猫が異世界転生!?大暴れしていた“前世”の記憶は消えて、ゴロンゴロンする飼い猫に 特殊技能は…「子猫の召喚」
アニメやライトノベルで人気のジャンルといえば、「異世界転生」ではないでしょうか。現実世界で身につけたスキルを持ったまま、異世界で活躍するというもの。
岐阜県で暮らすビッグチャンスくん(推定5歳)も実は、異世界転生をした猫なんです。野良猫だったはずなのに、目を覚ますと飼い猫になっていたではありませんか。
■見慣れない大きな箱に、つい…
あれは確か2019年11月のこと。ビッグチャンスくんはいつものように、草を食べるためI家の庭を訪れていました。そこには見慣れない大きな箱が置いてあり、良い匂いが漂ってきていたんです。つい、中に入ってしまいました。その後の記憶はありません。
目を覚ますと、野良猫時代に眺めていたI家の部屋の中。目の前には優しい顔をした30代の男性がいます。「アオーン」と鳴くとケージから出してくれ、当たり前のようにビッグチャンスくんの目の前へご飯を出してくれました。
「ぼくは、いつからここにいるんだっけ?」
ビッグチャンスくんは少し考え込みましたが、出されたご飯はとても美味しく、一気に完食。お腹が落ち着いてくると、なんだか体の様子が以前と違うような気がしてきます。特に股の辺りがスースーします。おかしいな?
あと、なんだかこの家のお母さんは怖いような気がするのです。前世のビッグチャンスくんを怖い目に遭わせたような…。とりあえず、威嚇しておきました。でも、男性のことは好き。撫でられると嬉しい気持ちになるんです。
だから、男性にはベッタリ。朝、仕事に出掛けると寂しくてたまりません。その分、帰宅は嬉しくてたまりません。足下でゴロンゴロン。夜は一緒の布団で眠ります。
「ぼくはうまれたときから、この家の子です」
そんな顔をするビッグチャンスくんを、I家のお母さんは困惑しながら眺めます。この子、保護される前の記憶がなくなっているんじゃないだろうかと。
■“前世”は威圧感満点の野良猫
保護される以前のビッグチャンスくんは、町内会で問題になるような野良猫。体が大きく、威圧感があるため、怖い存在だったんです。特に糞害が問題視され、保健所に収容される予定。回覧板で飼い主はいないかと確認した後に、捕獲されるはずでした。
それを不憫に思ったお母さんが庭に犬用ケージで罠を仕掛け、ビッグチャンスくんを保護。ケージの中でビッグチャンスくんは大暴れしました。動物病院では診察を拒否されるほど。それでも去勢手術とワクチンは必須ですから頼み込んで、施術してもらいます。この機会を逃したら、もう二度と保護できないと思ったからです。
この時、動物病院から出された条件は「麻酔から覚めないうちに引き取る」でした。また暴れられたら、病院が壊れてしまいますから。お母さんはその条件を飲み、麻酔で眠ったままのビッグチャンスくんを家に連れ帰ります。
でも、家にはすでに他の猫が…。そこで、隔離のため今は別の場所で暮らしている息子の部屋に、ケースを設置しました。ビッグチャンスくんが目を覚ましたのは、ここです。あの優しい男性は、仕事のため一時帰省していた息子。初めて目にしたから、親だと思ったのかもしれません。
息子が現在の地元へ戻ると、ビッグチャンスくんは独りぼっちに。でも、隔離期間を終えると、遂に先住猫と顔を合わせる時がやってきました。野良猫時代のビッグチャンスくんなら「やんのか?やんのか?」とオラついたでしょうが、とてもおとなしくお利口さん。ちゃんとご挨拶をし、高齢の猫にはそっと寄り添うんです。なんせ、異世界転生していますからね。
■前世の記憶が邪魔をして…
あと、特殊技能も発覚したんです。それは子猫を呼ぶこと。窓際で「アオーン、アオーン」と鳴くと、数日後にひょっこり庭へ子猫が現れる。
「あのー、よばれたので来ました」
堂々と家の中に入ろうとする。ビッグチャンスくんは「まってたよ」と言わんばかりに大歓迎。これには、お母さんはほとほと困り果てました。全員保護して、里親さんを見つけます。今ではビッグチャンスくんが鳴く準備をすると、慌てて止めているんです。時々、アナグマやハクビシンまで来ることもありますから。動物には、どんな風に聞こえているのでしょう?
保護され3年が経過しました。今のビッグチャンスくんは完全なお家の猫で、お外になんか興味がありません。家の中が大好きです。でも、やっぱりお母さんは前世の記憶が邪魔をして、素直に甘えられません。
「まあ、元気なら良いか」
撫でられなくても抱っこが出来なくても、ビッグチャンスくんはそのままで良い。せっかく異世界転生したのだから、この世界を存分に謳歌してもらえれば、お母さんはそれで幸せなんです。
でも、いつか息子以外の家族にも触らせてほしいなって密かに願っています。ビッグチャンスくん、お願いね。その時はまた異世界転生しているのかしら?
(まいどなニュース特約・ふじかわ 陽子)