くくり罠にかかり前足を失った元保護犬 飼い主探しは困難かと思いきや「心を開いてくれた」と相思相愛の関係に
狩猟用のくくり罠にかかってしまい、右前足が欠落した元保護犬・サブ。保護犬の譲渡活動を行うピースワンコ・ジャパン(以下、ピースワンコ)が、引き出したワンコですが、サブはそれでも3本足で器用に歩き回り、そして、お散歩も大好き。前足をクロスさせて座るのが癖で、無くなってしまった右前足を、むしろ誇らしげに見せているようにも見えます。そして、それだけの障害があっても、サブはいつもニコニコ。シャイではあるものの、人懐っこく優しい性格のワンコでした。
■人間を怖く思っただろうに、心を開いてくれるサブの優しい性格
3本足という重度の障害を持つサブなので、ピースワンコでは当初、譲渡は難しいのではないかと、同団体の施設で他のワンコと一緒に生活させようと考えていました。
しかし、前述の通り、障害以外は極めて穏やかで人間に親しみを持つワンコなので、後に広島譲渡センターで行われた譲渡会に参加させました。すると、そこに訪れたある女性が一目惚れ。「罠にかかって痛い思いをし、人間を怖く思ったろうに、こうやって心を開いてくれて偉いな」と思ったと言います。
そして、この女性が新しい里親さんとなり、見事サブは同団体を卒業することになりました。
譲渡にあたって同団体では、ワンコと里親さんが安心して新生活を送ることができるよう、念入りな説明を行ないます。必要な行政手続き、マイクロチップやワクチン接種などの義務についての話など。また、それぞれワンコの性格や習慣、好みのごはんについての説明をすることもあります。
サブのように障害や持病を持ったワンコの場合には、必要なケアについてもしっかり説明します。
■「僕は今までここで育ったんだよ」
卒業の日、サブは長年過ごした施設で新しい里親さんから真っ赤なハーネスとかわいい首輪をもらいました。
その首輪とハーネスをつけて、サブは最後に施設の中を、新しい里親さんと一緒に散歩しました。3本足で確かにヨタヨタしていますが、やはり器用に歩き回り、そしていつも通りニコニコしています。
また、その持ち前の明るさから、新しい里親さんにもすぐに懐いてチラチラとアイコンタクト。まるで「僕は今までここで育ったんだよ」と新しい里親さんに紹介してあげているようでした。
そして、この後、新しい里親さんの車に入れられ、施設を離れていったサブ。その様子をスタフは車が見えなくなるまで手を振って見送りました。スタッフはサブと過ごした長い時間を思い出し、少し寂しい気持ちになりました。しかし、ここはサブの新しい幸せな犬生を優先させ、涙をぬぐいます。
「私たちは、精一杯、一頭一頭のワンコを大切にお世話をしています。そういったワンコが卒業する際は、確かに寂しい気持ちはあります。しかし、里親様に家族として迎えてもらい、これからは愛情を一身に注いでもらいながら暮らせるので、嬉しい気持ちのほうが大きいです」
サブはピースワンコでたっぷり受けた愛情を胸に、新しい里親さんのもと、さらに幸せいっぱいの生活を今日もおくっていることでしょう。
(まいどなニュース特約・松田 義人)