引きこもった保護犬の心を開いたのは先住猫…今では新入りに寄り添う優しい犬に、施設の看板犬として活躍
広島県福山市の室内ドッグラン施設「ラッシーのおうち」。こちらには、日本最大の保護犬の譲渡活動を通じ、「殺処分ゼロ」の実現を目指すピースワンコ・ジャパン(以下、ピースワンコ)の卒業犬の2頭のワンコが看板犬を務めています。
一頭は、すっかり「ラッシーのおうち」の看板犬として活躍中の真っ白のワンコ・ジュリア。もう一頭が後からここに来た茶色いワンコ・リズリーです。
■固まるジュリアの心を開かせたニャンコの存在
今では「ラッシーのおうち」で陽気に過ごすジュリアですが、お家に来た当初はかなり怖がりで、なかなかクレートから出てきてくれませんでした。保護前後の記憶が蘇ったのか、はたまた元来の性格のせいか、とにかくクレートの中でずっと丸まり続けていました。
そんなジュリアの心を開いてくれたのは先住のニャンコたち。ときにニャンコがジュリアのクレートの中に入り「大丈夫だよ、外に出ておいで」と言わんばかりに、ジュリアの心を開いてくれました。
同じ四つ足の動物が楽しく過ごしていることを知ったジュリアはやがてクレートの外へと出てくるようになり、今では「そんなときあったっけ?」というほど、開けっぴろげに天真爛漫で元気に過ごせるようになりました。
■里親さんの後ろにくっついてきたのに、目が合うとどこかへ行ってしまう
「ラッシーのおうち」の里親さんは、ジュリアがすっかり施設の看板犬として馴染んだことを受け、さらに約3ヶ月後にリズリーという茶色い保護犬を迎え入れることにしました。
しかし、リズリーはまだここに来て間もないこともあるのか、なかなか心を開いてくれません。ソファに座りジッと固まっています。確かに少しずつ里親さんに甘えようとする素振りは感じられるものの、その「甘え方」がどうもわからない様子です。
里親さんの後ろにくっついて歩いてきたのに、里親さんと目が合うと、どこかへ行ってしまう……なんてこともありました。
■リズリーの心を開かせようと静かに奮闘するジュリア
こういったことリズリーの様子を心配そうに見つめるジュリア。いつもは明るく陽気に「ラッシーのおうち」の看板犬を務めていますが、どうもリズリーのことに関しては繊細に考えているように見受けられます。
リズリーがびっくりしないように配慮しつつも近くに寄っていったり、たまに一緒に「遊ぼう」とアピールしたり。陽気で明るいだけじゃないジュリアの心優しい一面がかいま見えます。
もしかしたら、かつてジュリアがあの先住のニャンコたちに心を開かされたように、リズリーにも心を開いてほしいと思って、寄り添っているのかもしれません。
■里親さんがワンコとの暮らしで守る「ワンコに合わせる」ということ
今はまだリズリーは緊張気味ですが、里親さんは、こういった状況でも焦らずにじっくりとリズリーが心を開いてくれるときを待ち続けると言います。そして、ワンコとの暮らしの中で絶対に守っていることは「ワンコに合わせる」ということ。
「何かしてほしい、というのは人間の都合でしかないので、人間のやりたいことと、どうすり合わせていくかを大事にしています。怒ってもしょうがないですしね。手探りでお互いに分かり合っていく過程を経て、本当の家族になっていくので。その過程がある分、絆も深くなる気がします」
こんなふうに語ってくれた里親さんのもとで暮らす元保護犬のジュリアとリズリー。2頭の第2の犬生はまだ始まったばかりです。
(まいどなニュース特約・松田 義人)