俳優・のんのもうひとつの顔、故郷でリボンアートの世界 イベント開催にアーティストとして手応え
俳優で“創作あーちすと”としても活動するのんさんが創り出す、たくさんのリボンを使ったリボンアート作品を展示したイベント「ikuno art stay 2023 non ribbon art」が、兵庫県朝来市生野町で21日から始まりました。
「可愛いものが不気味に見えるという感覚がすごく好き」と言うのんさんのアートと、豊かな鉱山に恵まれ栄えた鉱山町の匂いを残す生野町との出合い。そこにはどんな風景が生まれるのか、取材しました。
■約40点の作品を3つのプランで楽しめる
展示されているのは、のんさん自身が監督・脚本・主演をつとめた映画「ribbon」のクライマックスを彩った作品や、直筆の絵コンテのほか、219体のこけしを使った新作「試作 真っ赤童(まっかわらし)の部屋」など約40点。口銀谷銀山町ミュージアムセンター内の旧浅田邸・旧吉川邸など5つの会場で見ることができます。鑑賞はすべて事前予約制で、自由散策プラン、ランチ・ガイドツアー付きプラン、1泊3食・ガイドツアー付きプランの3コース。
自由散策プランは、日時指定のチケットを事前に購入することで時間内は自由に鑑賞・散策が可能。ランチおよび1泊3食付きのプランでは、但馬牛のフィレ肉や播磨灘で捕れた真鯛、地元の農園で栽培された野菜、名産の岩津ねぎなどを贅沢に使った和フレンチを堪能できます。なお、ランチ会場の吉川邸に展示された作品を間近で見られるのは、食事付きプランの参加者だけ。ランチの後は、ガイドツアーで生野の町と作品展示会場をめぐります。
1泊3食付きのプランではさらに、生野町のカフェ「芒種」による夕食と朝食付き。地元の野菜をふんだんに使った食事は、味はもちろんボリュームも十分です。お泊りは明治29年に旧生野鉱山職員のために建てられた「甲社宅19号」にて。ここにも、1泊3食付きプランの参加者しか見ることのできない作品が展示されています。
■アーティストのメッセージを届けたい
このイベントを企画したのは、アートディレクターの小國陽介さん。2011年から生野町で「生野ルートダルジャン芸術祭」を開催してきました。その中で、毎回1人のアーティストをクローズアップし、メッセージをダイレクトに伝えたいと考えるように。
それと同時に、地域の魅力発信を目指した新たなアートイベントに、アーティストとして精力的に活動するのんさんに参加してほしいとオファーしたところ、小國さんの思いにのんさんが共感。「ikuno art stay 2023」として結実しました。
のんさんは生野町のお隣にある神河町出身。幼稚園の時に描いた絵が展覧会に選ばれて嬉しかったことと、そこで自分の絵よりもいい場所に飾られた絵があったことに悔しさを感じたことが原点にあるといいます。相反する感情をまるっと抱えて創作に打ち込む姿勢は、映画「ribbon」の世界感に通ずるものを感じます。
主人公の揺れ動く感情をリボンで表現した同映画をきっかけに取り組みはじめ、とても大切にしているというリボンアート。開催にあたって、のんさんは「私のアートはこういうものだ、と確立された気がしている」と手応えをのぞかせました。
■泊まって、見えた風景
5つの会場は、それぞれ明治初期から昭和初期にかけて建てられた木造家屋。木造が生み出すやわらかい陰影が、作品を幻想的に浮かび上がらせていました。のんさんの作品には、可愛さと不気味さの他にも、楽しさ・嬉しさと悲しさ・悔しさ、光と影など、二面性が表現されているように筆者は感じます。作品の中の光と影が、木造ならではの陰影と溶け合って、思わず見惚れてしまう美しさを放っていました。
また、生活の匂いがより色濃い甲社宅での宿泊では、洗面やトイレ、寝起きなど日常の延長でふと作品と目が合うと、その一瞬、心がふわっと緩むのを感じました。暮らしの中にアートがあるって、こういう感覚なのかも?と、アートとの気さくな付き合い方を知ることができた気がします。
ちなみに、建物自体はいにしえの良さを残しつつ補修済み。水回りも現代の設備に取り替えられ、快適に過ごすことができるのでご安心を。
「ikuno art stay 2023 non ribbon art」は29日まで。各プランの詳細や最新情報は公式サイト、Twitterにて。
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ikuno art stay 2023 non ribbon art
会期:2023/1/21(土)~1/29(日)
会場:口銀谷銀山町ミュージアムセンター(旧浅田邸・旧吉川邸)甲社宅(9号、19号)、生野クラブ
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