就職氷河期世代…家族のために再チャレンジ 正規雇用を目指し地方公務員・社会人枠の採用試験へ
現在の30代後半から40代前半の方は、「就職氷河期世代」と呼ばれ、学校卒業後の就職活動がとても困難な世代でした。就職氷河期世代が社会の担い手となっている現在、どのようなことを感じながら生活しているのでしょうか。
■就職を希望して進学した工業高校だったけれど
現在、妻と小学生の子どもがいるまことさん(東北在住・契約社員)は工業高校に通い、高校卒業後は就職を希望していました。しかし、就職率を考えて進学した高校には求人がほとんどなかったそうです。「いわゆる就職校といわれる工業高校ということもあり、高校には以前に卒業生が就職した企業や、地元企業からの求人はありました。ですが、求人数や採用人数はとても少なく、常に同級生と競争状態でした」と当時を振り返ります。
また、当時の最低賃金は600円台と低く、給与が希望額に満たない求人も多い傾向にあったため、まことさんの学年の生徒は約3分の2が進学したそうです。
「就職しても、実家で生活しなくては生きていけないような求人ばかりで。家族と相談したり進路相談を受けて、私自身も進学することにしました。進学して4年後の就職活動まで待とうと考えたのです」
■就職を4年後に延ばし経験を積む日々
大学に進学し、資格取得やアルバイトなどをしながら、4年後に控える就職に向けて準備をしていたというまことさん。当時は派遣や日雇いが多く、好きなときに働くというようなスタイルが流行し、まことさん自身も通常のアルバイトに加えて、たまに日雇いのアルバイトもしていたと言います。
「いつでも空いた日に働けるというのが魅力でした。いろんな業種を経験できたのがよかったと感じています」と話すまことさんでしたが、「当時の同僚の中には高校卒業後、就職せず日雇いのみで生活している方も多くいました。その後、私自身は就職活動のため、3年生進級とともにアルバイトを辞めたのですが、同僚の中にはそのまま続けていたところ、派遣会社の突然の経営破綻に巻き込まれ、無職になった方もいました」と教えてくれました。
しかし、いざ就職活動をはじめたまことさんは、またしても壁にぶつかってしまったと言います。
「高校卒業時に比べ、求人数は若干増えたもののやはり採用人数は少ないままでした。しかし、高校のように進学することはできないため、今回は何が何でも就職しなければ…と考え、採用試験を複数受ける日々でした」と言います。
派遣や契約社員、アルバイトなどの非正規雇用は求人が多かったものの、正規雇用はとても少ない状態だったといいます。まことさんは一般企業の営業や事務職に正社員で勤務することを希望していましたが、「まずは働かなくては」と、何度目かの採用試験で採用された企業で、契約社員として働くことにしたそうです。
■契約社員での生活は
こうしてはじまった契約社員での社会人生活は、正規雇用と違い賞与や手当などが少なく、「いつか契約が打ち切られてしまうのでは」と、気が休まらない日々だったと言います。また、正規雇用と同じような仕事をしていても、待遇はなかなか変わらなかったそうです。
その後、職場を通して知り合った現在の妻と30代に差し掛かるころに結婚。そして、一児の父になりました。しかし、まことさんだけの収入で生活をすることは難しく、夫婦共働きでやっとという状態だったと言います。
「契約が更新されず、その度に転職せざるを得ない状況も多々ありました。そのため、履歴書は職歴が多く、書類選考通過が難しくなってきているのも事実です。それでも家族を支えるため働かなくてはならない。あのとき、正規雇用になれていたら、今ごろは中堅クラスで新人を育成してる立場だったのかも知れないと考える日もあります。大学まで行かせてくれた両親にも申し訳ないと感じます」と沈痛な表情で話します。
■家族のために“再チャレンジ”
近年、地方公務員の社会人枠が40歳まで拡大したことを知ったまことさん。家族のために再度正規雇用に向けて、チャレンジをすることになりました。目指しているのは、自分が現在住んでいる自治体の職員です。
「地元自治体の社会人枠は、募集人数10名程度と少なく、狭き門ではあります。実は2回目のチャレンジで、前回の結果を踏まえながら、自分の苦手な分野に力を入れて勉強しています。仕事が終わってからの時間になるので、自分との戦いでもありますが、妻が協力してくれることに頭が上がりません」とまことさん。
「年齢的にもチャンスはあと数回ですが、家族のためにも、自分自身のためにも、頑張ってみようと思います」と話しています。
(まいどなニュース特約・長岡 杏果)