引っ掻いてきても、噛んできても「猫らしい!」 天使の羽根を持つ三毛猫は、お母さんを救うため…今日もツンデレ
天使の羽根がある猫が、東京都で暮らしています。ハナちゃん(4歳)です。天使の羽根は持っているものの、性格は超ツンデレ。デレは少なく、ツンが多めの性格です。保護主さん曰く「典型的三毛猫」とのこと。だから、初めて猫と暮らす人には譲渡しにくいと考えていました。
■何をされても全部「猫らしい!」
保護主さんが「この家族に」と選んだのは、Y家です。先住猫がいることだけでなく、譲渡会へ足を運んだお母さんがとてもハナちゃんを大切にしてくれそうだったのです。こうしてハナちゃんは生後3カ月ぐらいの時、2018年7月7日にY家へ迎えられることになりました。
お母さんは子猫との楽しい生活を夢見ていましたが、ハナちゃんは冷たい。先住猫のこたくんとはすぐ仲良しになったのに、お母さんは完全にスルー。撫でようとすると「フー!シャー!」。このハナちゃんの様子に、お母さんは喜びます。
「猫らしい!」
ハナちゃんに引っ掻かれても噛まれても、お母さんは全部可愛いと思ったんです。先住猫のこたくんとたまくんは、こんなことをしませんから。ハナちゃんの一挙手一投足が新鮮でした。保護主さんの人選は大当たりですね。初めて猫を飼う人だったら、すぐ嫌になっていたでしょう。結局、お母さんがハナちゃんを撫でられるようになるまで、約2年かかりました。
■お母さんの異変
穏やかに日々が過ぎていくと思っていた2020年のこと、お母さんの体に異変が起きます。重大な病気が見つかったのです。検査を繰り返し、治療法を探っていきます。不安な毎日を送ることになりましたが、お母さんは家族の前で気丈に振る舞っていたんです。家族まで不安にさせてはならないと考えました。
でも、ハナちゃんは気付いちゃった。お母さんを慰めようと、ピタッとくっつくようになったんです。寝る時はお母さんの左脇の下でピタッ。お母さんが座っていたら、お膝の上にピタッ。
お母さんはハナちゃんの温もりが嬉しくて嬉しくて。ハナちゃんを心配させないためにも、手術を受ける決断を下します。全身麻酔の手術なのでとても怖く、できれば薬物療法などでなんとかしたいと思っていました。けれど、こうやってハナちゃんが応援してくれるのだから、頑張りたいのです。
手術は無事成功し、約1カ月の入院生活を送ることになりました。少しの間、ハナちゃんと離れ離れになったものの、これを乗り越えればハナちゃんに会えると思うと、寂しくなんかありません。いや、かなり寂しかったですが、何とか耐えました。
■感動の再会…?
ようやく退院し、ハナちゃんと感動の再会!と思いきや、ハナちゃんは近寄ってきません。なんと、お母さんのことを忘れていたんです。
「このおばさん、だれ?」
こたくんの後に隠れて、じーっとお母さんを見るだけ。このハナちゃんの様子にお母さんは…。
「猫らしい!」
喜んだんです。忘れられているなら、また覚えてもらえば良いと、再びハナちゃんと仲良くなるべく奮闘し始めました。おもちゃを買ってきたり、おやつをあげたり。一緒にお布団で寝たいけれど、思い出してもらうまで我慢我慢。
半年もしないうちにハナちゃんはお母さんを思い出し、再び左脇の下で眠ってくれるようになりました。しかし、お母さんが再度入院。またハナちゃんはお母さんを忘れる。忘れられていることにお母さんは喜び、覚えてもらおうと頑張る。
■神様から遣わされた猫
気が付けば、お母さんは徐々に健康を取り戻し始めていました。予後がとても良いのです。同時期に手術をした人は、あまり良い状態でない方が多いのに…。お医者さんもビックリなんですって。お母さんは笑いながら言います。
「私の人生最後の仕事は、ハナちゃんを見送ることだって決めているんです。それまでは死ねません」
今日もお母さんはハナちゃんと両想いになるべく、おやつを手にします。ハナちゃんはやっぱり素っ気ない。でも、それが「猫らしい!」。お母さんは笑顔に。笑顔になった分、どんどん元気になっていきます。奇跡といっていいほどの元気さです。
この奇跡を起こしたのは、他ならない天使の羽根を持つハナちゃん。神様がお母さんを救うべく、遣わしてくれたのかもしれませんね。どうかいつまでも、この幸せな時間を。
(まいどなニュース特約・ふじかわ 陽子)