大手回転すしチェーンが唱えた「食の戦前回帰」は妄想! 「現代の味付けと栄養価が確立したのはここ50年」「歴史を無視したノスタルジー」
戦前への妄想的ノスタルジーがSNS上で大きな注目を集めている。
きっかけになったのは人間の鑑さん(@onshanow)が投稿した「『日本人はずっと健康的で栄養バランスの良いものを食べてきた』なんて妄想が蔓延してるから食の戦前回帰とかほざく企業まで表れるんだよな。この国の食事が『健康的』になったのはここ50年の話だよ。」という意見。
これはある大手回転すしチェーンが「食の戦前回帰」を目指し掲げる、「『食』が安心・安全だった戦前のバランスの取れた健康的な食生活を取り戻そう」「すべての食材において化学調味料・人工甘味料・合成着色料・人工保存料を使用せず、昔ながらの味にこだわる」といったスローガンに対し向けられたもの。
同種の懐古的なスローガンはこれに限らず多く見られるが、戦中、戦後の食糧難を別にしても、日本食は伝統的に多量の米を少量の塩辛いおかずで食べるという栄養価に乏しい食事形態。現代のような味付けと栄養価が確立したのは戦後の減塩運動、栄養改善普及運動の結果だ。また化学調味料などの添加物も戦前から多く使用されており、実際と異なる。
「食の戦前回帰」とは歴史的真実を無視した空虚な愛国心の発露になってはいまいか…人間の鑑さんの投稿に対し、SNSユーザー達からは
「脚気は忘れ去られたのだ(どう考えてもビタミン欠乏症)」
「平均寿命は当時の医療や衛生環境の影響が大きいのですが決して長命とは言えませんでした
一汁一菜のお米ドカ盛りは果たして健康に良かったのか(塩分過多で低タンパク食)」
「動物性たんぱく質が足りないので平均身長低かったんですよね」
「むしろ戦前なんて、栄養失調が散々言われてたくらいですからね………┐(‘~`;)┌」
など数々の共感の声が寄せられている。
人間の鑑さんにお話を聞いた。
ーー件の回転すしチェーンのスローガンへのご感想をお聞かせください。
人間の鑑:このスローガンを見たのは4年ほど前だったのですが、「バカバカしいなぁ」と思いました。
ーーこれに限らず「戦前の日本は良かった」「昔の日本は良かった」と、実態を無視したノスタルジーを抱く人はいるようです。このような現象についてのご感想をお聞かせください。
人間の鑑:そういったノスタルジーは好きではないのですが、人のサガのようなものなので仕方ないのかなとは思います。ひょっとしたら私にもそういう面はあるのかもしれません。ただ食に対するノスタルジーは左右が共通して持ってるモノのように思えます。それはどちらの陣営からも批判される事なく社会に定着しかねず、危なっかしいなと危惧しています。
ーー反響へのご感想をお聞かせください。
人間の鑑:共感してくれる方が多くおられるならうれしいです。
◇ ◇
読者のみなさんは安易な「昔は良かった」という意見に取り込まれてはいないだろうか。実際に昔のほうが良かったこともあるだろうが、多くの場合は単なる妄想や誤解に過ぎない。物事はよくよく冷静に、客観的事実に基づいて判断したいものだ。
(まいどなニュース特約・中将 タカノリ)