おつかれさん!阪神タイガースのタクシー 長年のサービス物語るラッピングの傷みは、滑り込みで汚れたユニフォームみたい
阪神電鉄沿線で見かける阪神タイガースキャブ。一目見たら忘れられない印象深いタクシーで、タイガースファンに限らず地元で人気のクルマです。この度、最後の1台が引退すると聞き、取材しました。
■阪神タイガースキャブとは?
阪神タクシー(兵庫県西宮市)が運行する阪神タイガースキャブ。初代が登場したのは平成17年(2005年)だそうです。現在走っているのは二代目で、平成20年(2008年)にデビューしました。初代も二代目も、当初はそれぞれ7台ありましたが、故障で廃車になるなど徐々に数を減らしていきます。
筆者は甲子園駅が最寄りで、駅からタクシーに乗ることがあります。もう5年以上前ですが、駅の乗り場で巡ってきたのがこの阪神タイガースキャブでした。車内で運転手さんにいろいろと話を聞いたところ、「1号車と4号車、5号車の3台しか残ってないんですよ」とのことでした。
実はこの阪神タイガースキャブ、号車とナンバープレートが揃っています。1号車は「・・・1」、4号車は「・・・4」といった形です。
阪神タクシーが走るエリアと筆者の生活圏が重なるもので、日頃から良く阪神タイガースキャブを見かけます。その都度「これは何号車かな?」と、なんとなく確認するのが習慣になっていました。まず1号車を見かけなくなって、次に5号車を見ることがなくなっていきました。最後に残ったのは4号車。もしかすると近く引退かな、と取材を依頼しました。
■ドライバーさんに話を聞いた
鳴尾浜の営業所で、阪神タイガースキャブを運転する横田さんに話を聞きました。
ー阪神タイガースキャブに乗務するようになったのは
「だいたい10年くらい前からですね、2013年頃でしたか」
ー「何台か待ってでも阪神タイガースキャブに乗りたい」っていうお客さんもいたのでは?
「ああ、いましたねそういう人も。でも逆の人もいました。すーっと横を通って、後ろのタクシーに乗ろうとする人。派手で目立つので恥ずかしいと思ったんでしょうか、それとも他球団のファンだったんでしょうか。またそういうときに限って後ろのドライバーが律儀というか頑固というか、順番だから前のに乗ってください、って言ったりとか(笑)」
ー走行中、写真撮られたことは
「そうですね、走ってるときも止まってるときも。声をかけられたり、黙ってささっと撮ってられたり、いろんな方がおられましたね」
ー注目される分、運転中は緊張しますか
「それはもう、乗り始めはね。どうしようかなあ、って感じで。数年乗ってるとね、まあ、ああ見てるんやな、て感じで。ただね、クルマを見てるんやなあ、っていうことで、落ち着いて考えられるようになりました」
■令和5年1月27日、いよいよラストラン
今回、最後に残った4号車ですが、1月27日で車検が切れるということで、その日が最終日になるそうです。15年間という長期運行のためでしょうか、タイガースカラーのラッピングに傷みも見受けられます。熱の影響もあるのでしょうか、ボンネット一部はひび割れもあり、茶色く変色しているところもあります。
「ホームベースに滑り込んだあとのユニフォームみたいでしょ、ってよく言うんですよ」と、営業課長の猪塚さん。なるほど、長年のプレーならぬサービスによる名誉の負傷といえるかもしれません。
15年間、89万kmオーバーの旅を終えて引退する、最後の阪神タイガースキャブ。取材のあと、車庫に戻っていく後ろ姿を見て、日頃よく見かけた地元住民の一人として感慨深いものがありました。
長い間お疲れ様でした。
(まいどなニュース特約・小嶋 あきら)