「もう女性初はええやろ」繁昌亭大賞に桂二葉…芸歴12年目で過去最速受賞 奨励賞には笑福亭鉄瓶、新人賞には桂三実
上方落語協会が主催する第17回繁昌亭大賞が12月16日発表されました。厳正なる選考の結果、大賞を桂二葉さん(36歳)が大賞を受賞。昨年のNHK新人落語大賞を女性で初めて受賞し、乗りに乗ってる若手のひとりです。わずか芸歴12年目での受賞は例になく、また女性の大賞受賞も初めてです。
■「全力で乗っからせてもらいます(笑)」
この「女性初」について記者から質問が投げかけられると、桂二葉さんは昨年のNHK新人落語大賞受賞以降、何度も同じ質問をされているせいでしょうか、こう答えました。
「もう”女性初”はええやろ。落語を聞きに来てもらえたら嬉しいです」
こう言う桂二葉さんの落語を聞きに、繁昌亭を訪れる人は実に多いんです。昨年、NHK新人落語大賞を受賞した際、お祝いに繁昌亭昼席で1週間トリを取った時は、なんと連日大入り満員で延べ1000人を超えるお客さんが。配信でも延べ500人以上が視聴する大人気っぷり。繁昌亭始まって以来の客入りを記録しました。
その後も出演する度に満員御礼となり、今や上方落語で最もお客さんを呼べる落語家のひとりに仲間入りした桂二葉さん。「女性」という珍しさだけでなく、情景が浮かびやすい語り口で人気を博しています。とても努力家だとも仲間内で評判で、文句なしの大賞受賞です。
この桂二葉さんの人気に、上方落語協会会長の笑福亭仁智師匠は「我々は全力で乗っからせてもらいます」なんて言われるんですよ。こうやって若手の活躍を温かく見守り、受け入れるベテランの存在が、桂二葉さんたち若手の成長の鍵なのかもしれません。
■共感したエピソードをドキュメンタリー落語に
奨励賞には、笑福亭鉄瓶さん(44歳)が選ばれました。笑福亭鉄瓶さんは若手のころから噺家のグループを結成するなど、若手・中堅のリーダー的存在。古典落語に打ち込む一方で、師匠である笑福亭鶴瓶師匠が手掛ける「鶴瓶噺」に感銘を受け、自身も共感できる身近なエピソードを落語にする「ドキュメンタリー落語」を発表。
ドキュメンタリー落語は、主人公となる人物から笑福亭鉄瓶さんが実際に聞き取りを行い作成。最初に手掛けたものは、家庭の事情で小学2年生から学校に通えなくなった男性のエピソードを。苦労を重ね、60歳を超えて再び勉強した姿に感銘を受け、落語にしました。この時、笑福亭鉄瓶さんの息子さんも小学2年生だったのだそう。それも共感できるポイントだったと言います。
このドキュメンタリー落語の作成と行動力、皆をまとめる統率力が認められ、奨励賞の受賞となりました。
実は、笑福亭鉄瓶さんの席に資料が置き忘れられていたハプニングがあったのです。それすらも笑いに変え、芸歴21年の実力を生でも見せてもらいました。
■数々の新作落語が評価され新人賞!
今年から新人賞が新たに設立され、栄えある最初の新人賞には桂三実さん(29歳)が選ばれます。桂三実さんは「言葉」に注目した新作落語を多数発表し、2014年から開催されている若手噺家グランプリの決勝に自身の新作落語で4度出場。第6回準グランプリにも輝いています。
桂三実さんは新作落語を手掛ける若手の中でも、言葉の持つ魅力を引き出す能力が高いのが特徴。『みんな京阪』では大阪弁イントネーションの難解さを、分かりやすい言葉に言い換え笑いを誘います。また『師匠!』というネタでは、自身の年季中の出来事をシニカルに表現。
以前、「いつか”新作落語だったら三実”と言われるようになりたい」と展望を述べていた桂三実さん。この新作落語が評価され、堂々の新人賞受賞です。
この喜びを師匠である六代桂文枝師匠に伝えたところ、「おめでとう。ところで、いつブログに載せてええの?」とのこと。お弟子さんの活躍も自身のブログで伝えたい、そんな愛情が伝わってくるほっこりエピソードも披露してくれました。
■2023年3月1日から受賞記念興業
授賞式は2023年3月1日に、天満天神繁昌亭で行われます。この時、とんでもなく大きなトロフィーが桂二葉さんに手渡されるとか。過去の受賞者から不評の大きなトロフィー、持ち帰り用のケースにはコロコロ転がせるよう車がついているのだそう。これなら大丈夫…かな?
今回の受賞者が出演する「繁昌亭大賞記念ウィーク」は、来年3月1日から1週間開催されます。大賞の桂二葉さんと奨励賞の笑福亭鉄瓶さんはトリを任されるのだそう。新人賞の桂三実さんも芸歴10年では通常出演できない順番で出演されるとか。今からとても楽しみですね。
(まいどなニュース特約・ふじかわ 陽子)