校庭に捨てられた聴力がない白猫 学校行事で新しい飼い主さんと出会った 「音のない世界を幸せに暮らしています」

真っ白な被毛と美しいオッドアイの瞳を持つ、ベルくん。実はベルくん、聴力がない保護猫。だが、耳が聞こえないことなど忘れさせるほどのやんちゃボーイ。その目に、たくさんの幸せを焼き付けながら暮らしている。

■保護した白猫…聴力がないことが判明

ベルくんは、段ボールに入れられ、小学校の校庭に捨てられていた子。発見したのは、子どもたち。行事のため、学校を訪れた飼い主さんは、子どもたちが貰い手を探していることを知った。

当時、自宅にいる兄妹猫が不妊手術を終えたばかりだったことから、飼い主さんはベルくんをおうちに迎えることは難しいと判断。

だが、その後、保護先がなかなか決まらないことを知り、家族と話し合って、ベルくんを迎えることにした。

鳴き声が異常に大きく、耳が音に反応していない姿を見て、飼い主さんはベルくんに聴力がないと確信。後に、鼓膜がなく、両耳とも聞こえていないことが分かった。

だが、持って生まれた障害に、飼い主さんはネガティブな感情を抱かなかったそう。

「真っ先に浮かんだのは、耳が聞こえないから捨てられたのでは…という憶測でした。私自身はどうしよう、大変そうなどとは全く思いませんでした。先住猫をお迎えした時と同じく、かわいかったです」

■先住猫に愛されながらすくすくと成長

音のない世界で暮らしているベルくんは、慎重な性格。玄関から入ってくる人を警戒したり、来客にひどく怯え、一瞬でも知らない人を見ると数日間、隠れてしまったりする。

そのため、飼い主さんは「後ろから抱っこしない」、「帰宅後はすぐにマスクを外して部屋着に着替える」、「来客時は事前に別部屋に連れて行く」など、ベルくんの心がザワつかない対策を日常的に行っているそう。

「ご飯に気づけないので、寝ている場所にお皿を持っていって匂いで起こすか、事前にお皿を見せます。あと、ダメなことを伝える時は怒った顔を見せていますね」

聴力がないという事実を前向きに受け止めているのは、飼い主さんだけではない。ベルくん自身も、そうだ。

「耳が聞こえないので、音に対するストレスを感じないみたい。どんな環境でもぐっすり眠っています。先住猫なら、すぐ逃げてしまう掃除機やコロコロを遊ぶ道具にし、ペットボトル潰しを楽しむこともあります」

なお、先住猫のジルくんとテンちゃんも、ベルくんに聴力がないことを理解し、受け入れているよう。以前、ジルくんとテンちゃんは2人で仲良く眠っていたが、ベルくんがおうちにきてからは、交代でベルくんに添い寝。

子猫のベルくんを目にし、テンちゃんはつきっきりでお世話をし、ジルくんは少し離れて、その様子を見守っていたそう。

現在は、ベルくんがトイレの砂を延々とかき続けていると、「もういいよ」と言っているかのように、優しく頭をポンとし、大声で鳴いた時には必ずどちらかが姿を見せる。

「ふたりで眠るジルとテンの姿を見られなくなって寂しい気持ちはありますが、一生懸命、ベルの面倒をみるふたりと、ふたりを信頼して頼るベルが、とても愛おしいです」

シャイなベルくんは、スリスリはしないものの、指をしゃぶったり、顔を舐めたりして、飼い主さんに愛情を伝えてくれる。

「ベルは鳴き声がとても大きいので、近所迷惑にならないか心配だったり、大声にストレスを感じる方だったりしたら、一緒に暮らすことは難しいかもしれません。でも、私は不便を感じていない。先住猫に助けられたこともあるかもしれませんが、障害があってもなくても、幸せに暮らすことはできると思います」

ベルを捨てたかもしれない元飼い主に、「耳が聞こえなくても、幸せに暮らしてるよ」と伝えたい。そう語る飼い主さんの言葉には、ベルくんへの愛が詰まっていた。

(愛玩動物飼養管理士・古川 諭香)

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