車体130kg!24Vの工業用モーター!巨大サイズRC戦車という世界 沼にはまった趣味人に聞いた
■趣味人口はきっとヘリコプターより少ない?
プラモデルや鉄道模型など、ミニチュアを作ったり眺めたりすることを趣味にしている人、多いのではないでしょうか。中でも動く模型、特に無線で自由自在に動かせるRCの面白さにはまる人は少なくないようです。
最も一般的なのは、やはりクルマでしょうか。比較的手軽に楽しめて、趣味としての人口はRCの中で一番多いのではないかと思います。これが船になると一気にハードルが上がります。当たり前ですが、水面が要るからです。いま、普通の人がアクセスできる水面ってあんまり無いですよね、川にしても池にしても、囲いができてなかなか水辺に立ち入れません。また、万一沈んだ場合や故障して止まった場合に回収できる手段、例えばボートなども用意したいところですし。
一方、空はといいますと飛行機にヘリコプターですが、こちらはもともと飛行場所の確保が大変だったところに、ドローンが一般的になったあおりで申請や手続きが新たに必要になって、さらにハードルが上がりました。そしてもともと操縦自体が難しくて練習が必要ということもあります。特にヘリコプターの難しさは有名で、空中に浮かせて静止するまでに何カ月もの練習が必要、その間に墜落するともちろん修理代がかかる…ということで、最も難度が高いといって間違いないでしょう。当然、趣味としての人口も少ないです。
そんなRCの世界で、さほど難度は高くないものの、さらに趣味人口が少ないと思われるのが、大型の戦車です。戦車は戦争の道具、それをおもちゃにするなという批判もあるでしょうが、純粋に機械として見た場合の機能美と力強さにはやはりある種の魅力を感じます。なので賛否はともかくとして、小さい頃に憧れた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
戦車も1/16スケールくらいまでの、サイズがあまり大きくないものはメーカーも多く、手軽に楽しめるのですが、それよりも大きなものになると一気に難しくなります。まず製品自体があまり出ていないこと、それもあって価格が高くなること、当たり前ですが大きい分だけ場所を取ること、そして物理的に重くなること…などが障害になるんですね。例えば重さが50kgとかを超えてくると、なかなか人力で持ち運びができないですからね。
土地が広くて大きな庭があって、さらに趣味に時間をかける人が多い欧米などでは、かなり大きなサイズの戦車を作られる方も多いようです。1/8くらいはごく普通で、中には1/2という、人が乗れそうなサイズの戦車を自作するマニアも居るそうです。しかし日本では住宅事情その他の事情もあって、大きなサイズの戦車を楽しまれている方は少ないようです。
そんな中、1/6という大きなサイズの戦車を楽しまれているUさんのテスト走行に同行する機会がありました。
■深夜にマンションから「出動」する戦車
Uさんは1/6戦車を2台持たれています。ティーガー1型とパンター、どちらも第二次世界大戦中のドイツの戦車です。車体はアルミ合金製で、なんとその装甲の厚さも実物の1/6、スケール通りの極厚の材料で作られています。そのため重さはどちらも100kgを大きく超えています。普通の人の力では持ち上がりません。なので移動は自走、もしくは大型の台車に載せることになります。
動力は電気で、12Vのバッテリーを2個直列にして24Vの工業用モーターで動かしています。スピーカーが内蔵されていて、実車から収録されたエンジン音を響かせ、さらに発煙装置からの排気煙を吹きながら走ります。ただし自宅マンションから運び出す際には音も煙もスイッチオフ、静かにそっと自走で台車に載せます。
「人が乗らない真夜中にエレベーターで駐車場まで下ろすねんけど、そんな時に限って誰か乗ってきてちょっと気まずいねん」
でしょうね、大抵の人はびっくりしますよね。
イギリスのメーカーが作っている少量生産の組み立てキットで、バラバラの状態で届いたものを何カ月もかかって組み立てて、念入りに塗装して仕上げられたといいます。お金だけではなく根気と情熱、そして大人の皆さんの視線をあまり気にしないスルー力が必要です。
この日は知人の私有地で、ティーガー1型を走行させました。重さ130kgの車体が、実車からサンプリングされた音を響かせながらゆるゆると走り出します。このサイズになると多少の段差や草むらは平気で乗り越えていくのですが、その乗り越え方もまたリアルです。途中、履帯と転輪の間に石を噛んでしまって、強力なモーターの力で履帯が引きちぎれる、というハプニングがありましたが、その場でUさんが応急修理。さすがオーナーです。
実はUさん、もう一台ヤークト・パンターという戦車も欲しいのだそうです。
「せやけどあれ、砲塔が無いからなあ。長砲身の大砲が旋回でけへんから、全長の問題でマンションの廊下が曲がられへんねん…」
やはり趣味の世界、突き詰めるととことん深い沼がありそうですね。でもきっと、そこが楽しいんでしょう。実は筆者も激しく共感した、12月のとある週末でした。
(まいどなニュース特約・小嶋 あきら)