希少な「木曽檜」から「歯磨きジェル」開発 きわ立つ抗菌効果に、歯科医師も注目

耐久性の高さや独特の芳香から、建材として使われるなど、日本人に馴染み深い木材であるヒノキだが、近年は高い抗菌作用があることが知られてきている。その効果を生かして開発された「歯磨きジェル」が注目を集めている。ヒノキの中でも限られた「木曽檜」の蒸留水から作られているといい、歯周病治療を行う歯科医師からも期待が寄せられている。

ヒノキは北は福島、南は鹿児島あたりまでの山間部に分布している30~40メートルほどの高さの針葉樹で、木目が詰まっていることが特徴だ。特に長野から岐阜にある「木曽谷」のヒノキを「木曽檜」と呼んでいる。

建材としてのヒノキは、年月を経ても虫などに食われず、カビも生えないと一般的に言われている。日本には建造して1000年を超える寺社仏閣が数あるが、多く使われているのがヒノキだ。中でも木曽檜の“強さ”は昔から知られており、日本最古の木造建築である法隆寺にも使われているそうだ。

木曽檜とその他のヒノキの違いは生育環境だ。木曽谷は厳しい傾斜地で、雨も雪も激しく降る。そのため他の地域のヒノキよりも育つのに2~3倍の時間がかかり、そのぶん木目が細かくなることでヒノキの特性がより強く出るという。

そんな木曽檜から歯磨きジェルを作っているのは、「木曽檜三百年」という会社。

「当社では、社名にも掲げているように、樹齢300年以上の木曽檜の蒸留水を使った『歯磨きジェル』を製造しています」

と同社開発者。はたして蒸留水とはどのようなものだろうか。

「一般的にアロマオイルなどで使われる水蒸気蒸留法で取り出した水のことです。樹木の枝や葉などの端材を粉砕したものを蒸して、発生した水蒸気を冷却すると油と水に分かれます。その水に非常に高い除菌効果があることがわかりました。そこで口腔ケアに使えるのではないかと歯磨きジェルの製造を開始しました」

蒸留水の除菌力は「まさに絶大」だといい、歯周病菌や虫歯菌、カビの一種のカンジダ菌などを99%死滅させる効果が実証されているという。天然由来の“浄化力”を最大限生かした商品にしたいと、保存料、合成香料・着色料など人工的な薬剤を使わないようにした。

「開発段階では依頼した業者さんが、ジェルの中に防腐剤を入れようとするのを止めるのが大変でしたね。市販されている歯磨き剤には、当たり前のように入っている成分ですので無理もないのですが、『腐らないから大丈夫だ』と説得するのにかなり苦労しました(笑)。実際検査したところ、菌が増えるどころか殺菌されているような状態で、驚きました」

誕生したこの口腔ケア用品には、意外な活用法が見つかりつつある。

「研磨剤やアルコールなどの刺激物を一切含まないため、腫れたり傷ついた口の中にも使えるのです。特にいま研究を進めているのは、歯周病患者さんや、がん治療の副作用でひどい口内炎になってしまった患者さんに対する利用法です」

その将来性には歯周病治療を行う医師も注目する。東京都立川市にある小林歯科クリニック・小林京子院長は木曽檜歯磨きジェルの使用経過をこう話している。

「歯周病菌は抗生剤で減少できますが、口内炎の原因菌であるカンジダ菌は真菌といってカビの1種ですので抗生剤の効果はなかなか期待できません。ヒノキに含まれる成分カジノールは、虫歯の原因になるミュータンスレンサ球菌や黄色ブドウ球菌、大腸菌などへの抗菌作用も認められています。当クリニックの患者様に使用していいただいたところ、1、2カ月ほど経過すると口腔粘膜の色が健康的なピンク色に回復してきています」

   ◇   ◇

ちなみに木曽檜は、長年日本人に守られてきた、大変希少性の高い樹木だという。

「現在では、木曽檜は伊勢神宮を建てるために育てられている大切な木々であり、その全てが国有林です。伐採数は国が管理しており、木曽檜を切ってよい杣人(そまびと=「木こり」のこと)は数百年前から代々決まった方々が担っています」と、同社開発者は語る。

2017年に制定された林野庁の資源管理ルールでは、「国民的と考えられる伝統行事」「国宝・重要文化財級の建造物の修復」にしか木曽檜は使用できないという。ちなみに、これに当てはまる伝統行事はもはや「伊勢神宮の式年遷宮」(次の式年遷宮は2033年)だけだそうだ。今回開発された歯磨きジェルは、建材として加工する際に切り落とされた枝葉の部分から作られているという。

(まいどなニュース/BROCKメディア)

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