不気味な豆がモゾモゾ→幼虫が寄生したメキシコトビマメと判明→輸入禁止品だった!神戸植物防疫所に聞いた

まるで生き物かのように跳ね回る種子の動画がSNS上で大きな注目を集めている。

「やばいものを手に入れてしまった。」とこの動画を紹介したのは理科の教員をしているとらふずくさん(@raptorial_owlet)。

実はこの種子、日本国内には植物防疫法で持ち込みが禁止されているメキシコトビマメ。蛾の幼虫に寄生された種子が、まるで生きているかのように動き回るメキシコ原産の植物で、アメリカやメキシコでは玩具としても扱われているようだ。見慣れぬ日本人にとってはなんとも奇異なこの動画に対し、SNSユーザー達からは

「アメリカに居た時ね。現地の子はこれをマッチ箱に入れるんだ。するとね。箱がゴソゴソ動いて楽しかったんだ。」

「いわゆるJumping Beansってですね!動くところ初めてみました!ありがとうございます。」

「貿易商っすけど。もしもその雑貨屋さんが知らずにならあれですが。知ってて仕入れたり売ってたら、家畜伝染病予防法、植物防疫法により3年以下の懲役又は300万円以下の罰金が科せられる可能性あって。最近3月に検疫違反で逮捕者も出ましたし。正直検疫所に報告した方がよろしいかと思います。」

「コチラ、大分前に『輸入禁止』とテレビでお騒がせしていた種ですよね(> <;)中に虫が入ってるから動くというやつで それ、処分困りますね」

など数々の驚きの声が寄せられている。

■投稿者に聞いた

とらふずくさんにお話を聞いた。

ーーこの種子を購入された雑貨店についてお聞かせください。

とらふずく:海外の物品を取り扱う個人経営の雑貨店です。特に中南米の物品が多く、エキゾチックな雰囲気があります。海外で仕入れた品を販売しており、普段は子供の保育園帰りにお菓子を購入する際に利用させていただいています。この一件ののちに家内が立ち寄って話をしたらしく、前後の顛末なども聞きましたが、当日は防疫の職員さん立ち合いのもと他の商品もチェックし、特に問題ない旨を告げられたとのことですので、現時点で安心して利用できるかと。

ーー購入された経緯をお聞かせください。

とらふずく:駄菓子を買うためにカウンターに近寄ったところ、カウンターの前の棚にプラスチックケースに入った植物の種子のようなものが置いてあるのを見つけました。もともと授業で生物標本を扱うことが多く、話題作りや授業に利用するために、こういった商品はなんとなく見てしまいますが、Mexican jumping beansという文字列を見た瞬間に、過去いくつかの書籍で見たメキシコトビマメのことを思い出しました。興味を持って眺めていると、店主が「面白いでしょう、これ、温めると跳ねるんですよ」と話しかけてくれました。そのものは初めて見たものの、これがメキシコトビマメかと確信し、即座に購入しました。

内部に鱗翅目の幼虫が寄生していることは知っていたので、まずは持ち帰ってメキシコトビマメの分類群と、中に寄生している蛾の種類、および移動の傾向やメカニズムなどを調べようと思い、ネットで検索したところ、かなり以前に輸入が規制されたものであることが判明いたしました。

ーーこれまでの反響へのご感想をお聞かせください。

とらふずく:純粋に興味を持つ人と、「虫」というだけで嫌悪感を出す人にはっきりと分かれたのは興味深いです。私のつぶやきの方向性が誘導的だった可能性はありますが、防疫や外来種などの話題は多く提供されたものの、個人的に興味のある「生物としてのメキシコトビマメ(というか、中の幼虫)」に言及したツイートは見たところ1件のみでした。なので、何日か日をまたいでそのあたりに言及する投稿をしています。

普段はTwitter上のいきもの界隈、もしくは同業者のユーザーさんとの繋がりがメインなので、その影響があると思いますが、日数が経過するにつれて「面白い」から「気味が悪い」という趣旨の言及が多くなる方向にシフトしたのは、ちょっと興味深いです。

■神戸植物防疫所に聞いた

メキシコトビマメについて神戸植物防疫所の統括植物検疫官に話を聞いた。

ーーメキシコトビマメが違法に輸入されていたという報告は近年、 多いのでしょうか?

「神戸植物防疫所の管内では、 近年そのような報告は受けておりません。なお、 他の植物防疫所管内では、 回収事例があるとの情報は受けております」

ーーメシコトビマメが輸入禁止となっている理由をお聞かせください。

「メキシコトビマメは、いわゆる通称で、植物体の中にハマキガ科の蛾の一種の幼虫が含まれているようです。植物防疫法では生きた検疫有害動物そのものが輸入禁止であり、それが寄生したままの植物も輸入が禁止されています」

ーー国内でメキシコトビマメを見掛けた際の対処法をお聞かせください。

「すぐに最寄りの植物防疫所に連絡をお願いいたします。なお、植物防疫法上の取扱が不明な植物等を入手した場合には、外に捨てるようなことをせず、散逸しないよう保管の上、植物防疫所に連絡いただくようお願いします」

ーー誤って入手した場合、罰則はあるのでしょうか。

「輸入禁止品を持ち込んだ場合、あるいは輸入時に受けるべき検査を受けなかった場合には植物防疫法第39条に該当し、3年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科せられる場合があります。なお、法律改正により令和5年度以降は罰金額が300万円に増額されます。誤って入手した場合は、すぐに最寄りの植物防疫所に連絡をお願いいたします」

◇ ◇

読者のみなさんもメキシコトビマメを見掛けた際はぜひ最寄りの植物防疫所にご連絡いただきたい。くれぐれも蛾を飼育したり、種子を野外に捨てたりされないよう。

(まいどなニュース特約・中将 タカノリ)

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