革小物の老舗メーカーが社運をかけた商品 サッカーボール柄の革財布を投入「絶対に負けられない戦い」

 サッカーW杯カタール大会が佳境を迎える中、サッカーボール柄のスタイリッシュな財布が完成し、クリスマス商戦の”切り札”となりそうだ。手掛けているのは革小物の老舗メーカー「ナダヤ」(大阪府東大阪市)で、大ヒットしたバスケットボール、野球シリーズに続く第3弾。すべて競技用の革を使用しているのが特徴で、青春時代に体験したスポーツへの郷愁を誘うことも人気の理由。灘瑛一郎代表に完成までの経緯と今後の展開を聞いた。

 今回、サッカーボール柄をモチーフにした革小物が完成したことで、ナダヤにとっては、日本における3大人気スポーツの商品をカバーすることになった。だが、バスケットボールや野球のボール、グラブの革と違い、サッカーボールの場合は入手ルートが困難。それが製品化が遅れた理由のひとつだったと灘代表はいう。

 「ようやくサッカーが完成しました。実は2年越しなんですよ。サッカーボールは合皮ですし、素材の問題や仕入れる量、入手先の問題などもあって、ここまで遅くなりました。実はバスケ、野球の財布が結果を出してくれたことで、サッカーの革小物にも踏み出せることができました」

 創業60年。地元愛の強いナダヤは東大阪をホームタウンとし、来季サッカーJ3に昇格するFC大阪のスポンサーを今年から務めていた。さらに、世界的なイベントのワールドカップのカタール大会があることから一連のスポーツシリーズにサッカーを加えるのは社運をかけた命題にもなっていた。だから絶対に売れなければいけない。そのため、灘代表は日本代表の森保一監督並みに陣頭指揮を執り、会社を引っ張って来た。

 「デザインに関しては社内はもとより社外からも合わせて20人からアイデアを募り、厳しい選考を重ねました。白黒の、いわゆるオーソドックスなボールをモチーフにさりげなく、オシャレで機能性にも富んだものをつくりました。合皮ということで、使い込んで味が出る、いわゆる革の良さはないけれど、一方で軽くて、汚れにくいといういう面もあります。白でも汚れが目立ちません」

 そもそも、このようなスポーツシリーズの革小物を作るようになったのはモノがあふれている時代にプラスアルファを加えた商品をつくろうと考えたから。メーカーとして早い、安い、きれいだけではない付加価値。それがスタートだった。2019年にバスケの小物が完成。現在は野球、サッカーの長財布、短財布、名刺入れができ、色も2種類、野球は3種類ある。

 「支持されているのはスポーツをしていたときの楽しさや懐かしさを思い出したり、そのスポーツに関わっている気持ちにさせてくれるからでしょうか。今後はイベントを仕掛けたり、催しものにも積極的に参加する考え。ノベルティーグッズなども制作してスポーツの発展に寄与していきたいですし、東大阪なのでラグビーの革を使った小物は絶対でしょう。ボクシングのグローブも財布にできればと考えています」

 もちろん、その間にやらなければいけないことがある。それは迫り来るクリスマスギフト商戦だ。灘代表は「わたしたちの業界にとっては1年で一番勝負のとき。絶対に負けられません」と意気込んでいた。

 果たしてブラボー、な結果になるかどうか。

(まいどなニュース特約・山本 智行)

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