解明していったと思われます」と補足した。