「三日とろろ」ってナニ? 東日本のお正月文化、縁起良く体にも良い食べ物「玄関に撒いたり、塗ったり」
お雑煮やおせちなど、地域によって違いが多いお正月の食文化。そのなかで「三日とろろ」をご存じでしょうか。どうやら一部地域では、三が日にとろろを食べるそうなのです。
生まれも育ちも関西の記者はこの文化を聞いたことがなく、お正月にとろろを食べたこともありません。「まいどなニュース」編集部で聞いてみるも、関西出身者が多いこともあってか「聞いたことがない」と口を揃えます。一体なぜお正月にとろろを? 調べたところ、三日とろろに関するコラムを発見。コラムの執筆者である福島県にある南相馬市博物館の学芸員・川崎さんに話を聞きました。
■三日とろろ? 学芸員さんに聞いた
ーーお正月にとろろを、一体なぜ?
「とろろは縁起のいいもので、食べると1年を健康に過ごせると考えられていました。また、当時1月3日は不浄日で縁起の良くない日とされており、とろろを食べて身を清めるという目的があったようです。
また、これは後付けかと思われますが、とろろには整腸作用があって体にもやさしいのでそういった面で、お正月で疲れた胃を労わるという意味もあるようですね」
ーー福島県ではメジャーな文化?
「三日とろろは福島県だけでなく、東北や長野をはじめ、北関東や中部地方の一部に見られる文化です。食べる日は3日のところもあれば元日や2日であったり、地域差があるようですね。ただ、個人的にはお正月にとろろを食べたことはありません。実は、私も数年前のお正月にスーパーのチラシを見て知ったくらいなので…」
ーーえっ! その地域の人はみんな食べてるものかと
「チラシがきっかけで旧市町村の民俗史の資料を調べたところ、相双(そうそう)地域では三日とろろの文化は確かにおこなわれていました。ただ、この資料の発行年などから察するに、恐らく50年くらい前の風習だと思われます。もちろん、今も続けている方もいらっしゃると思います。
また、食べるだけにとどまらず、悪いものが来ないように厄除けで玄関に撒いたり、塗ったり。相双地域の広い範囲、浜通りではそういう風習も存在したようです」
編集部注)相双地域:相馬地域と双葉地域に分けられる地域で、福島県の太平洋沿い「浜通り」地方に位置する
ーー玄関に! ちなみに食べ方は一般的なとろろと同じ?
「昔は山芋を使っていたので長芋のとろろより粘り気が強く、お味噌汁や出汁を加えて伸ばして食べていたようです」
◇ ◇
とろろが縁起物とされていることも初めて知りました。なぜ北日本が中心なのでしょうか。
川崎さんに合わせて聞いたところ、あくまで推測ですがと前置きしたうえで、「そもそも、お芋の生産量がこちら(北日本)の方が多いのかもしれませんね。こちらではとろろはよく食卓に上るのですが、関西はいかがでしょうか」とのこと。
川崎さんの言う通り、調べたところ長芋の収穫量は上から順に、北海道、次いで青森、長野となっていました(令和3年データ/出典:農林水産省Webサイト)。確かに、とろろが食卓に上る頻度や「三日とろろ」の発祥は、生産量が関係しているのかもしれません。
みなさんがお住まいの地域では「三日とろろ」食べますか?
(まいどなニュース・門倉 早希)