「下水から宝が!」 私たちの排泄物が「肥料ガチャ」に変身!  においせず栄養満点 神戸市のカプセルトイじわり人気

 100円玉を1枚入れてレバーを回すと、出てくるのは肥料!? いろんな種類のカプセルトイ(ガチャ)が生まれる中、神戸市東灘区で肥料を詰めた「肥料ガチャ」が登場している。実はこれ、私たちが日々出している排泄物や生活排水からできたもの。設置から約3年で583個が売れており、知る人ぞ知るガチャとなっている。

 設置されているのは、神戸市の下水道の歴史を紹介する「神戸下水道の歩み館」。隣には下水処理場があり、巨大なタンクが並ぶ。家庭から集めた下水はここできれいにし、大阪湾に流している。

 「下水っていらないものだと思われるんですけど、宝が生まれるものでもあるんです」。そう話すのは、神戸市水環境係長の岡野内晃代さん。下水を処理する際にできる汚泥には、植物の成長に必要なリンや窒素が多く含まれているという。リンは果実の成長や花の成熟に、窒素は葉の成長に欠かせない。日本では、化学肥料の原材料となるこれらはほぼ全量海外から輸入。近年はウクライナ危機などで価格も上がり、下水に含まれるリンはより貴重になっているという。

 神戸市では早くから下水の活用に着目し、2012年に民間企業と研究を開始。汚泥にマグネシウムを加えて「リン酸マグネシウムアンモニウム」の結晶を取り出す施設を整備した。驚きなのは、白い粉となった結晶にはにおいがないこと。リン20%、窒素4%、マグネシウム11.5%以上が入った栄養満点の肥料に変身した。さらに、かつてはリンが固まって配管を詰まらせる問題も起きていたが、抽出することで解決したという。

 市は14年に「こうべ再生リン」と名前を付けて、肥料会社に販売を開始。肥料会社では、再生リンにカリウムを加えるなどして「こうべハーベスト」として売られている。

■背丈が高くなって、トマトの実がたくさんなった

 だが、売れ行きは伸びなかった。「すごいのに、なかなか見向きもされなかった」と岡野内さん。魅力を伝えようと、2020年に始めたのが肥料ガチャだ。家庭菜園などで使う場合、植木鉢1つにペットボトルのキャップ1杯で十分。100グラムに小分けし、説明書、マンホールを題材にした記念バッジとともにカプセルに入れて設置。すると施設見学に訪れた人や、うわさを聞きつけた人が購入に訪れるようになったという。

 岡野内さん自身も再生リンを使ったトマトを育てたといい、こう宣言する。「肥料を使った苗は背丈が大きくなり、実もたくさんなりました。自信を持っておすすめできます」

 神戸下水道の歩み館の開館時間は平日午前9時~午後5時。土日祝と年末年始は休み。

(まいどなニュース・山脇 未菜美)

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