動物園のゾウ、健康のため500kgのダイエットに成功! 一体どうやった? 「もう少し減量を…」飼育員はまだまだ意欲!?
神戸市立王子動物園のメスのアジアゾウ、ズゼ(32歳)が、ここ数年、5tに迫る勢いだった体重を1割ほど減らすダイエットに成功し、ちょっとスリムになりました。
「計量の日」がある11月に毎年体重測定をしており、これまでの最高は2018年の4913kg。まん丸ボディとまん丸顔が見る人を笑顔にする人気者ですが、なぜダイエット? お腹空いてない? 一体どうやって?? …同園の飼育展示係長で獣医師の谷口さんに詳しく聞きました。
ズゼは1990年4月生まれ。ラトビアのリガ動物園から96年に王子動物園へ。翌年から毎年、計量イベントで活躍し、コロナ禍前は体重当てクイズが行われるなど増え続ける数値が注目されていました。
-5t目前でした。
「2010年に初めて4tを超え、その後も増え続けました。肥満傾向ではありましたが、アジアゾウのメスが20~30歳頃まで体重が増え続けること自体は一般的です。オスのマック(30歳)は約6tと推定しています」
-なぜダイエットを?
「代謝性疾患などの病気になったり、脚に負担がかかり関節を痛めたりする可能性があります。体重を落とすことは、これらの予防につながるんですよ」
-「吊り下げフィーダー」の効果も?
「丸太やタイヤで活動量が増えるよう工夫してきましたが、展示場の狭さは常同行動や非活動時間の増加の原因となります。ズゼとマックを分けているときは動ける面積が減り、コミュニケーションの頻度も少なくなって活動量が低下するため、吊り下げ式フィーダーを設置しました。高所のエサを鼻でむしり取って採食するというゾウ特有の行動レパートリーが増え、一定の活動時間の増加が認められました」
-食べるために時間をかけるように。
「ズゼは高いと諦めてしまうので低めに、マックは低いとネットを引っ張ってしまうので高くするなど、調整しています。ダイナミックな採餌様式は、来園者に新たなゾウの魅力を伝えてくれています」
体重増には健康面以外でも心配なことが。それは、体重計で計量可能な上限があるのです。当初は4tまで計量できる設定だったのを“ズゼ仕様”で5tまでに調整してもらっていたのだそう。計量に協力している神戸市の「コーベコーキ(神戸衡機)」の宮坂敦さんによると、現在の機器は「5009kg」を超えると表示が「----kg」となるそうで、まさにギリギリです。調整すれば6tまでは計測できるとのことですが、今回は「痩せたな~」と感じたそうです。
運動量を増やすのに加え、エサの内容も少し変えました。ズゼが毎日食べる量は約75kg。牧草、 竹、芭蕉、樫、青草、ソルゴ、ペレット、果物、野菜ですが、ダイエットのために、主に牧草と、カボチャ、リンゴ、ニンジンなどを少し減らしたのです。
「少しずつ減らしたので、あまり気付いていないように思います」と谷口さん。一番の好物はスイカで、マックはサツマイモだそう。
「栄養バランス等を考慮し補助食品の果物は量を少なくしています。本当は竹の枝や、樫の太い枝をもっと食べてほしいですが、あまり好きではないようで…。毎日片付ける2頭のフンの量は150~200kgにもなります」
メスの標準体重は約3.5~4tという報告があり、「ズゼは現在も『ぽっちゃり型』ですね」と谷口さん。
「痩せてからも行動に変化は見られず、血液検査などで健康状態も確認しており、問題ありません。『ボディコンディションスコア』と言って、視診により動物の栄養状態を評価する方法でも観察しており、もう少し減量した方が良いと考えています」
(まいどなニュース特約・茶良野 くま子)