「犬の殺処分」について学んだ高校生「自分たちに何ができるのか」京都で活動する彼らの思いを聞いた

 4059頭。昨年12月に環境省から発表された、2020年度の全国の犬の殺処分数です。10年前に比べると約10分の1に減少したものの、まだ少ないとは言えません。その数を「ゼロ」にしようと活動している高校生が京都にいます。森田理子さん、園田和来さん、宮田大馳さん、上田真生さん、宮川正義さん。立命館宇治高等学校3年生です。

 同校にはGLS(グローバル・リーダーシップ・スタディーズ)と呼ばれる「問題解決型授業」があります。生徒自身が解決したい社会問題を見つけ、同じ目標を持つ仲間が集まって課題に取り組むというもの。5人は「犬の殺処分」という社会問題を解決すべく、今年4月からインスタグラムによる情報発信(@place_dogs)、保護シェルターの見学、譲渡会のお手伝いなどをしています。『PLACE』というグループ名は「わんちゃんたちに安心・安全な居場所を作ってあげたい」という願いを込めてつけました。

■「殺処分ゼロ」への思い

「犬の殺処分ゼロ」を目指したいと思ったきっかけは、それぞれです。

森田「小学生のときいとこの家族が迎えた保護犬は人間を恐れていて、特に男の人を見ると震えていました。繁殖引退犬で耳のところに識別番号みたいなタトゥーが入っていて…人間のビジネスのためにひどい目に遭っていたんだろうなと思うと悲しくて、怒りの感情もわいてきました。そのときからずっと、いつか保護活動に携わりたいと思っていました」

園田「世の中には人間によって命を落としている動物がたくさんいること、身近な問題として犬が殺処分されていることをテレビで知ったとき、同じ命なのに人間の身勝手で殺されるのはおかしいと思いました。今までは見ているだけでしたが、この授業で実際に行動して貢献したいと思いました」

宮田「殺処分や、犬や猫が置き去りにされたニュースを見て、悲しみや怒りがわいてきました。自分にも何かできるんじゃないか。まずGLSで考えていくことが、一歩踏み出すことになると思いました」

上田「今はSNSでたくさんの情報を得られますが、それ以前は、殺処分の問題はどちらかと言えば放置されているように思います。僕らにとっては大きな問題でも、世の中では他の問題にスポットが当てられていた。そこに疑問を感じたのと、もう一つ、僕らは5人全員が去年カナダに1年間留学したのですが、カナダのペットショップは生体販売をしないと知り驚きました。そこで得た知識を、日本に持ち帰って生かしたいと思ったのが志望動機です」

宮川「中学校のとき職場体験で1週間、動物病院に行きました。そこで動物の命を助けている人たちの姿を見て、素直にカッコいいと思ったんです。じゃあ、自分にできることは何かと考えたとき、こういう活動だと思いました」

 共感してくれる仲間たちは他にもいます。全国から約300人の高校生が参加した『全国高校生SRサミットFOCUS』というイベントでは、それぞれが取り組むプロジェクトに意見を出し合いブラッシュアップ。いつものメンバーとは異なる視点でアイデアをもらい、今後の活動に繋がる大きな収穫を得ました。また、全校生徒に古着や古タオル、使わなくなった犬グッズなどの寄付を呼び掛けたところ、予想以上に集まったと言います。大半はそのまま保護団体に寄付しましたが、古いTシャツは犬のおもちゃに大変身。譲渡会場で子どもたちにおもちゃ作りを体験をしてもらい、そのおもちゃを使って保護犬たちとふれあうイベントを企画したところ、大好評だったそうです。

■活動を通じて現実を知る

 様々な活動を通じて、新たな気づきもありました。

園田「保護活動の現場を見学して、SNSなどで見ていたのは表面的なことで、その奥に大変な苦労があると知りました。特に、悲しい過去を持つわんちゃんたちが心を開くまで、スタッフさんやボランティアさんの努力はすごいと。また、小さな団体さんは社会からのサポートが少なく、お給料から資金を出している方も多いと聞いて驚きました」

森田「ポジティブな気づきとして、保護されているわんちゃんたちは不幸せかと思っていたのですが、見学させていただいたピースワンコ(ピースワンコ・ジャパン生駒譲渡センター)の子たちは幸せそうでした。また、いろいろ調べてみると、ドイツなど諸外国の整ったシステムに比べて日本は遅れている。法律から変えていく必要性を感じました」

宮田「譲渡会に来ているわんちゃんには『これまで大変だったんだろうな』という大雑把なマイナスイメージを持っていたのですが、実際に参加してみると全然、違いました。それをどうやって伝え、未来に繋げるかを考えていきたいです」

上田「保護犬に対するイメージが変わりました。活動前はあまり活発じゃないイメージだったのですが、とても元気で、ペットショップにいる犬となんら変わらない。それなのに日本ではなぜショップで買う人が多くて保護犬を迎える人が少ないのかと、改めて疑問に思いました」

宮川「保護団体さんの活動を実際に見て、話を聞いて、僕からすればとてもすごいことをされていると思うのですが、批判されることもあると聞いて驚きました。何もしていない人が批判するのか、と。保護活動をしている方たちの努力が認められないのは悔しいとさえ思いました」

 PLACEの取り組みは授業の一環のため、卒業でひと区切りとなりますが、5人は大学進学後も活動を続けたいと話してくれました。NPO法人を作りたい、同世代の若者に伝えることで未来を変えていきたい、日本の法律やシステムについてもっと勉強したい…。

森田「犬の殺処分問題は大きな社会問題の1つ。私たちの活動のように小さいことでも、個人が少しずつやっていけば大きな成果に繋がると思う。そう信じてこれからも頑張っていきたいです」

 5人の目と言葉には強い意志が感じられました。

(まいどなニュース特約・岡部 充代)

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