「電車買いました!」鉄道愛する29歳男性、購入価格は4桁万円超 ネットも応援「趣味に生きるのは悪くない」

 子どもの頃の鉄道玩具プラレール好きが高じて、大人になり本物の鉄道車両を購入した人がいます。長野県の会社員、利根川智史さん(29)。同世代の仲間たちが次々と結婚する中、趣味の世界にのめり込み、自虐的につぶやきます。「もう手遅れかもしれない」。しかしその裏には、手に入れた車両で地域を盛り上げようとする熱い思いが隠されていました。

■部品収集→運転台自作→次の夢は「電車を買う」

 3歳ごろから鉄道と機械の魅力に目覚めた利根川さん。成長とともに、プラレールからNゲージ、鉄道部品収集へと趣味の幅を広げ、学生時代には独学で乗務員室を作り始めました。

 「201系電車の乗務員室です。少しずつ部品を集めながらでしたので、完成までには7年ほどかかりました。中央快速線と京葉線で活躍した車両の部品を取り付け、通電させ、圧縮空気を使用するブレーキ装置も実車同様の機器を用意し、動かすことができるようにしています。パソコンと接続してシミュレーターと各部品を連動させ、鉄道博物館のシミュレーターをプレイしている感覚に近い環境を作りました」

 完成後、次の目標として浮かんだのが「電車を買う」。ちょうどその頃、利根川さんは勤めていた鉄道車両用品の会社を退職し、生まれ育った東京から長野へ移住。父親が経営する日帰り温泉施設「戸倉上山田温泉 万葉超音波温泉」(長野県千曲市)に転職し、鉄道の知識を生かしたイベントの企画なども任されるように。環境が整ったタイミングで、うってつけの情報が飛び込んできました。

 「長野県小県郡長和町のスキー場にJR東日本から2015年に譲渡された車両クハ115-1106が眠っていることを知りました。1978年8月に日本車両で製造された115系のトイレなし先頭車です。115系は1963年から1983年にかけて1921両が製造され、勾配の多い路線や雪に対応する装備を備えた車両として全国で活躍しました。現在は老朽化により徐々に活躍の場が少なくなり、2022年3月にはJR東日本での最後の現役車両が引退。しなの鉄道とJR西日本にわずかに残っていますが、あと数年で完全に引退と言われています」

 自身の夢をかなえるため、また集客の起爆剤になればと温泉施設の敷地内に車両を設置することを提案。車両購入に向け動き始めました。

 「ダメもとで長和町の町長へ直談判を行いました。ただ単に置くだけではなく、車両の機能を復活させて地域活性化のための活用を検討していることを伝えました。2021年8月頃から交渉をスタートし、お互いの利害がさまざまな面で一致したため、2022年4月頃に譲渡が確定しました」

 購入した車両は7月の深夜、トレーラーで約4時間かけ陸送。車両が温泉施設に到着したときは夢がかなって感慨深かったといいます。

 気になるお値段は。

 「車両そのものの金額については諸事情でお答えできませんが、輸送費込みで4桁万円を超えております。7年にわたりスキー場で屋外保管されていたため、車体の腐食が進行し、雨漏り等もありました。修繕費を募るクラウドファンディングを実施し、無事に目標額の1000万円を達成しました」

■「電車買いました!」パワーワードにネットざわつく

 利根川さんは今回の出来事を自身のツイッターアカウント「小田急3264F」(@OER3264F)に投稿。

「ほぼ同年代のフォロワーさんや同級生

・結婚しました!

・プロポーズしました!

・子供が産まれました!

一方ワイ

・鉄道部品買いました!(収集16年目)

・自室に運転台作りました!(数年前)

・電車買いました!(今年)

・スバル車楽しい!(スバル歴9年)

もう手遅れかもしれない」(ツイッター投稿から引用)

 投稿を読んだユーザーからは「人生楽しんでるって感じ」「偉業達成感がハンパない」「仕事にしていてすばらしい」「うらやましいです」「遊びに行きたい」などの声が寄せられ、7千を超えるいいねがつきました。

 「彼女がいないのも含めてそろそろまずいな」と思い直感的に投稿したという利根川さん。「まさかバズるとは思わず恥ずかしい限りです。趣味に生きるのは悪くないという意見が多かったことが印象的でした」とした上で「人生をほぼ電車と共に生きてきたとはいえ、結婚願望はあります…」と打ち明けました。

 利根川さんの情熱が詰まった車両は、修繕作業完了後の2023年5月以降にお披露目予定です。

 「修繕後の車両は、地域のコミュニティースペースとしての活用を検討しています。温泉の入浴後に休憩室として活用頂いたり、鉄道ファン向けの体験メニューも用意したりする予定です。地元の幼稚園や保育園児の活動の場として、またイベントスペースとしての貸し出しも検討しています。結婚式ができるブライダルトレインのアイデアもあります。少しでも車両に興味を持っていただき、万葉超音波温泉に足を運んでいただければと思います」(利根川さん)

 イベントの情報などは、「万葉超音波温泉ホームページ」または「万葉超音波温泉公式ツイッターアカウント」(@manyoonsen)へ。

(まいどなニュース・金井 かおる)

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