復興願った阪神電鉄5500系デザインが風前のともしび 震災の年から運行→車両リニューアルで外装変更
死者6434人、行方不明者3人に上った阪神・淡路大震災の発生から1月17日で丸28年となる。大震災が起きた1995年から走り始めた阪神電鉄の普通用車両「5500系」。大阪梅田~高速神戸間を中心に運行している。全国屈指の高加減速性能を誇り「ジェットカー」の愛称で親しまれるが、復興への願いが込められた当時のデザインは、近年、車体のリニューアルが進んだことにより、もはや風前のともしびとなっている。
阪神電鉄は1995年1月17日の震災で、高架橋の倒壊や駅舎の崩壊など甚大な被害に遭い、同年6月の全線運転再開まで5カ月以上を要した。車両も当時の314両のうち126両が全半壊。不足した車両を補うために製造した車両のうち、普通用として同年11月に登場したのが5500系だった。「震災を乗り越えて新たに出発する」との願いを込めて外装のカラーを36年ぶりに変更。それまでの普通用車両は下半分が濃い青で「青胴車」と親しまれてきたが、5500系は「普通車両=青」の伝統は継承しつつ、上半分を「アレグロブルー」、下半分が「シルキーグレイ」という組み合わせとなり、さわやかな印象に変わった。イメージが一新された新型車両が再建なった高架橋を快走する姿は、復旧・復興に懸命だった被災地の人々に希望を与えたのだった。5500系は4両編成9本、計36両が製造され、その後2010年には増備車として5550系1編成(4両)が加わっている。
その後、「ジェットシルバー」と呼ばれる、内外装を一新した新型の普通用車両「5700系」が登場。5500系も2016年度から、それに準じた大幅なリニューアルが施され始めた。外部の塗装は青の部分が増やされ、色も濃いめになった。前面は黒く塗装され、5700系に近いイメージだ。内装も行き先案内の液晶モニターや扉開閉ボタンなどの最新設備が取り入れられた。「復興カラー」から塗装変更される車両は順次増え、現在では5500系はすべての車両がリニューアルを完了。増備車の5550系だけが未更新となっている。貴重な存在となった「復興カラー」の車両に出合える機会は減っており、大震災から28年という年月の経過を感じさせる。
ちなみに5500系は、2020年から仕様変更された2両×4編成が武庫川線(武庫川~武庫川団地前)に投入された。「タイガース号」「甲子園号」「トラッキー号」「TORACO号」とそれぞれデザインされ、内装も一新。「復興カラー」の面影はみじんも感じられない。
阪神電鉄では、新型車両5700系の増備を続けており、1977(昭和52)年にデビューした「青胴車」こと5001系の引退も刻一刻と近づいている。
(まいどなニュース・神戸新聞/長沼隆之)