「子供たちにあげてね」緩和ケア病棟のおばあちゃんが作った素敵なブレスレット 残された時間を誰かのために使う…小さなエピソードに胸打たれる
「人は、病気になって入院したり、施設に入所したりした時にも続けられる静的な趣味を持つといい」と言われることがあります。緩和ケア病棟に入院したあるおばあちゃんは、ビーズのアクセサリーを作るのが大好きだったのですが、その趣味が思わぬ広がりを見せました。
ねこちん薬剤師(@kankichi0412)さんは、キラキラしたブレスレットの画像と共に、おばあちゃんのことをツイートしました。
「緩和ケア病棟のおばあちゃんが作った素敵なブレスレット。『たくさん作ったから子供たちにあげてね』って。まかせて、小児科も担当しております!」
ツイートを見た人たちからは、「キラキラしていてとてもきれいですね~。素敵!」「未来へ繋ぐ優しさ」などの反響が。おばあちゃんと子供たちの物語について、ねこちん薬剤師さんに詳しいお話を聞きました。
ーービーズアクセサリー作りがおばあちゃんの趣味なのですか。
「ビーズでアクセサリーを作るのが好きな方でした。 ご家族が、入院中にすることがなくて退屈だろうとビーズの材料を買ってきたのが始まりです。 ご自身で好んでさまざまなデザインのものを作られていました」
ーー何か目的を持って過ごすと張り合いがあるでしょうね。
「 初めはご家族からの提案で始めたビーズのアクセサリー作りでしたが、それが日課となり、訪室する様々なスタッフにもプレゼントしていました。 残された時間を自分のためではなく、誰かのために使うってすごいことだと思いました」
ーーなぜ子供たちにプレゼントを?
「ある日私が小児科を担当していることを伝えると、『子供たちにもあげてね』とおっしゃったのです。ただ、コロナ禍ということに加え、子供たちもいろんな病気を抱えているので、会って渡すことはできず、私がお渡ししました」
ーーおばあちゃんは喜んでいましたか。
「ご家族に許可をいただけたら、お渡したアクセサリーとお子様をデジカメで撮影して、おばあちゃんに見せています。その写真を見た時の笑顔は忘れられません」
ーー子供たちも嬉しかったでしょうね。
「アクセサリーは、おばあちゃんの意図をご理解いただけたご家族とお子様にお渡したのですが、男の子も女の子もキラキラしたビーズに目を輝かせて喜んでいました」
ーーそうした喜びは心の支えにもなりますね。
「入院している子供たちの中には、医療スタッフを見ただけで泣き出す子もいます。 お薬を嫌がる子もたくさんいます。でも、ビーズのアクセサリーでコミュニケーションがスムーズにできることもありました」
ーーこうした交流は、お互いに良い刺激になりますか。
「コロナ禍なので、どの病棟も面会できる時間や回数が制限されています。制限が多く、ただでさえ不安な入院生活において、このような交流は貴重です。これからも患者さんの笑顔が少しでも増えるような介入を心がけていきたいと思います。 そして、いつかおばあちゃんから子供たちに直接アクセサリーを渡すことができる日がくるといいなと思います」
◇ ◇
単調になりがちな入院生活ですが、こうした趣味があると活気が出てきますね。何より「人に喜んでもらえる」「人の役に立てる」ということは自分の喜びにもなるのでしょう。間を取り持ってくれたねこちん薬剤師さんの優しさにも心が温まるお話でした。
(まいどなニュース特約・渡辺 陽)