KinKi Kids堂本光一さんが見せた心遣い 神戸の復興支えたジャニーズのスペシャルユニットを覚えていますか
阪神・淡路大震災で被災した神戸市内の小中学生支援のために活動したジャニーズ事務所のスペシャルユニット「J-FRIENDS」を覚えているだろうか。1997年に関西出身メンバーのいるTOKIO、KinKi Kids、V6の3グループで結成され、震災当時小学1年生だった児童が義務教育を終える2003年3月まで活動。その間のCD販売収益など計約9億1822万円を神戸市教育委員会に寄贈した。活動終了後の2004年には、神戸市役所前で城島茂さん(TOKIO)、堂本光一さん(KinKi Kids)、岡田准一さん(V6)の3人が記念植樹。植え込みには今もヤマボウシの木と、「ありがとうJ-FRIENDS」と刻まれた小さな記念碑が佇み、震災の記憶を静かに伝え続けている。
「記念植樹はすごい数の取材でした。危うくパニックになりかけたのを今でも覚えています」
そう振り返るのは、記念植樹が行われた2004年当時、市教委の事務局でジャニーズ事務所との企画協議段階から総責任者として携わった神戸国際大学の松崎太亮教授。週刊誌なども駆けつけたことで、取材陣は最終的にカメラ22台、記者100人の規模にまで膨れ上がった。記念撮影の際、堂本光一さんが「ガッツポーズするようなことではないので」と被災者への気遣いを見せていたことを、松崎教授は印象深い瞬間のひとつとして記憶しているという。
当時の神戸新聞の記事や、市教委の中学生向け副読本などによると、J-FRIENDSのCD販売やコンサート活動による収益は、被災者救済のための義援金として市教委に寄贈された。寄せられた義援金は「神戸の子供たちの元気な姿を伝え、感謝の気持ちを発信する」との趣旨から、校内LANの整備やインターネットを使った情報教育の実施など、主に学校教育の情報化に活用されたという。
震災発生から丸10年となる2005年1月17日には、メンバーから神戸の子供たちにあらためてこんなメッセージが寄せられた。
「あの震災から、今日で丸十年たちました。
僕たちは、J-FRIENDSとして少しでも皆様のお役に立てればと、自分達の音楽で活動してきました。
昨年3月に植樹させていただいた、『ヤマボウシ』の樹木も、震災から立ち上がった神戸の子供たちのように成長していることと思われます。
『NEVER ENDING SPIRIT』僕たちの活動の精神であったこの言葉は、僕らも持ち続けています。J-FRIENDSの活動は終了しましたが、僕らの心の中で震災のことは忘れていません。
僕たちも、協力してくれたファンの方たちも、いつも皆さんのことを思っています。
平成17年1月17日
J-FRIENDSメンバー一同より」
2023年現在、このヤマボウシと記念碑を日常的に意識している人は神戸でも正直そう多くはない。J-FRIENDSとして活動したTOKIO、V6もここ数年でグループとしての大きな転換期を迎え、当時と変わらず活動を続けているのはKinKi Kidsだけになってしまった。
1月のある日、植え込みを訪れた。目の前の市役所2号館は取り壊され、再整備事業の真っ只中。初夏には色鮮やかなアジサイの花に囲まれていた記念碑も、どこか寂しそうな姿を寒風に晒していた。今年も1月17日が巡る。追悼の集いが営まれる近くの東遊園地を訪れる人がいたら、この記念碑のこともちょっと思い出してほしい。
(まいどなニュース・黒川 裕生)