「お許しください」頭を下げる消防士…何を謝っている? 「救急車を呼んでも消防車が来ることが」その理由を聞いた
お許しください--。
深々と頭を下げる消防士の動画がInstagramで注目を集めています。
投稿したのは、京田辺市消防本部の公式アカウント(@kyotanabe_fire_dept.119)。動画は次のように続きます。
「救急車を呼んでも消防車が来る場合があります」「意識がない人や運ぶのが大変な時、消防車も行きます」
京田辺市消防本部の消防士長・山田哲也さんによると、これは消防隊と救急隊が連携して救急活動を行う「PA連携」についての投稿。『Pumper(消防ポンプ車)』と『Ambulance(救急車)』の頭文字をとってPA連携と呼ばれます。
具体的には、119番通報時に意識がない、呼吸ができない、突然いびきをかいて眠り始めたなど、患者が重症と予測される場合に、必要に応じて消防隊も現場に駆けつけ、応急処置を支援するというものです。
PA連携は他にも、建物内の階段・通路が狭いなどで患者の搬送が困難な場合や、救急車が近くにいないときにも積極的に実施。つまり、少しでも早く救助の手を届けるための重要な連携なのです。
しかし、先に消防車が到着すると「火事じゃない」「救急車を呼んだんです」と戸惑う人が少なくないのだとか。とはいえ、緊迫した現場では、丁寧に説明する時間はありません。
そこで京田辺市消防本部では、「緊急時の不安を少しでも取り除けるような情報発信ができたら」と、今回の動画を投稿しました。
それにしても、なぜ「ごめんなさい」なのか--。山田さんはこう話します。
「119番通報なんて、一生に何度も経験することじゃないですよね。そんな不安でたまらないときに、思っていたのと違う車両が来たらパニックになるのは当然だと思うんです」
「だけどそもそも、こうした情報を僕たち消防士がきちんと伝えてこなかったから現場が混乱する。不安にさせしまうことも、伝えてこられなかったことも申し訳ないという思いでした」
■消火活動だけじゃない!消防士の仕事とは?
消防車や消防士と聞くと、火災現場での消火活動というイメージが先行しますが、消防士には他にも、救急車で急病人やけが人を病院に搬送する「救急活動」、事故や災害で動けなくなった人を救助する「救助活動」という人命にかかわる重要な仕事があります。
ちなみに、救急活動や救助活動ができるのは、講習を受けて専門の知識と技術を習得した消防隊員のみ。京田辺市消防本部では、消防車に乗るすべての隊員が救急隊の資格も取得しているので、基本的に全員が救急活動を行えます。
「我々のように、100人規模という決して大きくない消防では、ひとりひとりのできることを増やさないと手が足りなくなることがあります」
「消防士の使命は、救急要請のあった方をいち早く安全に病院に搬送すること。また、命を救うのはもちろんのこと、その後の社会復帰が叶いやすいように、1分1秒でも早い応急処置を心がけています」
救急要請に消防車が駆けつけるのは、救命率を高めるため。もちろん、病院への搬送は救急車が到着してからになりますが、こうしたことを知っているだけでも、いざというときの安心感が違いますよね。
「僕たちの仕事は、たとえば救急車に道を譲ってくれるといった市民の皆様の協力のおかげで成り立っています。だから、少しでも理解が進むように、細やかな情報発信をしていきたい」と山田さんは話します。
今回のPA連携についての投稿も大きな注目を集め、動画は現在までに161万回再生を突破。5万件を超える「いいね」も集まっています。
京田辺市消防本部の公式アカウントでは、今後も、例えばユニフォームの色による業務の違いや、消防士の仕事内容など、ちょっとした疑問に答えられるような投稿を目指していくのだとか。
私たちの安全・安心を守ってくれている消防士のみなさん。そんなヒーローたちへの理解を深めるためにも、ぜひ公式アカウント(@kyotanabe_fire_dept.119)も覗いてみてくださいね!
(まいどなニュース特約・鶴野 浩己)